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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ハルク・フラッシュ:瞬速ではなく閃光(過去のフォーマット)
「アゾリウス・フラッシュ」「エスパー・フラッシュ」などとデッキ名を表記しているのを見たことがあるんじゃないかな。アゾリウスとかエスパーは色の組み合わせを意味するものなので、それを覚えればカラーリングを示すものだとわかる。ではフラッシュとは?これはそのデッキの戦い方を意味している。
フラッシュ/Flashとはインスタントや、それと同じタイミングで動けるカードを多く採用し、極力隙を見せず、対戦相手のアクションを見てから動くことを信条としたアーキタイプのことだ。インスタント・タイミングで唱えられることを示す能力、瞬速。これの英語表記はFlashであり、つまりは瞬速デッキということ。対戦相手のターン終了ステップに瞬速を持ったクリーチャーを唱えてより安全に行動しながら戦うデッキというわけだ。打ち消し呪文を構えつつ戦う、よりテクニカルで上級者好みのアーキタイプだ。
フラッシュという言葉には語源がある。古くは『ミラージュ』のカード、《閃光》、これの英名はまさしく《Flash》。カードとしてもまんま瞬速を与えるような挙動。2マナでクリーチャーを戦場に出し、その後そのクリーチャーのマナ・コストから{2}を引いたコストを払うことで、そのクリーチャーを戦場に残すことができる。インスタント1枚を経由して実質的に瞬速を与えるというのは……現在の基準で見るとカードパワーは低いと感じてしまう。ただ当時は瞬速のような能力を持っているクリーチャーは非常に少なかった。このようなカードがあったおかげで今日の瞬速クリーチャーがいる。偉大なる始祖に敬意を……
と、ここで話は終わらない。弱いカードに思える《閃光》だが、実は使い道があった。この《閃光》、クリーチャーが戦場に出たあとに差額のマナを支払わなかったら……そのクリーチャーは生け贄に捧げられる。つまり、使い捨てながら2マナという破格のコストで、どんなクリーチャーでも戦場に出せるのである。『ミラージュ』リリースから数年の時を経て、このカードの相方が世に登場した。
《変幻の大男》。死亡するとライブラリーからマナ総量が6以下になるよう組み合わせてクリーチャーを探し、戦場に出す。大きな敵を倒しても分裂・変型してしぶとく襲ってくる、というゲームや映画でよく見るシーンを表現したクリーチャーだ。マナ総量6以下という括りだと実にさまざまなコンボを狙うことが可能で、これを戦場に出して死亡させる手段があれば……というニーズに完璧に応えるのが《閃光》!というわけなのである。
たった2マナ、カード1枚でコスト踏み倒しと生け贄役を兼ねるこのインスタントからハルク(大男)を着地させて即墓地送り。そこから各種コンボを決めて勝つ……随分と昔に猛威を振るった「ハルク・フラッシュ」!!今回は読者からのリクエストもあったので、このデッキを振り返ってみよう。
4《汚染された三角州》 3《溢れかえる岸辺》 1《Tundra》 1《Underground Sea》 1《Tropical Island》 3《島》 1《沼》 -土地(14)- 4《闇の腹心》 1《屍肉喰らい》 1《ボディ・スナッチャー》 1《霊体の先達》 1《鏡割りのキキジキ》 4《変幻の大男》 -クリーチャー(12)- |
4《金属モックス》 4《渦まく知識》 4《師範の占い独楽》 4《神秘の教示者》 4《目くらまし》 4《意志の力》 4《相殺》 1《残響する真実》 1《虐殺》 4《閃光》 -呪文(34)- |
4《虚空の力線》 3《剣を鍬に》 3《虐殺》 1《恭しき沈黙》 4《クウィリーオンのドライアド》 -サイドボード(15)- |
レガシーというフォーマットが制定されてから(おそらく)2回目の大型競技イベント、グランプリ・コロンバス2007。この大会はTOP8に「ハルク・フラッシュ」が3名入賞、優勝も上記のリストが掻っ攫う形となった。様々な勝ちパターンを狙えるハルクデッキの中でも、このリストは最も安定感があり、大きな結果を残したものである。ではどのように勝つか、そのコンボを具体的に解説しよう。
② ハルクの能力を解決、《霊体の先達》《屍肉喰らい》を戦場へ。先達の能力でハルクを墓地から戦場に戻す。
③ ハルクを《屍肉喰らい》の生け贄に捧げる。ハルクの能力で今度は《鏡割りのキキジキ》を戦場へ。
④ キキジキの能力を先達を対象にして起動。これを解決する前に《屍肉喰らい》でキキジキを生け贄に。そして先達のコピーでキキジキを墓地から戦場に戻す。戻ったキキジキで先達を……以下同じ工程を繰り返す。
⑤ 速攻を持った先達のコピーで攻撃してライフを0にする。
これが早ければ2ターン目、最速は《金属モックス》経由で1ターン目に狙えるのだから、そりゃあ強いわな。そしてこれだけのデッキながら、必要なパーツがとても少ない。デッキのスペースがたっぷり確保されており、そこに《意志の力》《目くらまし》などの打ち消しを搭載する余裕があるのが真の強みである。
この打ち消しでコンボへの妨害手段を弾くわけだが、その最たるものが《師範の占い独楽》《相殺》の組み合わせ。独楽はライブラリーを並べ替えるドロー操作で、これを使って対戦相手が唱えた呪文と同じマナ総量のカードをトップに仕込み、《相殺》の能力で打ち消すのである。この組み合わせ、レガシー黎明期の象徴だなぁ。サイド後はコンボを捨ててこの独楽相殺でロックをかけて、《クウィリーオンのドライアド》で殴り勝つという戦法も取れる。この隙のなさこそハルフラの真骨頂!
現在はこのデッキは禁止や制限で再現不可能になっている。《閃光》のテキスト自体も変遷があり、この「ハルク・フラッシュ」が使えた期間はごく限られたものであった。コンボとしてのフラッシュは瞬きする間に消え去ったが、瞬速という能力を意味する〇〇フラッシュというアーキタイプ名はマジック界に残り続けている。もしいつか《~~の大男》というカードをキーにしたフラッシュデッキが組まれたら、なんだか面白いことになるね。こういう意味のないような妄想こそ、マジックの楽しみ方だ。
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