プロツアーは最新セットでのドラフトと構築フォーマットの2つを混合した予選をプレイするのが定番となっている。最強を決める戦いに相応しい形式だ。この両方で高い成績を残さねばならないので、その時に本当に強かった8人が予選を通過することになるわけだ。そして混合フォーマット故に起こる現象が……構築ラウンドでむちゃくちゃ勝ったけども決勝に残れなかったデッキが生まれる、というもの。構築ラウンド10回戦ですべて勝ったとしても、ドラフトで振るわなかったら予選突破は叶わない。大会が終わって、結果を眺めていると……決勝ラウンドでは見ることがなかったアーキタイプが、構築ラウンドで好成績を残していて「おっ」と思わせてくれるのは毎度のことなのだ。

　そんなわけでプロツアー『モダンホライゾン3』より、構築ラウンドで8勝の好成績を収めたリストを紹介しよう。実にモダホラらしい豪快なデッキが火を噴いていたのだ！

　モダホラ3のメインアートはエルドラージ！すべてのエルドラージの血筋の原点であるエムラクール、ウラモグ、コジレックの3体の迫力あるイラストを度々目にしたことだろう。それら3大エルドラージの中でも、構築シーンで暴れまくってきたのが《引き裂かれし永劫、エムラクール》！サイズや除去耐性、追加ターンもさることながら……滅殺6！攻撃するだけで対戦相手にパーマネント6個を生け贄に捧げさせる、えげつなすぎる能力は今見ても震えてしまうものだ。

　このエムラクール、モダンでは《裂け目の突破》との組み合わせが長く愛されてきた。5マナのインスタントによって戦場に出し、速攻を与えて攻撃！この突破から繰り出したクリーチャーはターン終了時に生け贄になるため、賞味期限は非常に短いわけだが、エムラクールで一発殴れればそれで十分すぎるというものだ。クリーチャーやその他のパーマネント、そして土地を根こそぎ壊滅させる滅殺6が決まればほぼ勝ちだ。この突破コンボの最新型がこのリスト。モダホラ3からの新戦力は……

　まず《ウギンの迷宮》。エムラクールを一度投げれば十分、であれば2枚以上手札に来た時にはこの迷宮に放り込んでやればOK。2マナ捻出する土地で《衝動のタリスマン》などどんどんとマナを伸ばしていく、あるいは《エルドラージの寺院》と併せて《難題の予見者》を2ターン目に出すというような動きをするのも最高だ。突破を引くまでは迷宮に隠しておいて手札破壊からエムラクールら巨大エルドラージを護り、突破を引いたら迷宮の能力で追放していたカードを手札に戻す、というムーブができるのも黒いデッキ相手の勝率を高めてくれるだろう。

　そして迷宮のお供はもちろん《運命を貪るもの》。ゲーム開始時に手札に居たなら、これでライブラリーを操作して突破やエルドラージなど初手にないカードを上に持ってきて、デッキを滑らかに動かしてくれる。2マナ土地があれば唱えられるコストではあるので、貪るもので単一の有色パーマネントを追放し、《全ては塵》でまとめて流すという動きで盤面をコントロール。コンボを狙う以外にも相手に戦場を作らせずに勝つという勝ち筋があるのがこの新たな突破デッキの強みだな。

　エムラクールと共に突破から投げつける候補としては《穢すもの、ウラモグ》が設定されている。3度目のカード化となったウラモグは、唱えると対戦相手のライブラリーを半分追放する豪快なヤツ。これが唱えずに突破から投げても強い。戦場に出る際に、追放されているカードの中で最もマナ総量の大きいカードのそのコスト分の＋1/＋1カウンターが乗って出てくる。この追放はウラモグの能力で追放したものだけでなく、追放しているプレイヤーが誰かも問わない。なので《ウギンの迷宮》で追放した自身のカードをカウントして、とんでもないサイズになって戦場に出てくる！さらにそのカウンターの数だけの滅殺を持つので……エムラクールを越える数の生け贄を要求することだって起こり得るわけだ。エムラクールが追放されていたら、なんと滅殺15！オーバーキル気味だが、モダンはこれぐらいの派手さを楽しむフォーマットだ。エムラクールとウラモグですべてを穢し、引き裂くべし。

　このド派手な「エルドラージ・ブリーチ（突破）」、トップ8には入賞ならずではあったがプロツアーで8勝というのはその強さを裏付けるには十分な成績。《裂け目の突破》から一撃で終わるコンボと、無色マナを大量生産して盤面を支配するコントロール力……２つの顔を持ったこのデッキ、すべてのエルドラージ・ファンに一度はプレイしていただきたい！