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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:おにぎりコンボ、死の反復横跳び添え(レガシー)

岩SHOW

 肝心のゴールデンウィークは……どっちかというと天気が優れない日々が続いたように感じる。いざ連休が終わると、徐々に行楽日和という感じの空が見えてきた。五月晴れという言葉が好きな5月生まれ、まいどおおきに岩SHOWです。いい天気の日にはピクニックに出かけたくなる、小学校の遠足を思い出す……学校の皆で外に出て、色んなものを見学し世界の面白さを知る。お弁当の時間が楽しみで、俵型のおにぎりが好きだったなぁ。前日にともだちと駄菓子屋におやつを買いに行く、あの工程も含めてクールな体験だった。まあかといって小学生が遠足の感想を「クールだった」とか言ってたらそれはそれでどうなんだと思わなくもない。何の話やら、今週もクールデッキのお時間ですよ。

 何の意味もなく遠足どうこうの前フリを書いたわけじゃないぞ。そこにはクールな理由がきちんとあるのだ。お弁当の定番、おにぎり。その愛称で呼ばれるカードが日本マジック界で一種の伝説となっている。いつぞやのプロモのおにぎりアートのカードじゃないぞ。あれもプリティだったけどもね。

 そのカードは《Phyrexian Devourer》。ファイレクシアの巨大リサイクル装置が地上のあらゆるものを飲み込み、別のものに作り替える……かわいさとは対極の設定ではあるが、そのイラストは三角形でどこかユーモラス。そのためおにぎりの愛称がつけられ広まった。このDevourer(日本語名は存在しない、それもまたクールだ)は、6マナというコストに見合わない1/1というちびっこいサイズ。ライブラリーのカードを追放し、そのマナ総量分サイズアップ。しかしパワーが7を超えると、これは生け贄になってしまう。何とも使い勝手の悪い、当時としても弱いクリーチャーではあったのだが……これが生け贄になる能力を解決する前に、何度も何度もライブラリーを喰わせる。これでパワーが対戦相手のライフを越えたところで《投げ飛ばし》で射出し、勝利するというコンボが発見される。

 カードの弱点を克服したこのコンボ「おにぎりシュート」は日本のコンボデザイナーにより構築され、1999年の世界選手権に持ち込まれ……るはずだったが、このコンボが早ければ2ターン目に決まることを当時の運営は危険視し、なんと大会前日にDevourerの能力が修正されてしまった。パワー7以上になればその瞬間に生け贄に捧げられ、再生も不可=パワーが膨れ上がった状態を利用することができなくなり、コンボは不成立に。残念な話ではあるが、このエピソードも相まっておにぎりは忘れられない歴史に名を刻んだカードとなった。2011年にこの変更は解除され、現在はおにぎりを使ったコンボが可能となっている。

 このクールなエピソードを持つ《Phyrexian Devourer》を用いるコンボデッキを、2024年現在にレガシーにて発見したので今回取り上げさせていただくわけだ。おにぎりでもかじりながら読んで頂戴。

UrzaEnjoyer - 「ウェルダー」
Magic Online Legacy Challenge 32 トップ8 / レガシー (2024年5月4日)[MO] [ARENA]
4《血染めのぬかるみ
2《Badlands
1《大音声の劇場
3《大焼炉
4《古えの墳墓
4《ウルザの物語
1《
3《
-土地(22)-

2《ゴブリンの溶接工
4《ゴブリンの技師
4《オークの弓使い
3《舷側砲の砲撃手
1《ファイレクシアのドラゴン・エンジン
2《激情
1《ケイオス・ディファイラー
1《Phyrexian Devourer
1《歩行バリスタ
-クリーチャー(19)-
4《水蓮の花びら
1《オパールのモックス
2《死亡 // 退場
1《納墓
1《虚無の呪文爆弾
1《影槍
4《アガサの魂の大釜
4《鏡割りの寓話
1《罠の橋
-呪文(19)-
4《紅蓮破
3《紅蓮操作
2《月の大魔術師
1《敵対工作員
1《真髄の針
2《外科的摘出
2《アメジストのとげ
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 Devourerで勝つ、その最短のコンボは……《アガサの魂の大釜》を用いる。墓地のDevourerを追放することで+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーはこれの能力を得る。そして適応されるのは起動型能力のみなので、パワーが7を上回っても生け贄になることはない。これで制限がなくなったクリーチャーにライブラリーをひたすら食わせて攻撃!とやっても良いが……もっと確実性を求めるのがクールなコンボというものだよ。《歩行バリスタ》!これは自然とカウンターが乗って戦場に出るし、おにぎりの能力で育てたらそのカウンターをバスバスと対戦相手に撃ち込み、ダメージで勝ってしまえる。3つのカードが噛み合いすぎていて、無茶苦茶スマートなコンボだ。なんだったらバリスタも捨てさせられたり打ち消されたりしたのなら、大釜に放り込んで他のクリーチャーに能力を継承させれば良い。隙は欠片程もないッッ。

 このデッキは赤をメインに黒を少し足す形で作られている。大釜おにぎりバリスタは無色なのでコンボのパートナーにする色はなんでもOKなのだが……このデッキの色のチョイスの理由は《ゴブリンの技師》がいるからだ。アーティファクトをライブラリーから墓地に落とす。これでおにぎりを落としても大釜にイン、あるいは大釜を埋めて適当なアーティファクトをコストに充てて技師の能力で引っ張り上げる。コンボを成立させるためのサーチ手段として、実に噛み合ったクールなチョイス!これと黒の《納墓》、また《鏡割りの寓話》で手札から捨てるなどして、墓地を用いたおにぎりコンボを成立させるというわけだ。そして大釜コンボのパーツだけでなく、《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》など状況にあわせて他のカードを埋めることで、ゲームの勝利へと近づいていく。アドリブが効くデッキってクールだよなぁ。

 おにぎり以外のプランでクールなものは《ケイオス・ディファイラー》。名前がたまらんよ、何度でも口にしたいクールさだ。この悪魔のマシンと組み合わせるのが《ゴブリンの溶接工》!戦場と墓地のアーティファクトを交換するというテクニカルな能力持ちで、これでディファイラーを墓地に送り、墓地から出すという動きを繰り返す。ディファイラーは戦場に出るか死亡すると能力が誘発、対戦相手のパーマネントを選んで破壊する。統率者戦向けに無作為に選ぶという過程があるが、レガシーであれば対戦相手のパーマネントを選んで破壊できる。しかも対象をとらないので呪禁やプロテクションもなんのその。毎ターン2回誘発などさせれば、相手の戦場がガラガラと音を立てて崩壊していく。死の反復横跳びと呼ばれるこのムーブ、決めればそのはクールに眠れるぜ。

 伝説のカード《Phyrexian Devourer》。おにぎりというかわいい名前とは裏腹に、その能力はかつて封じられたほどにデンジャラス。ライブラリーを糧に、対戦相手を吹き飛ばせ。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Let's eat rice balls on a picnic‼

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