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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ネクロ信心(タイムレス)
最強のカードとは何か?マジックに関しては、この答えは……ない。表現を変えれば、最強の1枚とはプレイヤーの数だけ存在する。全てのカードに何かしらの弱点が存在するため、頂点に君臨する1枚というものはありえない。なので、各々が思い思いの最強カードを提唱すれば良いのだ。自由である。どのカードを最強と信じても良いし、相手の意見を頭ごなしに否定する必要もない。時代や環境によってもカードの強さは変動するので、あの頃は最強だったというニュアンスで語る方がベターかもしれない。
僕が1枚挙げるとすれば……最近になって改めて《ネクロポーテンス》は人の領域を超えた最強カード候補だなと実感しているところだ。昔のネクロは初心者がテキストを読んでも今一つ強さが理解できないカードの筆頭だった。まず、ドローステップが飛ばされる。毎ターン、最初に行うカードを引くという行為がカットされるのだ。いやいやそれは無理だよゲームにならないよと、そう感じるのも無理はない。しかしその重すぎる代償に対する見返りは……ライフを1点支払えば手札が1枚手に入るという、怪しくも甘美な響き。
そんなのリスキーだ、毎ターン真面目にドローしてる方がいい!と主張する人もいるだろうが、一度ネクロをプレイするとその意見も変わるだろう……「なにこれ、ヤバすぎる」と。ライフを支払うとライブラリーのトップが追放され、それがターン終了ステップに手札に加えられる。これの起動回数に制限はなく、好きなだけ起動してOK。つまり……手札が0の状況からでも、7点ライフを支払えば一気に手札がフル補充される!もちろん7点のライフは痛いが、引いたカードで回復するなり、あるいはそれで即座に勝ってしまえばどうということはない。毎ターンガンガンとライフを支払ってぎちぎちに手札を満たし続ける、ネクロならではのゲーム体験は「これ最強」と思わせるには十分だ。
最近ネクロの強さを再認識したのは、これをプレイしプレイされる機会が激増したからだ。MTGアリーナのオリジナルフォーマット、タイムレス。あらゆるフォーマットで禁止・制限を受けているネクロが、タイムレスでは自由に使用可能。しかも盟友《暗黒の儀式》も同フォーマットに存在するため、かつて環境を黒に染め上げた「1ターン目《暗黒の儀式》からネクロ、ライフ5点くらい支払ってエンド」という黄金ムーブが復活!この動き、改めてヤバすぎる。「ライフを支払うのであればバーンで!《稲妻》などで一気に攻めれば手札が増える前に終わる!」というアプローチは理にかなっている。が、1ターン目ネクロが決まれば相手がバーンでも有利に戦えてしまうのが事実だ(もちろん引きの内容に左右されるが)。激ヤバなネクロを扱うデッキ、その中でも最高に楽しいリストがこちら!
10《沼》 4《ニクスの祭殿、ニクソス》 4《沈んだ城塞》 1《目玉の暴君の住処》 1《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1《ファイレクシアの塔》 1《廃墟の地》 -土地(22)- 4《オークの弓使い》 4《アスフォデルの灰色商人》 -クリーチャー(8)- |
4《暗黒の儀式》 1《致命的な一押し》 4《不憫な悲哀の行進》 2《食肉鉤虐殺事件》 3《ネクロポーテンス》 1《悪魔の教示者》 4《虚空の力線》 4《夢を引き裂く者、アショク》 4《大いなる創造者、カーン》 3《忌まわしき干渉者、アショク》 -呪文(30)- |
1《致命的な一押し》 1《トーモッドの墓所》 1《墓掘りの檻》 1《真髄の針》 1《液鋼の塗膜》 1《石の脳》 1《税血の刃》 1《戦慄の容貌》 1《一つの指輪》 1《王神の立像》 1《害悪の機械巨人》 1《ワームとぐろエンジン》 1《ボーラスの城塞》 1《白金の天使》 1《街並みの地ならし屋》 -サイドボード(15)- |
