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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:《陰湿な根》と《チョーク・アウトライン》の使用例(パイオニア)

岩SHOW

 今週もやってまいりました、マジックをクールさという観点から語り尽くすこのコーナー!今週のテーマは「いつだってクールなのはデッキビルダー!」。新カードが登場する度に我々をアッと驚かせる全く新しいデッキを生み出す、デッキビルダーの方々。本当に頭が上がりません!

 もちろんクールなカードをデザインしてくれる制作陣にもいつも感謝しているが、そのカードを受け取って制作サイドの思惑を超えたデッキを紡ぎ出すビルダーたちにはまた別の敬意を抱いてしまうね。そんなわけで今回はあるデッキビルダーの新作を取り上げよう。d00mwake氏が『カルロフ邸殺人事件』リリース初日に組み上げたのはこんな独創的なリストだ!

d00mwak - 「ゴルガリ・フード」
パイオニア (2024年2月7日)[MO] [ARENA]
4 《花盛りの湿地
4 《草むした墓
4 《闇孔の小道
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
1 《目玉の暴君の住処
1 《ハイドラの巣
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《ミレックス
2 《
2 《
-土地(22)-

4 《大釜の使い魔
4 《縫い師への供給者
4 《金のガチョウ
4 《ロッテスのトロール
2 《首絞め
2 《苔森の戦慄騎士
4 《楕円競走の無謀者
-クリーチャー(24)-
2 《希望の種子
4 《魔女のかまど
1 《アガサの魂の大釜
3 《陰湿な根
4 《チョーク・アウトライン
-呪文(14)-
1 《湧き出る源、ジェガンサ》(相棒)
4 《思考囲い
3 《致命的な一押し
1 《耐え抜くもの、母聖樹
2 《羅利骨灰
1 《真髄の針
2 《減衰球
1 《漁る軟泥
-サイドボード(15)-
X より引用)

 

 パイオニアの「ゴルガリ(黒緑)・フード」!食物トークンを主要なメカニズムとしたデッキであり、《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》のコンボを擁するデッキがフードと呼ばれる傾向にある。かまどで使い魔を生け贄に捧げて食物を得て、これを生け贄に捧げて使い魔を墓地から戦場に戻す。使い魔の能力で対戦相手のライフ1点を吸い取れるので、毎ターンなんの損失もなくライフをちびちびと攻めていける。対戦相手の攻撃を使い魔でブロックし、戦闘ダメージが与えられる前に生け贄に捧げ、その後戻すという動きを繰り返すことで、トランプルなどの回避能力を持たないクリーチャーの攻撃は使い魔のエンドレス・ブロックで完封。技巧で対戦相手を手玉に取るタイプの盤面掌握型デッキだ。

 フードデッキはこの使い魔かまどのシステムと組み合わせるパーマネントを用意し、毎ターン猫が戦場と墓地を出入りすることに更なる付加価値をもたらす。《パンくずの道標》で手札を増やしたり、《波乱の悪魔》でダメージを飛ばしたり……このリストにはそういったフードの定番アイテムが入っていない。そこがクール!フードに新しく加えられたスパイスは、カルロフ邸のキッチンよりやってきた!

 カルロフ邸の緑は証拠収集という能力のメインカラーの1つである。墓地からカードを追放することで何かを行う類の能力であり、そしてこのセットではこれと組み合わせなよと言わんばかりに、墓地からクリーチャーカードが離れた際に誘発する能力を持ったカードが登場。《陰湿な根》《チョーク・アウトライン》はどちらもその条件が満たされるとクリーチャー・トークンを生成するエンチャントだ。根は植物を生成し、その後すべての植物に+1/+1カウンターを置く。元は0/1の植物もこれで戦力に成長させられるし、トークンに好きなマナを加えられるようになる能力を与えるため、小粒とは言え無視することができない存在を生み出してくれる。そして《チョーク・アウトライン》はもっとシンプルに、2/2の探偵を生成する。

 これらは使いにくいカードに思えるが、使い魔×かまどのコンボと共に揃うと……猫が出入りするたびに植物と探偵も生成される。これらのエンチャントの枚数が多いほどそのトークンの数は増えるし、かまどが2枚以上並んで1ターンに2回以上猫が出入りすると……あっという間に戦場はトークンで埋め尽くされることに!なかなかクールな光景ではないか。

 そしてこの探偵と植物の増殖を加速させるため、猫以外に墓地から戦場を離れるクリーチャーとして選ばれたのが……《楕円競走の無謀者》!モダンでは「アスモフード」の重要パーツとしておなじみだが、パイオニアでは見る機会がほとんどないカードだ。この無謀者は墓地にある時にアーティファクトが戦場に出ると、手札へと戻る。つまり墓地を離れるので、カルロフ邸エンチャント2種の能力が誘発することになる。モダンのフードデッキと同じく、かまどが食物を生成することで能力が誘発して、毎ターンぐるぐると回すことが期待できる。

 肝心の手札から捨てる方法だが……これがクールすぎる!《ロッテスのトロール》!クリーチャーカードを捨てることで+1/+1カウンターを1つ得る。捨てる際にはマナは不要なので、無謀者を捨ててトロール強化→猫エンジンで食物回して無謀者戻す→探偵らトークンが生成され、ロッテスでさらに無謀者を捨てて……と、驚異的な速度で盤面が強化されていく。この勝ち方はクールすぎるぜ。トロールの追加枠として、マナ不要で手札を捨てられる《首絞め》というチョイスもたまらない。一点突破の大型クリーチャーと、トークン軍団、そして使い魔での直接ライフ攻め……この多角的でクールな攻勢から逃れるのは簡単じゃない!

 まさかのカードチョイス、これぞクールなビルダーの成せる技。職人たちの組み上げたデッキを有難く使わせてもらいつつ、細かい部分で自分にとってよりクールなデッキに仕上げていく……0からデッキを作ることができなくても、クールなビルダーから受け取ったデッキをチューニングしていく作業は各々でできるはずだ。それもマジックのデッキ構築の醍醐味である。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Don’t step on the chalk!!

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