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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
黒単アグロ:思考囲いと回転翼機、今昔(パイオニア&エクスプローラー)
突然だが《思考囲い》はお好きかな?このカードは使う側とつかわれる側でハッキリと分かれる1枚だ。手札から土地でないカードを捨てさせる、このアクションを2点のライフという対価を支払うことで黒マナ1つでかなえる。実に黒らしく、リスクを恐れずにリターンを取りに行くデザインだ。ライフを失う関係で赤単のようなアグレッシブな相手、あるいは土地を主体としたデッキ相手には使いにくいが、それ以外の相手であればミッドレンジもコントロールもコンボも、いずれに対しても効果的な一手となる。対戦相手のデッキとその手札を確認し、重要なコンボパーツだったり、こちらの展開を阻害する除去や打ち消しだったりを捨てさせる。安全確認として《思考囲い》に勝るカードはそうそう存在しない。
様々なフォーマットで高いシェアを集めているが、特にパイオニアではこれが環境を定義する1枚になっている。パイオニアのデッキを組むときには、囲いを打つ側か打たれる側かを選ぶというところから始まると言っても過言ではないのだ。
パイオニアが制定された2019年当初も《思考囲い》が使える!という理由からこのフォーマットをプレイし始めた人も少なくないはず。フォーマットがスタートした最初期、様々なデッキが組まれることになったが、それらへのアンサーとして「とりあえず囲いから手札確認して攻め切る」というコンセプトのデッキが台頭することになった。「黒単アグロ」の時代が始まったのだ。
15《沼》 4《ロークスワイン城》 4《変わり谷》 1《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(24)- 4《漆黒軍の騎士》 4《夜市の見張り》 4《血に染まりし勇者》 1《どぶ骨》 4《屑鉄場のたかり屋》 4《残忍な騎士》 3《悪ふざけの名人、ランクル》 -クリーチャー(24)- |
4《致命的な一押し》 4《思考囲い》 4《密輸人の回転翼機》 -呪文(12)- |
2《集団的蛮行》 1《強迫》 3《軍団の最期》 4《害悪な掌握》 1《ゲトの裏切り者、カリタス》 4《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
1・2マナの軽量クリーチャーを最序盤から展開、囲いや《致命的な一押し》でそれらの攻撃を後押しして殴り抜く。シンプルながらこの戦術がパイオニア最初期では有効だった。当時の黒単のリストを振り返ると……4年以上前なので、最近見かけなくなったカードが活躍していることが面白い。特にクリーチャーの顔ぶれにそれが顕著で、《血に染まりし勇者》《屑鉄場のたかり屋》《どぶ骨》と墓地から戦場に戻る能力を持った者が多数。これは《密輸人の回転翼機》とのシナジーを見込んでのこと。回転翼機で攻撃し、その能力でカードを引いてこれらのクリーチャーを捨てる。墓地から戦場に戻れば手札を損失したことが帳消しになり、お得なドローで《思考囲い》などを引き込んで勝利を手繰り寄せるというわけである。
この頃の黒単は回転翼機ありきのデッキだった。墓地から戻る面々もそうだが、《夜市の見張り》などは完全に回転翼機に乗せるためのチョイスである。これが搭乗するだけでライフを吸い取れる、シブい役どころ。このクリーチャーが採用されているところを見てもわかる通り、回転翼機を骨の髄まで堪能したいというのが伝わってくるね。この回転翼機、あまりにも大暴れしたため、フォーマット制定から2ヶ月足らずで禁止となった(他にも色々なカードと一緒に)。
しかし禁止となってから4年の時を経て、カードも随分と増えた。回転翼機が戻ってきても以前のように一強にならない、むしろ以前活躍していたデッキ達が元気がないという状況を変えるため、昨年12月に解禁となった。解き放たれた回転翼機は先のプロツアーでも活躍していた。しかしマニアであれば「あの黒単をもう一度……」と画策するのではないだろうか。そう期待していたら…きたきた、出てきたぜ。
14《沼》 2《ロークスワイン城》 2《目玉の暴君の住処》 4《変わり谷》 1《ミレックス》 1《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 -土地(24)- 4《フェアリーの夢泥棒》 4《血に染まりし勇者》 4《大洞窟のコウモリ》 4《墓地の侵入者》 4《ヨーグモスの法務官、ギックス》 2《黙示録、シェオルドレッド》 -クリーチャー(22)- |
4《致命的な一押し》 2《無情な行動》 4《思考囲い》 4《密輸人の回転翼機》 -呪文(14)- |
3《暮影の騎士》 2《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 2《絶滅の契機》 2《絶望招来》 1《強迫》 1《真っ白》 2《減衰球》 2《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
あの頃の黒単っぽさを感じさせる、MTGアリーナ上のパイオニアの代替フォーマットであるエクスプローラーで使用されたものをご紹介。パッと見でもわかるのはクリーチャーの変化。《血に染まりし勇者》以外の面々はこの4年の間に登場した良質なクリーチャーに置き換わっている。
2マナ圏では囲いの追加枠にもなる《大洞窟のコウモリ》が。本体に戦闘はさせにくいが回転翼機に乗れれはそれだけで戦力だ。そして以前のアグロにはなかった超強力なアドバンテージ源《ヨーグモスの法務官、ギックス》!攻撃を通してギックスでドロー、引いてきた囲いで妨害……シンプルだけども最強の動きと言えるな。《黙示録、シェオルドレッド》等を添えて、回転翼機がいない間に俺たちも成長したんだぜと言わんばかりの編成だ。
このリストの激シブ枠は《フェアリーの夢泥棒》。諜報能力でドローを操作してくれて、あまり多く引きたくない土地をどかしたり、《血に染まりし勇者》を落としてカード1枚分の得を生みだしたり。サイズは小さいが飛行を持ち、そして何度も言うように本人が頼りなくてもパワーが1あれば回転翼機に乗れる。さらに回転翼機でこの夢泥棒を捨ててもちょっとした旨味が。墓地からこれを追放してドローが行えるので、最後の一押しに繋げるために積極的に捨てに行くこともあるぞ。
時代が変わっても《密輸人の回転翼機》がエースであることは変わらない。以前のような支配的な1枚ではなく、環境を定義する1枚として、《思考囲い》との組み合わせが定番になることを……マニアとしては願っているね!
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