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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:海蛇と蟹、自分だけのデッキのフォーム(スタンダード)

岩SHOW

 今週もこの時間がやって来た、マジックのデッキがいかにクールかを語るCool Deckのお時間だ。はじめに、マジックのデッキはいずれもクールであることを強調しておこう。すべてがクールであり、優劣などはない。ただ独創性の高いリスト、他のデッキと異なる思想で作られ類を見ない挙動を見せるデッキというものは、よりクールに感じられる。このコラムではそういったものを発掘し共有していきたいと考えている。

 独創性、オリジナリティが発揮されたデッキというものは使用可能なカードが多ければ多いほど組みやすい。誰もかれもが使っているカードに埋もれて眠る、謎のカードを掘り起こしてデッキを組めば良いからだ。逆に言えばカードプールが限られているスタンダードにおいて、他のフォーマットもビックリするようなオンリーワンのリストを組めれば……それは特別にクールに感じられるものとなるに違いない。というわけで今回は『ブルームバロウ』環境末期のスタンダードより、他のデッキと明らかに雰囲気の異なるクールなリストを紹介しよう。

Asmussen - 「シミック・スペル」
Magic Online Standard League 5-0 / スタンダード (2024年9月20日)[MO] [ARENA]
4 《ヤヴィマヤの沿岸
4 《植物の聖域
4 《迷路庭園
5 《
1 《
-土地(18)-

4 《トレイリアの恐怖
4 《渦泥の蟹
-クリーチャー(8)-
4 《手練
4 《豆の木をのぼれ
4 《薮打ち
1 《花粉の分析
4 《希望の種子
4 《蓄え放題
4 《洪水の大口へ
4 《この町は狭すぎる
1 《三歩先
4 《嵐追いの才能
-呪文(34)-
2 《長川の引き込み
2 《否認
2 《三歩先
2 《強情なベイロス
3 《毒を選べ
2 《金線の酒杯
2 《魂標ランタン
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 

 このリストは……他のスタンダードのデッキと明らかに乖離している。土地の枚数が18枚。近年、5マナ以上を必要とするカードデザインが主流となってきているため、スタンダードのデッキにおける土地の枚数は増加傾向にある。26枚以上も珍しくない。逆に土地を極力必要としないデッキというものは減少傾向にあるのだが……その流れなどどこ吹く風、我が道を突き進む20枚未満の構成にはそれだけでクールさを覚える。そしてクリーチャーの枚数も2種8枚と抑えられている。

 《トレイリアの恐怖》《渦泥の蟹》……これらの共通点は海産物、5/5というだけでなく、そのマナコストを軽減する能力を持っていること。このコスト軽減で参照するものは墓地のインスタントとソーサリーの合計値。それらが大量に墓地にあれば、これらの海洋生物は1・2マナと極端に軽いコストで戦場に現れる脅威となる。そんなわけでこのデッキは海蛇と蟹を賢く運用するという目的の元で組まれたデッキということだ。

 

 クリーチャーのコストを軽減するには墓地にインスタントとソーサリーを能動的に落としていく必要がある。たとえば《手練》《薮打ち》のような手札を減らさずに墓地を肥やせる軽い呪文を連打する。土地を手に入れる手段が豊富に用意されているので、その総数が少なく抑えられ、その分インスタントとソーサリーを詰め込んでいるということだね。そしてもう一つ、切削を行うことでも墓地の枚数は増える。《希望の種子》《蓄え放題》は墓地の枚数を大きく増やす。これらで土地やクリーチャーを回収しながら、インスタントとソーサリーの墓地カウントを増やし、クールな早期降臨に繋げていくのだ。

 

 このデッキの特徴の一つに《豆の木をのぼれ》の採用も挙げられる。切削呪文とこれのために緑が2色目に選ばれているのだ。豆の木はカードを引くことができる……これが戦場に出た時、そして5マナ以上の呪文を唱えた時に。コスト軽減されたとしてもそのカードのマナ総量は変わらないため、低コストで《トレイリアの恐怖》《渦泥の蟹》を唱えてもしっかりとドローが可能。これで次から次に巨大生物を引き込んで途切れない展開で勝負する。

 豆の木との相性も考慮して《この町は狭すぎる》が採用されているのも面白い。5マナと重いインスタントだが、土地でないパーマネントを2枚バウンスする。これと《洪水の大口へ》《薮打ち》での格闘、そして《渦泥の蟹》でのタップなどを用いて相手のクリーチャーの攻撃を凌いでいくという魂胆だ。そして《この町は狭すぎる》は自分のパーマネントを戻すという選択肢も。その際には{3}もコストが軽減されるので扱いやすく、除去や戦闘から貴重なクリーチャーを救い出す手段になる。その上で豆の木でドローできれば、無駄など何もないというクールさだ。

 スポーツでも、他の選手と明らかに異なるフォームをしている選手はクールに見えるものだ。自分なりのやり方を突き詰めたデッキリストは美しく、そしてクール。君にも自分自身の手でしか作れないクールなデッキがあるはずだ。それを形にする日が来るまで……デッキビルディングに勤しもう。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Make your own form!!

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