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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
スタイフル・ノート:スラルがもたらすメリット(レガシー)
マジックにはプレイヤーに特定のアクションをさせない、制限を課すようなカードがいくつも存在している。そういった妨害カードを使って相手に何もさせないゲームというのは、そこからしか得られない栄養素があるかのような気持ち良さがある。しかしそれが対戦相手のみではなくプレイヤー全員に被害が及ぶという効果範囲の広さに、時に悩まされたことはないかな?「あれ、これって自分にも適用されるのか……ちょっと話が違うぞ」と。
たとえば《真昼の決闘》。各プレイヤーは1ターンに1回しか呪文が唱えられなくなる。これのおかげで相手の手数を大幅に減速させることはできるが、同時に自分もドロー呪文で引いてきたカードを即使って……というような動きができなくなる。考えてデッキ構築をしないと、自分で自分の首を絞めかねないってわけだ。特に白は平等という概念を司る色として設定されているため、このように対戦相手だけではなくすべてのプレイヤーが等しく苦しむようなカードを度々送り出してくる。
《門衛のスラル》もそういった誰にでも平等に害をもたらすクリーチャーだ。クリーチャーやアーティファクトが戦場に出た時に誘発する能力をシャットアウトする。これはその出てきたパーマネント自身の能力は勿論、出てきたことで他のパーマネントが誘発させる能力も封じる。かなり広い効果範囲を誇り、その上なんと瞬速持ちだ。相手がそういった誘発を引き起こすカードをプレイしてきたタイミングでスッと差し込めば、最高の嫌がらせに。ただ自分もそういった誘発の恩恵は受けられなくなるので、デッキを組む際は同居させるカードは考えもの。
と、ここで一つ別の角度から考えてみよう。戦場に出た時に誘発する能力、それは果たしてメリットのみをもたらすものなのか……答えはもちろんNoだね。戦場に出た時にコントローラーのライフを失わせたり、何か生け贄を要求したり……デメリットとしての誘発型能力を持っているものもいるものだ。それらのカードはスラルがいることで、ノーリスクのカードへと変貌する。この手のカードには自分にも影響することを逆手に取った、そういうアプローチもあるってことだ。
4《霧深い雨林》 3《溢れかえる岸辺》 3《Tropical Island》 2《Tundra》 1《Savannah》 1《行き届いた書庫》 4《不毛の大地》 1《島》 -土地(19)- 3《門衛のスラル》 4《ファイレクシアン・ドレッドノート》 4《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 2《濁浪の執政》 -クリーチャー(13)- |
4《渦まく知識》 4《思案》 4《目くらまし》 4《意志の力》 3《もみ消し》 4《激しい叱責》 4《剣を鍬に》 1《壌土からの生命》 -呪文(28)- |
2《夏の帳》 1《青霊破》 2《否定の力》 2《無のロッド》 2《虹色の終焉》 2《外科的摘出》 2《未認可霊柩車》 2《覆いを割く者、ナーセット》 -サイドボード(15)- |
そんなわけで紹介するのはレガシーの「スタイフル・ノート」。同フォーマットの黎明期より存在する、コンボ要素を内包した歴史ある青系のデッキだ。スタイフルとは《もみ消し》のこと。これで超ド級のサイズながらデメリットもとんでもない《ファイレクシアン・ドレッドノート》の誘発型能力を打ち消す。そうすることで、カード2枚の消費にはなるが、最序盤に12/12トランプルという桁違いのサイズの化け物がスタンバイ。後はこれで2回攻撃する間に相手の抵抗を《目くらまし》《意志の力》などの打ち消しで弾く……という豪快かつスマートなデッキだ。
最近では《もみ消し》と《激しい叱責》も併用する。相手のクリーチャーの能力を失わせることで何かを参照したタフネスを持つクリーチャーを除去したりできる、その上で1ドローが付いていて手札が減らないというとても使い勝手の良い叱責。これであれば実質的に手札の消費は1枚でドレッドノートを運用できる。この叱責の追加枠的な存在であり、かつ相手の《悲嘆》や《孤独》などを無力化させる役目を背負っているのが《門衛のスラル》というわけなのだ。相手のクリーチャーのメリット能力を封じ、ドレッドノートのデメリットを帳消しに。これぞ攻防一体!
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は戦場に出た時に1枚ドローと3点のライフ、そして手札から土地を出すというメリット能力を誘発させる。これをスラルでなくしてしまうのは勿体ない……ように感じるが、実はこの2枚も相性◎。ウーロは脱出能力で墓地から唱えた場合でない限り、戦場に出ると生け贄に捧げる能力が誘発する。使い捨てのソーサリーのように用いて、墓地が貯まってから脱出で戦場に居座るというデザインが施されている。スラルはこれを無視して、素のウーロもそのまま戦場に留まらせる。3マナ6/6、ドレッドノートに比べるとインパクトは薄くなるが……先述の3つのボーナスは攻撃時にも誘発する!スラルは攻撃に関する誘発は見逃すので、戦場に留まればあとは打ち消しで守って、殴り続けていれば対戦相手を圧倒できてしまう。生け贄だけを《もみ消し》する、《不毛の大地》を《壌土からの生命》で拾っては投げるを繰り返す……などなど、あの手この手でウーロというカードをしゃぶりつくす!
ドレッドノートとウーロ、ファイレクシアとテーロスの死の国から現れる怪物たち。これらが這い出る地獄の門の鍵は《門衛のスラル》が握っている……平等に不利益をもたらす白いカード。デッキ構築ではむしろ利益が得られるので、皆もちょっとズルい運用を色々考えてみよう。相手のみがしんどい状況を作る、これぞ勝利への近道だ。
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