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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ゴルガリ・ミッドレンジ:今日の主役はヴラスカ!(スタンダード)

岩SHOW

 新カードについて考える時、どうしても付いて回る問題が既存のカードとの比較だ。同じ色・マナコスト・カードタイプ・クリーチャーであればサイズ……被る要素があればあるほど、既存のカードと比べて新カードは何が勝っているのか・役割分担はできるのか?という考察は避けては通れない。そうやって悩むときもまたデッキ構築の楽しい瞬間だ。

 『サンダー・ジャンクションの無法者』の背景ストーリーでも重要なキャラクターである《静める者、ヴラスカ》。彼女が初めてクリーチャー化された新カードは、黒緑のイメージカラーをそのまま継承しつつ3マナ3/3、ゴルゴンの定番である接死を持っている。対戦相手のクリーチャーが死亡すると……少々ややこしいことが書いてあるが、それはクリーチャーではなく宝物になってこちらのコントロール下で戦場に戻ってくる。触れた標的を石にしてしまう特技を表現した能力というわけで、奪ったクリーチャーは宝物となっているので戦闘には参加させられない。バチバチの戦闘向きのクリーチャーを奪ってもマナにするしか使い道はないが、いわゆるシステム系のクリーチャーを奪った際には宝物として飾っておきながらその恩恵を受けることができる。《大洞窟のコウモリ》だったり《遠眼鏡のセイレーン》を奪って得をしたり、《黙示録、シェオルドレッド》でライフを詰めたりと面白いことができる1枚だ。

 この新たなヴラスカをスタンダードのデッキに採用するかを検討する時に、真っ先に思い浮かぶ比較対象が《グリッサ・サンスレイヤー》だ。同じ色・コスト・サイズ・伝説・接死持ち、とにかく被っているスペックだが、グリッサは先制攻撃も併せ持っているので戦闘面ではこちらに軍配が上がる。グリッサは攻撃を通すと3つのモードから1つ選べる。多くの場合はドローを行い、ケースによってはエンチャント破壊やカウンターを取り除くという使い分けができるのも大変に強力だ。黒緑、ゴルガリと呼ばれるカラーのデッキを組む際には3マナ域のクリーチャー候補としてまずグリッサは外せない、ポジションを保持している定番中の定番カードだ。

 既存のデッキのこのグリッサのスロットをヴラスカに置き換えるのかどうか?それはなかなか難しい問題かもしれないが……なんだったらこの二人、一緒に使ったら良いんじゃないのか?という考えのもとに設計されたデッキリストを発見した。迷ったら両方いっとけ、とはどのジャンルでも耳にするではないか。マジックも同じことが言えるかもしれない。

ReikoBoy - 「ゴルガリ・ヴラスカ」
スタンダード (2024年4月17日)[MO] [ARENA]
2《地底の遺体安置所
4《死天狗茸の林間地
3《ただれた峡谷
7《
7《
-土地(23)-

4《静める者、ヴラスカ
3《グリッサ・サンスレイヤー
3《自由放浪団の見張り
4《分派の説教者
2《厄介者、ギサ
2《最深の成長、オヘル・カスレム
1《最深の裏切り、アクロゾズ
-クリーチャー(19)-
3《喉首狙い
2《星界の飢餓
2《暗殺者の戦利品
4《束縛の交渉術
2《ヴラスカの加入
2《タリアンの魂断ち
3《執念の徳目
-呪文(18)-
AetherHub より引用)

 

回転

 というわけでスタンダードより、ヴラスカを主役としつつグリッサと共演させたゴルガリのリストをご紹介。2枚勘弁以外にも伝説のクリーチャーをいくつか採用している。これにより《ヴラスカの加入》の威力を高めるというのが狙いにあるようだ。このエンチャントは接死カウンターをばら撒いてクリーチャーの厄介度を高めると同時に、伝説のクリーチャーが対戦相手にダメージを与えるとカードが1枚引ける。ブロックにしにくいクリーチャーで攻撃し、通しても地獄・ブロックしても地獄というアリ地獄に引きずり込むというわけだ。トランプルを持つ《最深の成長、オヘル・カスレム》が接死も得たのであれば、ブロック・クリーチャーに与えるダメージは1点でよく、残りのダメージはすべて本体に叩き込める。効率よくダメージを与えつつドローして、対戦相手をノックアウトだ。

 他にも接死と相性の良い《星界の飢餓》を採用したり、デッキの様々なパーツがヴラスカと噛み合うということを強く意識した上でチョイスされている。《タリアンの魂断ち》などはまさしくそれで、対戦相手のクリーチャーが死亡することで誘発、それをヴラスカが宝物にし、その宝物を生け贄に捧げたことでさらに誘発、と装備しているクリーチャーを効率よくサイズアップさせられる。警戒も持つので、グリッサがこれで攻防両面における究極生物となってしまう、なんて場面も。

 他に採用されている新カードとしては《厄介者、ギサ》も要注目だ。彼女もまた黒の他のクリーチャーらと比較される立場にある。書いてあることは強力であることは違いないのだが、果たしてどれほど働きを見せてくれるのか……これからまだまだプレイを重ねることでその実力が判明することだろう。このリストでは《ヴラスカの加入》でドローするための伝説の枠であり、各種除去で悪事を働いてゾンビを生成することも現実であるため採用されている。

 そしてこのギサの能力をより確実に採用させるために、2色土地の枠には《ただれた峡谷》を搭載。砂漠サイクルに共通する対戦相手本体に1点、微々たるダメージだがこれで対象に取ることで悪事を働き、ゾンビを呼び出すのだ。土地を戦場に出すという妨害されにくいアクションで、ギサを出してすぐさま条件を満たす。こういう工夫により、ギサを出しただけで何かする前に除去された、という最悪のシナリオは回避しやすくなるというものだ。《自由放浪団の見張り》を誘発させて土地を伸ばす動きもGood。

 新カードと既存のカードは比較される運命にある。こればかりは避けられない。時にそれらは置き換えられ、あるいは席が空いていないという結末に至るかもしれない。しかしそれらを組み合わせて共に用いるという道が見つかれば……マジックは更に楽しいものになるだろう。

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