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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:吸血鬼が去り……ラクドスの新スタイル(パイオニア)
2024年夏、パイオニアでは《傲慢な血王、ソリン》《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》が禁止カードに指定された。禁止というものはクールではないが、それにより抑え込まれていたデッキ達がスポットライトを浴びることができるなら、それはクールと呼ぶにふさわしいのだと思う。「ラクドス(黒赤)吸血鬼」「アマリア・ライフ」はそれぞれに他の選択肢を奪ってしまう存在になっていたため、環境にメスが入ったこと自体は英断だ。というわけでマジックのデッキをクールという観点からチョイスして分析する今週のCool Deck。今回は環境に変化が起こったパイオニアに注目してみよう。
アマリアはコンボデッキのキーカードであり、それが抜けることでコンボは不成立に。デッキ自体は消滅し、クリーチャーでライフを得て何かするというコンボは別の形を模索していくことになる。対してソリンが禁止になったということで、ラクドスカラーの定番だった吸血鬼デッキも以前のようには猛威を振るわなくなる。3マナのソリンから《血管切り裂き魔》を叩きつける動きはあらゆるアグロデッキのやる気をへし折ってしまっていたので、これがなくなったことにより息を吹き返すデッキが一つでも多くなればクールだね。ラクドス=吸血鬼という認識が生まれるレベルになっていたが、吸血鬼デッキが誕生する以前の普通のミッドレンジに再びスポットが当たるのだろうか?
4 《血の墓所》 4 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《ロークスワイン城》 2 《目玉の暴君の住処》 2 《バグベアの居住地》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 3 《沼》 -土地(24)- 4 《税血の収穫者》 1 《太陽の執事長、インティ》 1 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 4 《砕骨の巨人》 2 《墓地の侵入者》 4 《黙示録、シェオルドレッド》 -クリーチャー(16)- |
4 《思考囲い》 1 《強迫》 4 《致命的な一押し》 2 《喉首狙い》 4 《密輸人の回転翼機》 1 《勢団の銀行破り》 4 《鏡割りの寓話》 -呪文(20)- |
2 《減衰球》 3 《碑出告が全てを貪る》 4 《虚空の力線》 3 《勢団の銀行破り》 2 《引き裂く流弾》 1 《食肉鉤虐殺事件》 -サイドボード(15)- |
そんなわけで本日1つ目のデッキは、以前はパイオニアと言えばこれ、というレベルで隆盛を誇っていた「ラクドス・ミッドレンジ」。デッキとしての特徴は……これと言ってない、それが特徴と言える。
《思考囲い》などの手札破壊と《致命的な一押し》などの除去、これらのバックアップで《砕骨の巨人》《墓地の侵入者》といった優秀なクリーチャーでのビートダウンを遂行していく。シンプルでありながら、どんなデッキを相手にしても実力を発揮できるという全天候対応型デッキなのが強みだ。吸血鬼デッキでなくとも《税血の収穫者》はパイオニア環境でも指折りの強力な2マナ域。ここから《鏡割りの寓話》と続く黄金リレー、《キキジキの鏡像》まで変身できれば収穫者コピーしてブン投げて……対クリーチャーデッキで殴り負けることを知らないクールすぎるムーブは健在だ。
個性を持たないことが武器というラクドスミッドだが、あえて特徴的な部分を上げるとすれば機体の多さ。このリストでも《密輸人の回転翼機》《勢団の銀行破り》とメインサイド併せれば計8枚、他のパイオニアのアーキタイプではあまり見ない機体重視の構成になっている。どちらも2マナと軽く、カードを引くというアドバンテージをもたらすという点が採用理由になっている。
