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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
赤単&グルール・ピクニック:獣の探索を遂行せよ(スタンダード)
『エルドレインの王権』は2019年10月に発売された。もう4年経ったわけで、『エルドレインの森』が発表された時には「もう2回目?」と思ったが……再訪するのに丁度良いころ合いだったのではないかな。王権は当時のスタンダードのみならず、様々なフォーマットにも影響を及ぼすパワーカードが大量に詰め込まれていた。四方八方めちゃ強カードで固められており、あの頃のスタンはエキサイティングだったね……。
当時の緑を代表する1枚だったのは《探索する獣》。今でもパイオニアなどで選択肢にあがる、攻めるデッキにとって頼もしいクリーチャーだ。4マナ4/4速攻・警戒・接死とこれだけでも十分に強いのに、さらにプレインズウォーカーの忠誠度を削る能力、そしてパワー2以下のクリーチャーにブロックされない回避能力、そしてクリーチャーが与える戦闘ダメージは軽減されない……テキストにびっしりと並んだ能力・能力・能力!今見ても信じがたいものだ……色褪せぬ名カードである。
《探索する獣》は伝説のクリーチャー。エルドレインという次元において、ただの獣ではなくかなり高位の存在として描かれている。3つの首はそれぞれ笑い・怒り・厳かな表情を浮かべている。生前にエルドレインの5つの王国を1つに統べていた崇王・ケンリスは、この獣から与えられた“至高の探索”というものをクリアしたことでその地位に就くことができたという。元ネタはアーサー王伝説に出てくる唸る獣/Questing Beastという名の怪物で、これは探索する獣と同じ英名を持つ。アーサー王ではQuestが古語の持つ「猟犬が獲物を見て唸り声をあげる」という意味で訳されているが、マジックの世界ではQuestを現代における探索という意味でとらえて、人々に探索の任を与えるものとして扱われている。なかなか面白いルーツを持った1枚なんだな。
『エルドレインの森』では《探索するドルイド》が登場。3つの首をあしらった杖を手にしたこのドルイドはまさしく獣から探索の任務を与えられた者、あるいは獣との遭遇を求める者なのである。熱くなる設定を持ったこの1枚、出来事モード《獣の探索》は自身のターン終了時までと短い使用期限ながら、ライブラリーの上2枚を追放してそれをプレイできるというアドバンテージをもたらす。赤のこの手のカードは他の「カードをX枚引く」という能力に比べてカードの使用可能なタイミングが限られるため、長期的なアドバンテージは得られないが爆発力が高いものとなっており「衝動的ドロー」というグループに分類されている。衝動的ドローの中でもこの探索はインスタントであるため、対戦相手のターンに唱えて続く自身のターンに捲れたカードをプレイするという動きが可能だ。
また出来事で唱えた後は追放し、ドルイドとして唱えることで最大でカード1枚がカード3枚分の働きをすることに。アドバンテージ稼ぎまくり!そしてドルイド本人は緑以外の色の呪文を唱えれば能力が誘発、カウンターを乗っけるタイプの強化を得る。最初は貧弱な1/1ながら、2回以上誘発させればマナ効率は良くなる。どこまでも育てて攻防両方で活躍させたいものだ。
この《探索する獣》の名を受け継ぐドルイドを使って、一体どんなスタンダードのデッキが組めるか?それこそがプレイヤーである我々に与えられた探索だ。
4 《銅線の地溝》 4 《カープルーザンの森》 2 《ミシュラの鋳造所》 2 《反逆のるつぼ、霜剣山》 11 《山》 -土地(23)- 4 《僧院の速槍》 2 《フェニックスの雛》 4 《魅力的な悪漢》 4 《探索するドルイド》 1 《ロノムの発掘家、フェルドン》 3 《擬態する歓楽者、ゴドリック》 3 《怪しげな統治者、スクイー》 -クリーチャー(21)- |
2 《火遊び》 4 《稲妻の一撃》 3 《魔女跡追いの激情》 3 《巨怪の怒り》 4 《熊野と渇苛斬の対峙》 -呪文(16)- |
3 《ウラブラスクの溶鉱炉》 2 《焦熱の交渉人、ヤヤ》 3 《絞殺》 3 《石術の連射》 2 《歪んだ忠義》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《削剥》 -サイドボード(15)- |
まず一つ目のサンプルは赤単withドルイド!赤単色のアグロデッキ、スタンダードの定番中のド定番だが、これにほぼドルイドのためだけに緑を足すという構築だ。《銅線の地溝》《カープルーザンの森》と優秀な赤&緑の2色土地があるために成立する構成である。赤単は真っすぐに対戦相手に向かって突撃していく姿勢のカードばかりを採用しており、そのおかげで爆発力は高いのだが、ちょっとでもゲームが長引いた途端に雲行きが怪しくなるデッキである。《火遊び》《稲妻の一撃》に見られるようにダメージを与える手段は豊富だが、使い捨てであったり小粒のクリーチャーでは後半攻め切れなかったりといった具合に。
この弱点をカバーするために色をタッチ(チョイ足しという意味)する構築は昔から試みられてきたこと。《探索するドルイド》はまさしくこの悩みを解決し得るおあつらえ向きの1枚!手数で攻める赤単とガッチリ噛み合う。《獣の探索》から軽いカードを捲って連打、それにより《僧院の速槍》の打点も上昇!ゲームが折り返しになってから、この栄養補給は赤単のスタミナを少しばかり持続させてくれる。赤単の苦手とするマナフラッド(土地を固め引いてしまってマナの使い道がない状況)においても救世主になるかもしれない、夢が見れる出来事だ。ドルイドも赤い軽量呪文でラッシュをかけている中でムクムクと大きくなり、面と点で攻める二つの軸をデッキにもたらす!
