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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

バント・ナドゥ:今と過去を繋ぐ地平線(モダン)

岩SHOW


 『モダンホライゾン3』リリース。スタンダードを通過しない特殊セット、モダンやレガシーなどの構築フォーマットで使用可能。その範囲の狭さゆえに許されるカードパワー、独自色の強いメカニズム、再録能力や過去のオマージュの数々……モダホラも早くも3セット目が登場だ。個人的にモダホラ系セットの良いなと思えるところは、それまでになかった類のカードが登場することにより、既存のカードの中でも多くの人に忘れられているような、マニアックなカードが突如スポットライトを浴びるという展開だ。単に1枚で強いカードというよりは、何かと組み合わせたくなるデザインの新カード。その何かとは、既にこの世界にあったんだよ!というドラマチックなデッキ誕生物語が好きなのである。

 ではモダホラ3でその辺どうなったのかというと……あり……ます!今回も過去のカードが輝くデッキが早くも登場し、注目を集めている。

 

 《有翼の叡智、ナドゥ》。この伝説の鳥は、自身がコントロールするクリーチャーに面白い能力を与える。それが呪文や能力の対象になった時、ライブラリーの上を公開して土地なら戦場へ、そうでないなら手札へという、青緑らしい形のアドバンテージをもたらす能力だ。これは各クリーチャー1ターンにつき2回まで誘発する。そしてここに注目。「呪文や能力」で誘発するのだ。最近のこの手のカードは呪文の対象になった際にしか誘発しないものが増えていたが、ナドゥは能力もOK。こうなると自分のなんらかの能力でクリーチャーをどんどん対象に取って、土地と手札をたっぷりと獲得したい……そう願うのは自然な欲求だ。さて、このナドゥと相性が良いカードをモダンのカードプールで探すと……なんとそれはおよそ20年前に作られたものだった!

Sean Weihe - 「バント・ナドゥ」
$5K RCQ - Modern - SCG CON Las Vegas トップ8 / モダン (2024年6月10日)[MO] [ARENA]
4《霧深い雨林
2《溢れかえる岸辺
2《吹きさらしの荒野
2《繁殖池
1《寺院の庭
1《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ
1《天上都市、大田原
1《耐え抜くもの、母聖樹
4《ウルザの物語
2《冠雪の島
3《冠雪の森
-土地(23)-

4《喜ぶハーフリング
1《森を護る者
4《春心のナントゥーコ
4《とぐろ巻きの巫女
4《氷牙のコアトル
3《根の壁
1《タッサの神託者
4《有翼の叡智、ナドゥ
1《忍耐
1《コーの先導
-クリーチャー(27)-
4《召喚の調べ
4《拒絶の閃光
2《手甲
-呪文(10)-
3《緻密
2《否定の力
2《活性の力
1《機能不全ダニ
2《時を解す者、テフェリー
2《夏の帳
1《忍耐
1《大祖始の遺産
1《真髄の針
-サイドボード(15)-
Melee より引用)

 

 

 というわけで環境開幕最初期に登場した「バント・ナドゥ」の一例をご紹介。ナドゥと組み合わせるべきカードとは《手甲》!クリーチャーのパワーが1上昇するのみ、ちっぽけな装備だ。その効果の小ささゆえに装備するためのコストは{0}。装備という能力はクリーチャーを対象に取って起動する能力だ。つまり、《手甲》はマナを一切使わずにクリーチャーを能力の対象に取れる貴重なツール!ナドゥがいればこれで各クリーチャー2回ずつ、その能力を誘発させてアドバンテージを獲得可能!

 そしてこの《手甲》とナドゥとさらにもう一つのエッセンス、《春心のナントゥーコ》が加わると……トップを捲って土地だと戦場へ。それによりナントゥーコの上陸能力も誘発。1/1の昆虫を生成する。この昆虫に《手甲》を2回持たせれば、またナドゥとナントゥーコの誘発チャンス。マナも手札も増えていくので、自ずとナントゥーコの2枚目3枚目も並んで、恐るべき展開力に発展していく。こうなったらもう止められない。

 

 こうしてループが形成されれば、ライブラリーの中の土地がすべて戦場に出てその他は手札にという状況に。ライブラリーを空にする動きは《タッサの神託者》にとってのゴールだ。これを叩きつけてそのまま勝利をかっさらおう。決まれば滅茶苦茶気持ち良いだろうこのコンボ、モダンともなれば各種サポートも充実。《ウルザの物語》は《手甲》をサーチするためのうってつけの手段だ。さらに新カード《拒絶の閃光》はナドゥや神託者を通したり、ナドゥ及びナントゥーコを除去から守るためのマナ不要の打ち消しだ。再録となる《森を護る者》なども用いて、安全にコンボを狙いに行こう。

 

 個人的にこのデッキのたまらない1枚が《コーの先導》!《手甲》はレガシーなどで同じ様にクリーチャーを対象に取り続けるコンボデッキで活躍しているので、モダンでこそ埋もれていたが愛好家には知られていた1枚だ。その点先導はマニア向けの中のマニア向け。自身に与えられるダメージを他のクリーチャーに移し替えるという、起動コスト{0}の能力を持つのが初出時のコーという種族だった。この先導はその流れを受け継いだ1枚として、これまた2006年に作られた古いカードだ。まさかこのカードがスポットを浴びるとは、マジックは読めないものだなぁ。ナドゥやナントゥーコをサーチするための《召喚の調べ》で持ってくる候補として1枚搭載されており、往年のマジックファンの心をくすぐってくれる。

 単に新しいものが入るわけじゃない、モダホラなどのセットでそういう拡がり方をしてくれるのは嬉しいことだ。新しきものを知ることで、古いものの輝きが見えてくる。マジックは歴史であり、文化だ。モダンという地平線を旅していこうじゃないか。

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