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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:復活のホマリッドは切削の味(スタンダード)

岩SHOW

 ゴールデンウィークを挟んで2週間ぶり、さあ金曜日を彩るCool Deckのお時間ですよ。マジックのデッキを、他の尺度はひとまず置いといて“クールさ”という観点からビビッときたものをご紹介!今回もクールなデッキで皆のゲーム体験をよりクーラーでクーレストなものへと誘おう。

 『サンダー・ジャンクションの無法者』には目新しさと、そして懐かしさが同居している。そういうセットを何と表現する?そう、クールだ。この西部劇風の次元はこれまでになかった光景を見せてくれるが、その新たな地平で躍動しているのは見知った顔が多い。初出が30年近く前になるケアヴェクを筆頭に、過去のセットで我々を楽しませてくれたクールなキャラクターが再登場。ある者は無法の限りを尽くし、ある者は開拓地に夢を見て…それぞれの思惑を胸に大集結。

 他にもブラッシュワグやアナグマなど、初出が古いマイナーなクリーチャー・タイプを持つカード化されているのがなんとも言えないクールな気持ちにさせてくれる。その中でもホマリッドはかなり久しぶりの登場になる。『ドミナリア』以来のカード化だ。ホマリッドは名前の元ネタがオマール海老(homard)であり、見た目にもわかるようにハサミを持ったロブスターが知性を持った種族だ。大昔のドミナリアでは、このホマリッドがマーフォークの帝国を滅ぼすという事件も起きており、ユーモラスな見た目に反してデンジャラスな部族なのだ。

 ホマリッドはマジック黎明期にカードとして登場し、その見た目も相まって当時のプレイヤーには強く印象に残っている。上述の帝国の滅亡を描いたセットではメイン種族の一つでもある……のだが、実はマジックの長い歴史でカード化されているのはたったの9枚。少ないんだな……かなり印象に残っているので、枚数の少なさをカバーできるクールさを有しているものと考えられる。

 さて、肝心の新ホマリッド《深泥の荒くれ者》をチェックしよう。タフネス4と割と硬めなのはさすが甲殻類。砂漠のオアシスから這い出してきたようなこのホマリッドは傭兵であり、無法者関連のシナジーが期待できる。またこれ自身は悪事を働くと誘発、ライブラリー3枚の切削という絶妙ないやらしさで、対戦相手のデッキを崩していく。リミテッドではこれで地上を固めてライブラリーアウトを狙うのもクールな勝ち方だ。今回紹介するのはこのホマリッドの荒くれ者を採用したものなのは言うまでもない。フォーマットはスタンダードだ。では海老の実力、見せてもらおうか。

Spuga - 「ディミーア・ミル」
スタンダード (2024年4月30日)[MO] [ARENA]
3《地底の大河
4《闇滑りの岸
4《難破船の湿地
3《不穏な浅瀬
1《天上都市、大田原
3《
6《
-土地(24)-

3《深泥の荒くれ者
-クリーチャー(3)-
2《セレスタス
3《切り崩し
4《喉首狙い
2《シェオルドレッドの勅令
2《長い別れ
3《死人に口無し
2《不憫な悲哀の行進
2《かき消し
3《記憶の氾濫
3《多元宇宙の突破
2《極悪非道の盗人
2《再覚醒したジェイス
3《完成化した精神、ジェイス
-呪文(33)-
AetherHub より引用)

 

 というわけでスタンダードのディミーア(青黒)カラーのLO(ライブラリーアウト)デッキのサンプルリストだ。基本はコントロールデッキである。黒のクリーチャーやプレインズウォーカーへの除去を用いて盤面を捌き、青の打ち消しや手札補充でそれを後押しする。《深泥の荒くれ者》がフィニッシャー兼壁役であり、これの切削を行うために悪事を働くのは……いとも簡単だ。《喉首狙い》など相手のクリーチャーへの除去を唱えていれば、それが対戦相手の戦う術をも奪っていく。まさしく攻防一体、こちらが生き延びれば相手がいずれ力尽きるという持久戦デッキである。

 切削といえばスタンダードでは《完成化した精神、ジェイス》定番のLO手段。彼の能力は3つともが対象を取るものであるため、これもまた悪事という条件をイージーに満たしてくれる。ホマリッドを突破しそうな高パワー持ちを弱体化させて、削る。3枚削ってドローして、さらに削る。Xの3倍削り落として、ダメ押しで削る!ホマリッドとジェイス、ビジュアル的には意外な組み合わせだがゲームにおいては最高に噛み合うクールな取り合わせだ。

 そんなジェイスがもう一種類。《再覚醒したジェイス》……これが採用されている理由とは?単純に手札を入れ替える、いわゆるルーターとしては悪くはない。手札が増えるわけではないが、《記憶の氾濫》を捨てるなどすればお得感がある。計画して悪用できるような呪文はこのデッキにはい採用されていないが、荒くれ者をスタンバイさせておいてここぞというタイミングから連打、完成化ジェイスを絡めて一気にフィニッシュという動きもクールかも。

 しかし最も重要なのは実は[-6]能力。このターンに唱える呪文をコピーしてくれるというもの。これで計画しておいたホマリッド大増殖作戦も面白いし、シンプルに相手のライブラリーを吹き飛ばす呪文を2倍にしてフィニッシュということも。《多元宇宙の突破》を唱えればライブラリー20枚が消えてなくなった上に相手の墓地からパーマネント2体分いただける。あるいは《極悪非道の盗人》は?マジ極悪なんて言葉じゃ生ぬるいぜ……このえげつない行為、いともたやすくクールに行おう。

 このリストで実際にプレイしてみて、ホマリッドからチクチク削っていく動きは中々に楽しかった。同時に少し打ち消しが足りないようにも感じたので……《三歩先》などはどうだろう。打ち消しであり、カードも引ける。そしてマナに余裕があればホマリッドを増やしてプレッシャーをかける!という動きはかなりクールに思える。このリストを何歩先まで持っていけるかは君次第。

 懐かしの種族が色々と蘇りつつあるマジックの多元宇宙。一時期は増え過ぎたクリーチャータイプを減らす方向で動いていたが、今はむしろ増やして返事つの生態系のように多種多様な生物が棲む豊かさを表現する方向に向かっているのだろう。一時期は泥の底に眠っていたホマリッドらがまた闊歩する光景を見られるとは感激だ。今後もこのようなクールな体験が続くことを願って……それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Watch out for lobsters‼

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