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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:黒単貴重品室(モダン)

岩SHOW

 今週もやってきました、クールなデッキを賞賛し我らも続けとデッキビルディング&チューニング魂に火をつける……Cool Deckのお時間だ!今回は『カルロフ邸殺人事件』の新カードを取り入れてデッキの引き出しを増設することに成功したクール・チューニングの一例をご紹介しよう。

 デッキのやれることを増やすというのは、簡単であり難しくもある。最も簡単なのは色を足すというアプローチ。単色ではできないことも、色を足せば可能になる。また同じような呪文でも多色のものになれば自ずと強力になるというものだ。

 たとえばモダンで黒いデッキを組んでいて、対戦相手の手札・墓地・ライブラリーから特定のカードをまとめて追放するカードを使いたい場合……《記憶殺し》やその亜種が候補となる。《記憶殺し》はカード名を指定し、それに該当するものをまとめて追放する。これが赤を足せば《殺戮遊戯》にランクアップ。同じようなカードでも打ち消されないという一文が付くだけで別物だ。

 しかしカード名を指定して、という部分がいささかギャンブル要素ではある。特定のカードに依存したデッキであれば《殺戮遊戯》1枚で機能不全に、ということもあるだろう。しかしながらそのようなデッキもあるといえばあるが、大多数は何か一つを完全に失っても戦う術を持っている。メインデッキから《記憶殺し》や《殺戮遊戯》を採用すると、ハマった時には良いがそうでない場合は今一つ勝利に貢献してくれないカードとなってしまう。そもそも相手のデッキに何が入っているかわからない状況下で唱えても、大外しする可能性だってある。

 こういったカードをメインで採用するのは難しいが、コンボなど相手にメインデッキで勝てる可能性を……と考えるなら《大いなる創造者、カーン》と《石の脳》の組み合わせに行きつく。カーンはサイドボードからどんなアーティファクトでも手札に加えられる。パーマネントへの対抗策、大型クリーチャー、対戦相手のデッキとケースに合わせた1枚をサーチ…その中に《石の脳》を潜ませておけば、メインから《記憶殺し》系のカードを採用するというリスクを背負わず、それでいて特定のカードを引っこ抜きたいという欲求をスマートに叶えてくれる。こういうのがクールでスマートな構築だ。

 このカーンと脳の組み合わせはモダンでも王道となっているが、黒いデッキであればそこにプラスアルファを狙えるのでは?と、積極的に新カードを取り入れたリストが、先日のチャンピオンズカップで躍動した。

ryuji mimido - 「黒単貴重品室」
チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド2 23位 / モダン (2024年2月11日)[MO] [ARENA]
8《
4《陰謀団の貴重品室
4《廃墟の地
3《解体爆破場
3《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
-土地(22)-

4《オークの弓使い
4《カザド=ドゥームのトロール
2《黙示録、シェオルドレッド
-クリーチャー(10)-
4《致命的な一押し
1《シェオルドレッドの勅令
4《不憫な悲哀の行進
3《死人に口無し
4《思考囲い
2《コジレックの審問
1《塵へのしがみつき
2《精神石
3《一つの指輪
4《大いなる創造者、カーン
-呪文(28)-
4《虚空の力線
2《仕組まれた爆薬
1《トーモッドの墓所
1《歩行バリスタ
1《石の脳
1《罠の橋
1《忘却石
1《一つの指輪
1《ワームとぐろエンジン
1《街並みの地ならし屋
1《隔離するタイタン
-サイドボード(15)-
Melee より引用)

 

 モダンの「黒単貴重品室」だ。《陰謀団の貴重品室》をキーとしたデッキで、沼タイプを持つ土地を並べてこの貴重品室から大量のマナを生産、それを用いて対戦相手を圧倒するコントロールデッキだ。《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》で貴重品室やその他の土地に沼タイプを与えて、マナの生産量を大きく向上させる。通好みのクールでシブいデッキだ。マナを大量に用意できるので、カーンを搭載して先述の《石の脳》をはじめ、様々なアーティファクトをサーチしてきて盤石の態勢を作り上げる。堅牢な、黒鉄の城という趣。好きな人はとことんハマるやつだな。

 このデッキがメインデッキから対戦相手のカードをまとめて追放する手段を新たに手に入れた。それが……《死人に口無し》!5マナで全てのクリーチャーを破壊するソーサリー、同様の効果をもたらす《滅び》より1マナ重いが、その辺は貴重品室が機能していれば大した差ではない。そしてこの《死人に口無し》、証拠収集6を行えるとボーナスとして、対戦相手の墓地からカードを追放。さらに墓地・手札・ライブラリーから同名のものをまとめてぶっこ抜く!この方法での追放であれば、カード名を指定するギャンブルのように外すことはない。キーカードを《思考囲い》などで落とせていれば、それを引っこ抜いて勝負アリ。特定のカードに依存していないデッキであっても、破壊したクリーチャーの中から一番強く厄介なものを追放すればその後に遭遇することがなくなって安心だ。

 この証拠収集6……マナ総量合計6以上になるように墓地からカードを追放する、というのはそう簡単なことではなく見える。が、この黒単であればそれも問題なし。《カザド=ドゥームのトロール》をサイクリングしておけばそれ1枚で十分な証拠に!序盤に土地を確実におけるようにサイクリングで《》を手に入れ、その後は証拠として骨までしゃぶれる無駄のなさ。マナが溢れるようになればパワー6でブロックの困難なフィニッシャーとしてゲームを終わらせる……このトロール、本当にクールすぎる。《死人に口無し》×トロールのたまらない組み合わせ、黒単の引き出しをしっかりと増やし、コントロールとしての強さを引き上げることに成功しているクールなテクニックだ。

 色を足したり、新カードを取り入れたり……デッキのやれることを増やすには様々なアプローチがある。これが成功したリストは本当にクールな輝きを放つものとなるので、皆もレッツトライ。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Cover up all cards!!

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