この赤単タッチドルイドにおいて《巨怪の怒り》はかなり重要。育ちに育ったドルイドを《婚礼の発表》などから出てくるちっぽけなトークンでブロックするだけでしのがれては、つまらないだろう?ドルイドに怪物という役割を与えてやることで、トランプルで貫通させて問答無用にダメージを与える!これぞ獣からドルイドに課せられた探索だ。獣を追い求め、求道者は自身が怪物となる!
この《巨怪な怒り》×ドルイドの一撃を強烈な武器として備えたデッキには他にもパターンがあるので、そちらのリストも紹介しよう!
4 《銅線の地溝》 4 《落石の谷間》 4 《カープルーザンの森》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《ミレックス》 4 《山》 2 《森》 -土地(21)- 4 《僧院の速槍》 4 《ピクニック荒らし》 3 《探索するドルイド》 3 《忠実な護衛、ハジャール》 1 《勇敢な追跡者、ルビー》 3 《迷宮壊し、ミグロズ》 3 《擬態する歓楽者、ゴドリック》 -クリーチャー(21)- |
2 《火遊び》 2 《絞殺》 2 《魔女跡追いの激情》 4 《無鉄砲》 3 《巨怪の怒り》 1 《長所食い》 4 《熊野と渇苛斬の対峙》 -呪文(18)- |
4 《茨橋の追跡者》 2 《焦熱の交渉人、ヤヤ》 3 《石術の連射》 1 《絞殺》 2 《魔女跡追いの激情》 2 《強情なベイロス》 1 《辺境地の罠外し》 -サイドボード(15)- |
こちらは赤単ではなくガッツリ緑も採用されている2色のアグロ。「グルール(赤緑)アグロ」と分類しても良いが……味気ないので、キーカードから「グルール・ピクニック」と呼ばせていただこう。《ピクニック荒らし》!名前からして絶対に遭遇したくないヤツでしかないが、ゲームにおいては見た目以上に強い、かなりイカしたゴブリンだ。2マナ2/2と標準的なサイズだが、攻撃時にパワー4以上のクリーチャーをコントロールしていると二段攻撃を得る。一気に大ダメージを弾き出すために、《迷宮壊し、ミグロズ》のようなナチュラルでパワー4のクリーチャーを出しても良いし、《巨怪の怒り》や《無鉄砲》のようなカードでこの《ピクニック荒らし》自身をパワー4にしても良い。
高打点の攻撃によるライフを詰めていく、ちょっとコンボチックなアグレッシブ極まるデッキに《探索するドルイド》を採用することで、対戦相手のスキを突いた不意打ちを狙ったり、全体除去などを受けてからのリカバリーを狙うという寸法だ。なんだかよくわからないカードの塊、みたいな印象を受けるかもしれないが、一度プレイしてみるとこの戦術が理にかなっていることがよくわかる。もたついた多色の遅いデッキなどを相手にした時に、二段攻撃やドルイドのトランプルで一瞬でライフをもぎ取るムーブ、一度は決めてみてほしいね。
《探索するドルイド》を用いた2種類のスタンダードのアグロ。共通するのはやり込みが勝敗に直結するタイプであるということ。どのタイミングで出来事で唱えるか?あるいはそもそも出来事を捨ててクリーチャーとして出した方が良い結果に繋がるか?などの勝負勘、嗅覚というものはゲームを重ねてこそ身につく、赤単を既に持っている人なら比較的組みやすいと思うので、デッキに新たな刺激が欲しいのであれば、獣の啓示を受けて探索の旅に出よう。
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