回転翼機は搭乗コストも軽いのでどんなクリーチャーでも乗り込め、飛行持ちのパワー3と攻撃役にはもってこい。攻撃すればカードを引いて1枚捨てる、手札の不要なカードを他のものと交換するアクションが取れる。これにより墓地を肥やせば《死の飢えのタイタン、クロクサ》の脱出コストが貯まり、強大なタイタンによるフィニッシュに繋げやすくなる。またクロクサは通常コストで唱えて戦場に出すと生け贄になってしまうが、これを捧げる前にタップして機体に搭乗させることができるクールなテクニックは覚えておこう。
さて、1年ほど前は環境の顔だったラクドスカラーのミッドレンジを紹介し……今回はこれでは終わらない。新たなラクドスの定番デッキとして、Magic Online上のトーナメントでメキメキと勢力を拡大している新ラクドスについても触れておこう。
4 《黒割れの崖》 1 《荒廃踏みの小道》 4 《血の墓所》 1 《バグベアの居住地》 2 《山》 2 《ラムナプの遺跡》 1 《岩面村》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 4 《硫黄泉》 -土地(20)- 4 《心火の英雄》 4 《僧院の速槍》 4 《熾火心の挑戦者》 4 《精鋭射手団の目立ちたがり》 3 《無感情の売剣》 2 《戦慄衆の秘儀術師》 -クリーチャー(21)- |
4 《巨怪の怒り》 4 《タイタンの力》 3 《弱者の力》 2 《無謀な怒り》 2 《立身 // 出世》 4 《熊野と渇苛斬の対峙》 -呪文(19)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》(相棒) 4 《致命的な一押し》 1 《無謀な怒り》 1 《流動石の注入》 4 《思考囲い》 2 《未認可霊柩車》 1 《熱烈の神ハゾレト》 1 《敵対するもの、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
こちらはメインはおおむね赤単のラクドスカラーのアグロデッキ。パイオニアでは赤いアグロも人気のアーキタイプだが、その最新モデルは……スタンダードのデッキをベースとしたものだ。スタンダードの赤いデッキと言えば今はハツカネズミが一大勢力を築きつつある。《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》、どちらも軽くて打点に優れるクールなマウスだ。これらのハツカネズミの雄姿能力を誘発させるために《巨怪の怒り》などを採用し、そういった呪文と相性の良い《僧院の速槍》や《精鋭射手団の目立ちたがり》で固めて……これらのパワーを一気に上げて大ダメージを与え、《無感情の売剣》の出来事で対戦相手に放り投げてフィニッシュ。このクールなムーブがスタンダードから丸々パイオニアへ移植されている。
雄姿を誘発させるために自分のクリーチャーを対象に取る……パイオニアの赤にはうってつけのカードがある。《無謀な怒り》だ。これは1マナで4点と効率が良すぎるダメージ呪文で、その勢い余ってか自身のクリーチャーも対象に取り2点ダメージを与えなければならない。使い勝手が良いとは言えない呪文だが、それで対象に取ることで《心火の英雄》はむしろ強くなり、《熾火心の挑戦者》はカード1枚のアドバンテージをもたらす。
また《無謀な怒り》といえば《戦慄衆の秘儀術師》で使いまわす動きがパイオニアの日常風景だった時期もあった。今またその動きがリバイバルされている。《弱者の力》をおかわりしてドローする、《巨怪の怒り》や《タイタンの力》で打点を引き上げると墓地から何をプレイしても強い。そして秘儀術師を使うのであれば《立身 // 出世》も外せない……というわけでほぼ赤単のベースに黒が足される形に。立身はこのデッキのあらゆるクリーチャーを蘇らせ、出世でパワーを上げつつ速攻を付けて殴る動きで、除去で耐えたと思っている対戦相手をノックアウトだ。蘇った《精鋭射手団の目立ちたがり》、速攻を持った《戦慄衆の秘儀術師》……悪夢的なクールさは勝利への特急券だ。
支配的な存在だった吸血鬼が居なくなっても、ラクドスカラーのデッキはパイオニアで脅威として存在し続けるだろう。流行り廃り、代替わりを経て様々なデッキが天下を目指す……これからもパイオニアはクールな環境であってほしいものだ。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Create your new style!!
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