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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

緑単エルドラージ:土地破壊のロマン(レガシー)

岩SHOW
 

 土地破壊にはロマンが感じられる。僕が同級生を誘ってマジックを始めた頃は、基本セット及び大型エキスパンションに必ずといって良いほど《石の雨》が収録されていた。今現在のマジックは土地破壊をほとんど推奨していない。マナが使えなくて手札にカードを抱えて負ける、というのはつまらないゲーム体験になってしまうということから、通常のセットには土地破壊がほとんど収録されていない。

 しかし昔は土地破壊は立派な戦術として、各セットにはなんらかのカードが収録されていたものである。《なだれ乗り》とか《溶鉄の雨》とか、土地を割ってマナを使わせず、一方的に攻めるデッキを肯定するカードが見られ、それらで固めたデッキを組んで大会に参加するプレイヤーは、数が多くないにしても一定数は存在していたものである。

 

 土地破壊は主に黒・赤・緑が担当していた。緑のそれの中でも《刈り取りと種まき》は個人的にシブくて好きな1枚。刈り取って土地破壊か、種をまいてライブラリーから土地を戦場に出すか……真逆のモードを備えている。ライブラリーから探す土地は基本土地に限らない点も強い。それでいて双呪で両モードを同時に選ぶこともできる!相手のマナが減ってこちらのマナが増えるなんて最高じゃないか。それにただのマナだけでなく、それ以外の役目も担う土地を破壊したり引っ張ってこれれば、よりゲームで優位に立てるという。このカードは当時のブロック構築やスタンダード、昔のパウパーなどで使ったものだが、上手く使えた時の満足感ったらなかったね。

 

 ……そんな懐かしのカードの上位互換と言えるカードが現在、各フォーマットで活躍中だ。その名は《まき散らす菌糸生物》。『モダンホライゾン3』でやってきたエルドラージ軍団の一員だ。このカードはまんま《刈り取りと種まき》、唱えた時に土地をサーチする能力が誘発し、さらにキッカーを支払っていれば土地を1枚追放する。そこに3/3のクリーチャーがついてくるというのだから大盤振る舞いにも程がある。しかもただのクリーチャーではなく、無色のエルドラージであるというのがまた強い。《ウギンの目》や《終わりを告げるもの》、《エルドラージの寺院》など無色呪文やエルドラージのコスト軽減をしたり専用のマナを得る手段が豊富なので、キッカー込みの6マナという額面そのままに受け止めるとやや重いが、実質的にもっと軽く運用できてしまうのだ。

 さすがはモダンホライゾン、通常セットでは見る機会が減った土地破壊を、これほどまでに強い形でリリースして来るとは……というわけで今回はこの《まき散らす菌糸生物》を使ったデッキを紹介しよう。2024 Asia Legacy Championshipの決勝ラウンドにスタッフとして関わっていたのだが、そこでこのカードを搭載したデッキが猛威を振るっていたのが強く印象に残っている。

Yidong Wang - 「緑単エルドラージ」
2024 Asia Legacy Championship 準優勝 / レガシー (2024年10月12日)[MO] [ARENA]
4 《魂の洞窟
4 《古えの墳墓
4 《エルドラージの寺院
4 《ウギンの目
3 《不毛の大地
3 《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ
1 《ガイアの揺籃の地
1 《爆発域
1 《荒地
-土地(25)-

4 《終わりを告げるもの
2 《荒景学院の戦闘魔道士
4 《まばゆい肉掻き
4 《難題の予見者
4 《まき散らす菌糸生物
2 《運命を貪るもの
-クリーチャー(20)-
2 《むかしむかし
4 《コジレックの命令
3 《好奇のタリスマン
3 《苛立たしいガラクタ
2 《一つの指輪
1 《除霊用掃除機
-呪文(15)-
4 《四肢切断
3 《攪乱のフルート
2 《荒景学院の戦闘魔道士
2 《フェアリーの忌み者
2 《未認可霊柩車
1 《イス卿の迷路
1 《好奇のタリスマン
-サイドボード(15)-
Melee より引用)

 

 

 アジアのレガシー最強を決めるトーナメント、準優勝の「緑単エルドラージ」だ。緑単というが、厳密にいえば緑マナを要求する無色単というデッキである。エルドラージはレガシーでも老舗アーキタイプになるが、この2024年はモダホラ3の影響で大きく様変わりした。《ウギンの目》《エルドラージの寺院》《古えの墳墓》と2マナ土地を駆使して序盤から攻めていくのは伝統的なエルドラージの戦い方を踏襲しているが、そこから叩きつけるエルドラージは《難題の予見者》以外は新世代にバトンタッチ。中でも《まき散らす菌糸生物》が使える緑を取り入れたタイプは高いシェアを獲得している。

 菌糸生物から持ってくる土地はその時々で変わるが、《不毛の大地》を引っ張ってくる動きは強烈だ。菌糸生物自身の土地追放と併せて、対戦相手の土地2枚を潰すことが出来れば、プランを大いに崩し機能不全に陥らせることも可能だ。また、より多くのエルドラージを展開するためにマナが必要であれば《ガイアの揺籃の地》を持ってくるという手もある。3マナ以上加える可能性があり、盤面によっては菌糸生物を唱えたマナを差し引きしてもマナが増える、なんてこも起こり得る。菌糸生物、マジでヤバいぜ。

 

 各種マナ加速からエルドラージを展開し、《苛立たしいガラクタ》で妨害したり土地をハメたりしながら殴り勝つのがこのデッキの戦い方。フィーチャーマッチを観ていて強いなと思ったのは《まばゆい肉掻き》だ。この肉掻きは無色の呪文を唱えるとエルドラージ・末裔を生成、無色のクリーチャーが戦場に出ると対戦相手のライフを1点失わせる。たかが1点だがされど1点。積み重なればゲームを決めるフィニッシャーになる。

 この肉掻きがいる状態で無色呪文を連打していく動きは瞬く間に対戦相手のライフを削り取るわけだが、最も強烈だった組み合わせが《コジレックの命令》だ。これで相手のクリーチャーを除去したりドローしながら、末裔をX体生成。肉描きにより生成されたものと併せて無色マナを捻出したら、そこからさらに命令!この連打で末裔がうじゃうじゃと出入りし、対戦相手のライフが一瞬で残り僅かになる光景は圧巻の一言だった。このムーブのために必要な《ウギンの目》などの土地は……何度も言わなくても菌糸生物を使って確保することは分かってもらえるよね。

 相手の土地を失わせて、何も出来ない状況に追い込む。土地破壊のロマンを追い求めているプレイヤーは、《まき散らす菌糸生物》を使おう。これで《不毛の大地》を持ってくる動きは、いつだって最高の気分にさせてくれるはずだから……。

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