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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:コモンのみで無限コンボ!サディスト繁殖鱗(パウパー)

岩SHOW

 マジックのデッキをクールという側面から紹介するCool Deckのコーナー。今週は……先日参加したテーブルトップのチーム戦の話からはじめよう。今回参加したトーナメントは非常に珍しい、5人チームというルール。マジックでチーム戦と言えば3人で1チーム、同時に対戦を行って2人が勝利したチームの勝ち、という形式が一般的だ。5人だと3人が先勝したチームが勝ちということになり、普段のチーム戦よりもお祭り感がより高いクールなものに。さらに5人はそれぞれに異なるフォーマットのデッキを用いて対戦する。スタンダード・パイオニア・モダン・レガシー・パウパー……様々なデッキが一同集結する、構築フォーマットの今が丸わかりになるというデータ的にもクールなものが得られる大会になったというわけだ。

 今回結成したチームはマジックを通じて、かれこれ十数年の付き合いになる友人たち。クールなメンツと肩を並べてマジックをすると、知り合ったばかりの小さなデュエルスペースでフライデー・ナイト・マジックに参加していた頃を思い出してエモーショナルでクールなものだった。さて、チーム戦のデッキの話に。各々のフォーマットの担当者を、それぞれデッキを持っているプレイヤーの立候補を優先して決めていったのだが……パウパーを普段からプレイしている者はいなかった。

 そのため、誰にとっても未知の世界。パウパーとはコモンとしてリリースされたことのあるカードのみを使ってデッキを構築するフォーマットで、筆者も10年以上前にはMagic Onlineで毎日プレイするくらいにはハマっていた時期があった。コモンのみというとデッキが弱いものになると思ってしまうかもしれないが、30年を超えるマジックの歴史における数千数万のコモンが使用可能……と考えれば、かなりクールなデッキが組めるという事実が伝わるかなと。最近はフォーマットの数も増え、急展開を迎えるケースも多々あるため、それらを優先しているとなかなか当コラムでもパウパーを取り上げるタイミングというものを設けられなかった。なので、ここ最近の動向は追えずにいたわけだ。

 パウパー担当者が決定し、彼にデッキチョイスなどを任せて当日を迎えた。そして実際に大会を進めていくうちに……「全然わからんかったっすけど、パウパーおもろいっすわ」と、とても楽しんでいる様子だった。実際にゲームしているところ見ても面白そうで、こりゃそろそろCool Deckで取り上げるか!と思った次第。ちょうど『ダスクモーン:戦慄の館』リリース前(執筆時)で色んな環境も落ち着いているということもあるしね。そんなわけで今回はパウパー、大会でも使用者が多かった環境を代表するデッキを紹介しよう!

Edoardo Mantovani - 「サディスト繁殖鱗」
"Awesome Pauper" 優勝 / パウパー (2024年9月15日)[MO] [ARENA]
4 《鉱滓造の橋
4 《熔融林の橋
3 《屈曲地帯
4 《
4 《
1 《
-土地(20)-

2 《クラーク族のシャーマン
4 《日を浴びる繁殖鱗
1 《進化の証人
1 《ネイディアの夜刃
4 《のたうつ蛹
-クリーチャー(12)-
2 《強迫
4 《浄化の野火
4 《邪悪鳴らし
4 《命取りの論争
2 《腸抜きの洞察
2 《エネルギー屈折体
3 《胆液の水源
1 《血の泉
4 《サディスト的喜び
1 《シルヴォクの生命杖
1 《間に合わせの砲弾
-呪文(28)-
3 《ブレス攻撃
3 《殺し
2 《強迫
2 《ゴリラのシャーマン
2 《やんちゃなアウフ
3 《嵐の乗り切り
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 こちらはパウパーの「サディスト繁殖鱗」、この夏環境をパウパーに大きなインパクトをもたらしたコンボデッキだ。《日を浴びる繁殖鱗》はこれの上に+1/+1カウンターが置かれると、エルドラージ・落とし子を1体生成する。この落とし子は生け贄に捧げると無色マナを加えることができる。そして《サディスト的喜び》は、クリーチャーが死亡する度にこれがエンチャントされているクリーチャーに+1/+1カウンターを1個置く。

 サディストは対戦相手のクリーチャーはもちろん、自身のクリーチャーが死亡しても誘発する。つまり、落とし子を生け贄=死亡させることで、繁殖鱗にカウンターが置かれ、それにより落とし子が生成されそれをまた生け贄に……と、2枚のカードで無色マナを無限に加え、繁殖鱗のサイズも無限にパンプアップさせることが可能だ。お手軽に無限コンボが達成できる!これだけでも現在のパウパーがいかにエキサイティングでクールなものかが伝わるかと思う。

 

 この2枚だけでも、繁殖鱗の攻撃を通して勝つことはできるが……それだけだと確実性は少し薄いというか、勝つまでにタイムラグが発生してしまうことも。繁殖鱗を出したターンにサディスト貼って、そのまま勝利というムーブを決めるために、他の勝ち手段も擁しているのが繁殖鱗コンボの基本だ。トークンが戦場に出たり死亡することを活かして、それによりダメージなどを誘発させるカードがまず候補になる。《のたうつ蛹》は落とし子を生け贄に捧げると肥大していくので、繁殖鱗の代わりに殴る役の水増しに。初出がコモン、後にアンコモンで再録という特殊な経歴を持つ《ネイディアの夜刃》も、トークンが戦場を離れることで1点のライフを吸い取ることが可能。

 あるいは《間に合わせの砲弾》で相手のライフを焼き尽くすという手も。繁殖鱗コンボで相手のライフを上回る無色マナが確保できたら、今度は落とし子を砲弾で生け贄に捧げて1点ダメージ→落とし子死亡でサディスト誘発、繁殖鱗がトークン生成、それを砲弾で投げる……これを延々と繰り返してフィニッシュだ。コモンだけでも多種多様な勝ち方ができる、マジックってつくづくクールなゲームだよな。

 

 黒と緑の2色で成立するコンボに赤を足しているのは、上記の勝ち手段のため、サイドボードに柔軟性をもたらすため、そしてちょっとしたマナ加速コンボのためでもある。《鉱滓造の橋》《熔融林の橋》ら破壊不能を持った土地に対して《浄化の野火》を撃ち込む。野火は土地を破壊し、破壊されたプレイヤーは代わりに基本土地をライブラリーから探すという変則的な土地破壊なのだが、これを自分の破壊不能の土地に対して唱えると、土地は破壊されず基本土地を探せて、純粋にマナが増えることになる。野火はドローもついているので、手札の枚数をいらさずにマナを増やし、ライブラリーの圧縮も出来る。コモンだけでもこんな器用な動きができるもんなんだな。

 コモンだけと侮るなかれ、パウパーは奥が深い。今回初めてデッキを組んだ僕の友人も、ハマってしまいそう、今後もプレイを続けるとの感想だった。チームメイトも皆興味が湧いて、それだけでもこのチームで大会に出た意味があったなぁと、クールな思い出がまた1ページ刻まれることになった。皆も機会があればデッキを組んでみよう。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Fight with commons!!

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