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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

放血、奔出、一撃コンボ!(スタンダード)

岩SHOW

 プレイヤーをひどい目に合わせる呪文は数あれど、それを極めているのは黒という色だろう。呪い、肉体の腐敗、精神崩壊……そういったものを司る暗黒の色だ。中でも各種の病、疫病の類は質が悪い。古くは《悪疫》がその象徴だ。対戦相手のライフ・手札・クリーチャー・土地を三分の一失わせる。ありとあらゆるリソース(資源)をもぎとる、性格の悪い(誉め言葉)ソーサリーだ。《小悪疫》など、この呪文のリメイク的なものはいくつか作られた。いずれも対戦相手のリソースをまとめて同時に失わせる、豪快さが一部の愛好家の心を掴んでいる。

 そんな悪疫系の呪文の最新作が『サンダー・ジャンクションの無法者』で登場。《戦慄の奔出》だ。放題という能力を持ち、指定されたコストを払うことで呪文として完成する。モードは1つを選んで手軽に使っても良いし、すべて選んで高コストな強力呪文に育て上げるというのもアリ。プレイヤーのアドリブ力が問われる面白いデザインだ。

 《戦慄の奔出》は悪疫の系譜らしく、クリーチャー・手札・ライフを半分失わせるというモードを持つ。奇数で半分にできない時には切り上げとなるので、クリーチャーが3体いれば2体生け贄になる。カードアドバンテージの観点から言えば、1枚のカードで対戦相手のカードを1枚でも多く失わせることが重要。なのでこの奔出も、クリーチャーを除去しつつ手札を捨てさせて……ライフは最後で良いか、と。ライフを失わせると言っても半分になるだけで、この呪文で0にすることは残りライフが1点とかでもない限りできないからね。

でーーきーーる!

一行で前言撤回。この奔出で対戦相手のライフを0にする方法がある。しかもそれはスタンダードでも狙える。

 《アクロゾズの放血者》。対戦相手がライフを失う際に、その値を2倍にするという置換効果をもたらす吸血鬼だ。これ自身のパワーは2点なので、対戦相手に戦闘ダメージを与えるなら2点……が倍になって4点。ダメージを与えたりライフを失わせるという処理と組み合わせることで、対戦相手を一気に追い詰めることが期待できるクリーチャーだ。

 この放血者をコントロールしている状態で《戦慄の奔出》を撃ち込むと……対戦相手のライフが20だとして、ライフの半分である10点を失わせることになる。そしてその処理を行う際に失うライフの値が倍になって、結果として20点のライフを失うことに。一撃必殺だ。相手のライフがそれこそ万だの億だのに到達していたとしても、この2枚が揃えば問答無用でゲームオーバー。全てのライフを喪失させるド派手コンボ、これを決めるデッキの一例を紹介しよう!

Bohe - 「黒単アグロ」
スタンダード (2024年4月16日)[MO] [ARENA]
18《
4《魂の洞窟
2《見捨てられたぬかるみ、竹沼
-土地(24)-

3《すりのチビボネ
4《大洞窟のコウモリ
4《アヤーラの誓約者
2《新たな血族、ヴァドミル
4《分派の説教者
3《下水王、駆け抜け侯
2《懲罰者、ケアヴェク
4《アクロゾズの放血者
3《黙示録、シェオルドレッド
1《最深の裏切り、アクロゾズ
-クリーチャー(30)-
2《喉首狙い
4《戦慄の奔出
-呪文(6)-
MTG Arena Zone より引用)

 

 放血者×奔出コンボは黒マナを大量に求められるため、狙うなら黒単色が無難。ということで「黒単アグロ」の新環境対応版の登場だ。放血者は純粋に戦闘ダメージを増やしてくれるものなので、《アヤーラの誓約者》などの攻めに向いているクリーチャーを中心にしたデッキで輝く。《黙示録、シェオルドレッド》の能力も倍になるため、ドローを狙う相手への強烈なプレッシャーにもなる。アグロとして短期決戦を狙うデッキに、オプションとして一撃必殺コンボを盛り込んだという形だ。

 サンダー・ジャンクション参入後のスタンダードで大きく評価かが上がりそうなカードといえば《下水王、駆け抜け侯》。このネズミの王はサンダー・ジャンクション前のスタンダードでも使われ続けてきた、トークン生成兼墓地対策を行う便利なクリーチャー。そこに新環境ではさらなる要素が加わる。マナを支払わずに毎ターン「悪事」を行えるという、数少ないカードである。悪事は対戦相手・そのパーマネントと・その墓地を対象に取ることで働いたとみなされる。ネズミが戦場に出て対戦相手の墓地のカードを対象に取り追放することで、悪事によりボーナスを得られるカード達が躍動する。

 《新たな血族、ヴァドミル》は2マナと軽く2/2と同マナ域の最低スペックの持ち主でアグロデッキで運用しやすい、悪事系のレジェンド。1ターンに1回、悪事を働くたびに+1/+1カウンターで強化される。これの数が増えればさらに能力も増えて殴り合いが超有利に。そこまで育てるのは難しいにしても、3ターン目駆け抜け候から3/3に育てて攻撃という動きはアグロとしてはなかなか理想的だ。

 そして《懲罰者、ケアヴェク》はどちらかといえば長期戦への保険。墓地の黒い呪文が唱えられるので、悪事を働いて盤面を立て直すという動きで、本来望ましくない長期戦にもなんとか対応しようという構えだ。これらが除去の的になれば、放血者の生存確率も高まる、くらいのポジティブシンキングで。一癖二癖あるクリーチャーでの攻め、そして隙あればコンボを決めてゲーム終了のスイッチを押す!この傍若無人、これぞ悪疫系カードを用いてきたデッキの最新バージョンに相応しい!

 対戦相手のリソースを削る、これほど楽しいことはない。コンボでの大逆転、これほど楽しいこともない。それらが合わさる《戦慄の奔出》デッキ。スタンダードの黒いデッキの新定番になるか?プロツアーのデッキ分布も今から楽しみだ。

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