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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ゾンビ原野コンボ:死者も土地も墓地から這い出る(タイムレス)

岩SHOW
 

 僕はゾンビが好きだ。子どものときは怖くてしょうがなかった。昔はテレビで過激な映画を放映していたもので、幼少時にたまたまある映画のワンシーンを目にしてしまう。大量のゾンビが雪崩れ込んできて、人が襲われてむごたらしい最期を遂げる。その光景があまりにも恐ろしく、一種のトラウマとなってしまった。何かあるたびにそのシーンを思い出し……そんなことを繰り返すうちに、むしろどの映画のシーンなのかと興味を持つように。作り物だということを理解できるようになった頃には、むしろゾンビという存在に一種の憧れを抱くようになった。映画でもゲームでも、ゾンビが出てくるものはとりあえずチェック。そんな人間なので、マジックとの出会いも必然だったのかもしれない。何せマジックには山ほどゾンビが出てくるのだから。

 ゾンビというものは動く死骸だけあって、のろのろとしたもので単体ではそれほど脅威ではない。マジックの世界では色んなファンタジー世界の生物たちがゾンビ化していたり、それらをつなぎ合わせて改造されたりもしているのでめちゃくちゃ巨大なゾンビもいるにはいるが……ゾンビ・トークンに見られるように2/2やそれぐらいのサイズのものが主流。それらを並べて強化する、部族デッキの要素が濃いのがゾンビの特徴だ。やっぱり数だよ、墓や商業施設から這い出して来る死者たち。ゆっくりとした歩みでも、圧倒的な数が我々を絶望させる。死者の群れこそが恐ろしく、そしてどこか魅力的なのだ。

 このゾンビをたっぷりと戦場に並べる願望を満たしてくれるカードはいくつかあるが…それらの中でも最高傑作と言えば《死者の原野》に違いない。土地を戦場に出すという簡単な行為から、ゾンビ・トークンが生成される。土地の種類を7つ以上揃える必要があるので、基本土地ばかりのデッキでは力を発揮しない。名前が異なる土地をてんこ盛りした豪華仕様でデッキを組めば、戦場を埋め尽くすほどの死者が原野より這い出して来るだろう。このカードは見た目以上に非常に強力であるため、数々のフォーマットで禁止に指定されている。土地という対処しにくいものから、延々とクリーチャーが発生することはフレイバーだけでなくゲーム的にも危険であったのだ。

 この《死者の原野》をのびのびと使って、気分良くゾンビを量産したいなら……タイムレスはどうだろう。MTGアリーナの専用フォーマットであるこの環境では、遠慮せずに原野を4枚フル投入して良い。実際にこの土地で対戦相手を圧殺するデッキも存在しているが……今回はそんな中でも変わり種、原野が生成するものがゾンビであることに大きな意味を持たせたリストを取り上げよう!

Gabster88 - 「ゾンビ原野コンボ」
タイムレス (2024年3月6日)[MO] [ARENA]
4《死者の原野
1《吹きさらしの荒野
1《寓話の小道
1《インダサのトライオーム
1《神無き祭殿
1《草むした墓
1《寺院の庭
1《薄暗い裏通り
1《地底の遺体安置所
1《草萌ゆる玄関
1《陽光昇りの小道
1《闇孔の小道
1《枝重なる小道
1《無声開拓地
1《育成泥炭地
1《砂草原の城塞
1《コイロスの洞窟
1《低木林地
1《マナの合流点
1《睡蓮の原野
1《見捨てられたぬかるみ、竹沼
1《耐え抜くもの、母聖樹
1《残響する深淵
1《ファイレクシアの塔
1《平地
1《
1《
-土地(30)-

4《縫い師への供給者
4《むら気な召使い
4《死体騎士
4《事件現場の分析者
-クリーチャー(16)-
4《思考囲い
2《豊穣な収穫
3《未練残り
3《先祖の結集
2《見事な再生
-呪文(14)-
1《夢の巣のルールス》(相棒)
-サイドボード(1)-
AetherHub より引用)

 

 戦場に7種類以上の土地を並べ、その上でさらに土地を出すことでゾンビをわらわら呼び出す……この条件は真面目にやっていれば時間がかかるのは明白。なので原野デッキは何らかの手段で土地を戦場に出してこれが働き出すターンを早める。このデッキは墓地を使うという一風変わった作戦を実行する。《縫い師への供給者》や《事件現場の分析者》で墓地を増やす。あるいは《吹きさらしの荒野》《薄暗い裏通り》など土地自身でこれを狙っても良い。そうして準備が出来たら分析者の能力、あるいは《見事な再生》で墓地の土地をすべて戦場へ。最近スタンダードでも流行っているこれらの墓地利用マナ加速をタイムレスに取り入れて、一気に原野が機能する盤面を作ろうという魂胆だ。

 この環境でクリーチャーを用いるデッキやコントロールに対しては原野デッキが効果覿面!地上のクリーチャーはひたすらブロックできるし、どれだけ除去を撃たれようが原野が無事ならエンドレスで攻め手が生えてくる。なのだが……今はコンボデッキ全盛期といったところで、風当たりはあまりよくない。

 そこでこのリストの作成者は考えたのだろう、ゾンビを戦場に出してそのままスピーディーに勝つ手段があれば良いのでは?と。クリーチャーが戦場に出ると対戦相手のライフを失わせる《死体騎士》、そしてゾンビ限定ではあるがライフを吸い取る《むら気な召使い》!これらのゾンビが並んでいるところで再生や分析者で土地を一気に戦場に出せば……ゾンビの群れにより対戦相手のライフは無残にも吹き飛ぶことになる。冒頭で述べた、幼少時に目にしてトラウマになり、後にゾンビに惹かれるきっかけとなったあの映画のワンシーンのようではないか。《縫い師への供給者》もゾンビなので噛み合っているし、これらのクリーチャーが墓地に落ちても戻す手段として《先祖の結集》も採用されている。原野デッキは数あれど、これが生成するものがゾンビであることを活かすというアプローチのデッキは珍しい。怪しい魅力がムンムンじゃないか!これはプレイしたくなるというもの、ゾンビへのトラウマを植え付けるデッキになるかもしれない。

 ゾンビが好きな人は世の中に数え切れないほどいる。それこそ各作品におけるゾンビのように。そういったゾンビマニアがタイムレスに集うとすごいことが出来そうだ。個人的に大好きな《ゾンビの横行》もあるし、皆がこの環境をゾンビ塗れにしてくれことを願っているッ!

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