タイムレスの「黒単信心」。このデッキの強さ、そして楽しさはまさしく最強クラス。ネクロにより失われるライフを補填、また同時に対戦相手のライフも減らす手段として採用されているのが《アスフォデルの灰色商人》。黒の信心(パーマネントの持つ色マナシンボルの数)だけライフを吸い取る能力を持ち、信心を3も有するネクロとの相性は抜群。このアスフォデルの能力を高めるため、そしてタイムレスにおいて非常に数が多い墓地利用デッキをこらしめるため、メインから《虚空の力線》を投入!これで信心を稼ぎつつ《死儀礼のシャーマン》や《ドラゴンの怒りの媒介者》を大幅に機能不全に陥れる。
そしてその力線、ゲーム開始時から戦場に出せるため早いターンに信心を稼げることを利用して《ニクスの祭殿、ニクソス》がこのデッキのメインエンジンに。力線を複数枚出すスタートに成功すれば、早いターンに本来あり得ないマナを加えることも。《沈んだ城塞》との組み合わせが特に強力で、ニクソスの起動のための2マナをこれ1枚で用意出来る。力線2枚スタート、1ターン目城塞→2ターン目ニクソスでもう黒マナ4つ加えられる。ネクロを唱えるのも余裕だ。ネクロが出ればさらに信心が高まり凄いことに。余談だが、力線4枚という手札と初めて遭遇したので、何かの機会だとキープしたらニクソス城塞と揃って圧勝してしまったことがあった。他の土地とも相性◎の城塞、このカードはガチ。
信心で稼いだマナはアスフォデルやプレインズウォーカーの展開に繋げる。《夢を引き裂く者、アショク》はタイムレスをプレイする上での嗜みのようなカード。あらゆるデッキがライブラリーの中を探す、サーチカードを使用しているので、それらを機能不全に陥らせる。《樹木茂る山麓》のようなフェッチランドが使い物にならなくなるため、先手1ターン目儀式からアショクでゲーム終了というハメパターンもあったり。墓地追放も頼りになる、この環境を定義する1枚だ。
そして信心による大量マナと言えば《大いなる創造者、カーン》!サイドボードから強いアーティファクトを引っ張ってきて、カードパワーで圧殺しよう。《墓掘りの檻》や《税血の刃》のように相手のデッキとシチュエーションによってハマる1枚を持ってくる、シブい仕事も出来るところが最高だ。
そしてこのデッキならではのカード、《忌まわしき干渉者、アショク》。なかなかつかみどころがなく、どういうデッキで使えば良いのかわかりにくいデザインが施されているプレインズウォーカーで、そういう意味では実にアショクらしさが表現されている1枚と言える。
そんな干渉者アショク、これの常在型能力に注目。ライフを支払う代わりにライブラリーからその枚数分追放することでコストを支払えるという能力……これ、ネクロと組み合わせると1点のライフも失わずに手札を補充可能になる!ライブラリーはすごい勢いで消失していくので、起動しすぎには注意が必要だが、人類の夢であるフリーネクロは本当に気持ちが良い。[-2]能力で生成される、カードを追放しているとサイズアップするナイトメアも、ネクロの起動で簡単に条件を満たしてやることができる。さらに[-7]能力は自身が追放しているカードの枚数分だけライブラリーを追放するものなので、ネクロを全力起動して対戦相手のライブラリーを吹っ飛ばし、そのまま勝利というルートも。ここにきてネクロの新しい使い方をもたらすカードが登場したのは驚きだ。ゲーム後半、ライフがほとんどない状況で引いてしまうと使い道がないネクロが、このアショクにより一発逆転の種火となるようになったのだ。恐ろしい話だ……。
《ネクロポーテンス》、最強。異論はあるだろうが、タイムレスをやっているとこのエンチャントのヤバさがよくわかる。とりあえず《真髄の針》で起動を止めてしまうのがわかりやすい対策だが、リストをご覧になってもわかる通り、それだけで終わるようなデッキには作られていない。ネクロを止めつつ、しっかりとライフを攻める・ライフを得られないような構築を施したデッキで対抗する……あるいは、君もネクロを使う側になれば良いんじゃないか?最強カードが君を待ってるぞ。
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