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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

オルゾフ・ウォーロック:パイオニアの光景、80枚(パイオニア)

岩SHOW

 パイオニアの冬まであと少し。11月末に開催される「プレイヤーズコンベンション愛知2023」。そこでは様々なトーナメントやイベントが開催されるが、その中でも競技マジックとしての側面が強いのはチャンピオンズカップファイナルだ。これは各店舗で開催された予選を勝ち抜き権利を手にしたプレイヤーのみが招待される。限られた実力者が争い目指すのは、競技プレイヤー誰もが目指す場所……プロツアーだ。成績上位者にプロツアーや世界選手権への参加権利が付与されるため、世界一のプレイヤーを目指す者には避けては通れない大事なトーナメントである。新シーズンの開幕戦となるプロツアーへの参加権利、喉から手が出るほど欲しいもの……当日場内では激闘が行われることになる!

 今回のファイナルのフォーマットはパイオニア。スタンダードよりも広いカードプールを用いて、一体どのようなデッキが組まれ持ち込まれるか?トーナメント自体は『イクサラン:失われし洞窟』の発売より一週間後。まだまだ新カードの評価は定まらないタイミングだが、権利を持つプレイヤー達は今からパイオニアの練習を日々欠かさずに行っていることだろう。スタンダード程は新セットの影響が少ないと予想されるパイオニア、今から主要デッキへの理解を深めておくことは勝つために必要なことだからね。

 パイオニアならではの要素として、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒としたデッキがあげられる。マジックの構築フォーマットはメインデッキの総枚数を60枚以上にするというルールが設けられている。デッキに採用出来るのは基本土地以外同名カードは4枚まで。そのため可能な限り60枚ちょうどに抑えた方がキーカードを引ける確率が高まるので、勝利に近いデッキとなる。ヨーリオンはこのマジックの根本原理に真っ向から挑むカードとして、初出時にはプレイヤーらに衝撃を与えたものだ。

 60枚のデッキを構築する、これが60枚デッキとどれほど異なる体験をもたらすか。その答えは……構築次第では何ら問題なし!同じような役割のカードでデッキを水増しすれば、50枚デッキとさほど変わらないゲームをプレイすることが可能になる。特定のカードを手札に加えるサーチの類があればなおよし、だ。今回紹介するのは独特な構築が施されたパイオニアのヨーリオンデッキだ。とくとご覧あれ!

totemsilence - 「オルゾフ・ウォーロック」
Magic Online Pioneer Challenge 優勝 / パイオニア (2023年10月30日)[MO] [ARENA]
4 《神無き祭殿
4 《コイロスの洞窟
4 《秘密の中庭
4 《乱脈な気孔
4 《陽光昇りの小道
1 《皇国の地、永岩城
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
4 《廃墟の地
1 《平地
7 《
-土地(35)-

2 《スレイベンの検査官
1 《僧院の導師
1 《黙示録、シェオルドレッド
-クリーチャー(4)-
4 《思考囲い
2 《パワー・ワード・キル
1 《ケイヤの怒り
3 《危難の道
3 《シェオルドレッドの勅令
1 《一巻の終わり
2 《神聖なる月光
4 《ポータブル・ホール
3 《消失の詩句
2 《忘却の儀式
4 《鏡に願いを
4 《ウォーロック・クラス
2 《精神迷わせの秘本
4 《裏切る恵み
1 《悪魔の契約
1 《大天使エルズペス
-呪文(41)-
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》(相棒)
1 《赦免のアルコン
1 《絶滅の契機
1 《減衰球
2 《強迫
3 《配分の領事、カンバール
2 《傑士の神、レーデイン
4 《安らかなる眠り
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 ヨーリオンの白に加えて黒を採用した、2色のコントロールデッキだ。どちらもマジック黎明期より、パーマネントを除去することに長けた色だ。クリーチャーやプレインズウォーカーの生命を奪う黒、そしてアーティファクトやエンチャントも対処する白があわされば、対戦相手の戦場からパーマネントを根絶やしにすることだって可能だ。《ポータブル・ホール》や《消失の詩句》など追放する類の除去も豊富なので、墓地のパーマネントを再利用できるデッキや破壊不能のパーマネントにも安心。対戦相手が思い描いたゲーム展開を一切させない、良い根性をしたこれぞボード(盤面)コントロールのお手本のようなリストだ。

 デッキリスト掲載サイトではこのリストは「オルゾフ(白黒)・ウォーロック・コントロール」というアーキタイプに分類されていた。ウォーロック?邪術師のことか?と重いデッキリストを見ると、そうではなくて《ウォーロック・クラス》のことだった。このクラス、良いカードだよなぁ。レベル1の誘発型能力は、コントローラーに関係なくリーチャーが死亡していればターン終了時にライフを失わせるもの。コントロールとして生存するためのクリーチャー除去が対戦相手のライフを削っていくフィニッシュ手段として機能する。レベル2になると手札を補充し、レベル3は対戦相手のライフ喪失が倍になる大技だ。ここまで狙う必要に染まられるゲームもそう多くはないが、《黙示録、シェオルドレッド》によるドローへのペナルティが倍になれば、一瞬でゲームが終わりそうでワクワクする。

 この《ウォーロック・クラス》は戦場を離れるとまたレベル1からやり直しとなる。ヨーリオンにより追放することで、これをメリットに転換できる。レベル2にして手札にカードを加えた後、追放して戻ってきたものをもう一度レベル2に上げればカード1枚分お得!こんな具合に、仕事を果たしたエンチャントやアーティファクトをさらに何かに用いるという、骨の髄までしゃぶりつくすのがこのデッキの哲学だ。

 《忘却の儀式》の生け贄に捧げるというのもわかりやすく強力な動き。ウォーロックのレベル3はオマケみたいなものなので無理に狙わず、躊躇わずに対戦相手の強力なパーマネントと交換して盤面をクリーンに保とう。《鏡に願いを》は冒頭でも触れたヨーリオンデッキを円滑に動かすための要素、サーチ呪文。これの協約としてウォーロックを捧げるのは理にかなっている。レベル2を終えたクラスを生け贄に、4マナ以下の呪文をライブラリーから追放してそのまま唱えよう。《黙示録、シェオルドレッド》《僧院の導師》に《ケイヤの怒り》にと、1枚挿しのカードを上手く引っ張ってきて支配を確立せよ。

 ウォーロック以外に生け贄にする候補としては、《ポータブル・ホール》や《スレイベンの検査官》《僧院の導師》のトークンなど。そして《裏切る恵み》!3マナで3枚ドローという強力なアドバンテージ源であるが、以降は呪文を唱えるたびにライフが失われるというデメリット付き。さっさと生け贄で処理することで、美味しい部分だけを享受しよう。そういう意味では《悪魔の契約》も4つの能力のうち「あなたはゲームに敗北する」以外を解決してからご退場いただけたら、これほど気分の良いゲーム展開もそうそうない。これらのエンチャントもヨーリオンで出し直しすることがビッグアクションになることを忘れずに。

 パイオニアの名物的な存在であるヨーリオンを活用した80枚デッキ、色々噛み合った素晴らしい構成に拍手!こういった独自性の高いデッキを見たいなら……チャンピオンズカップファイナルのフィーチャーマッチが生放送で配信される予定なので、要チェック!会場に来る皆は生で、その肉眼で見届けよう!

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