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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:クール過多警報発令、貴重品室スペシャル(モダン)
今週もクールを最大の価値観と定義して、クールなデッキを分析してそのクールさに浸る、心地の良い金曜日がやって来た。さあCool Deckを始めよう!クールと一口に括っているが、そこに含まれるものは多種多様。今日のクールは……マジックの色について。
マジックには皆さんもご存知の通り、5つの色がある。これに加えて無色という概念もあるが、とりあえず置いといて……これらの5つの色にはそれぞれに得意・不得意がある。デッキを組むときにはそれぞれのセールスポイントからどれを評価するか?何をクールに感じるかによって色を選択することになる。打ち消しで相手の動きを捌くのがクール?だったら青だ。燃えるような速攻戦術でライフを詰めたい?それなら赤しかあるまい、といった具合に。そして時に一色では収まらずに色を足す、多色デッキを組むこともある。マジックにはそういった多色デッキで使う専用のカードと、単色デッキでこそ機能するカードというものが用意されている。
多色デッキ用のカードというとこれはもうわかりやすい。カードのマナコストに複数種類の色マナが含まれている。そのマナの数によって「これは赤緑2色で使え」「これは白青黒3色で使え」という直球のメッセージが伝わってくる。《神の乱》なんか5色デッキで使うしかないし、これは単色か多色かどっちを推奨してるんだ?と迷う要素はないよね。
これに対して単色デッキ用のカードというものは少々わかりにくいかな。マナコストや能力の起動に含まれている色マナシンボル、これが多ければ多いほど、多色のデッキでは唱えにくくなる。そういうカードは単色推奨でデザインされているとみて問題ない。いかに多色土地が優れたラインナップであるといっても《ファイレクシアの立証者》を3色デッキで唱える、とかは難易度が高すぎるよな。逆にほとんど《平地》で構成された白単色のデッキであれば何の問題もなく4ターンにポッと唱えられる。こういった特定の色マナだったり、あるいは基本土地タイプを要求するカードは、単色デッキで用いるのが無理のない運用だ。
ただ、そういうセオリーに反発してくるデッキデザイナーらこそクールと言えるのかもしれない。「単色デッキ推奨?だからこそ多色デッキで使ってやるよ!」そういう反骨の精神がマジックの新境地を切り開く。たとえば《陰謀団の貴重品室》。このカードは自身のコントロールしている沼タイプの土地の数を参照し、その数だけの黒マナを加えてくれる。こんなの完全に黒単で《沼》を並べて使うしかないというデザインだ。この土地も世界のクールなデザイナーの手にかかれば多色デッキに組み込まれるのだから、マジックというゲームの懐の深さはクールすぎるのである。今日の主役は多色の貴重品室デッキだ!
4 《汚染された三角州》 1 《ザンダーの居室》 2 《湿った墓》 4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《陰謀団の貴重品室》 2 《宝石の洞窟》 1 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 1 《水辺の学舎、水面院》 1 《アカデミーの廃墟》 2 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《島》 1 《沼》 -土地(26)- 4 《オークの弓使い》 -クリーチャー(4)- |
4 《致命的な一押し》 2 《シェオルドレッドの勅令》 4 《呪文貫き》 4 《探検の地図》 2 《塵へのしがみつき》 4 《不敬な教示者》 1 《忘却石》 2 《エレヒの石》 3 《一つの指輪》 4 《大いなる創造者、カーン》 -呪文(30)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》(相棒) 3 《霊気の疾風》 3 《物語の終わり》 2 《広がりゆく海》 1 《街並みの地ならし屋》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《液鋼の塗膜》 1 《精神隷属器》 1 《隔離するタイタン》 1 《一つの指輪》 -サイドボード(15)- |
フォーマットはモダンだ。元々このフォーマットの範疇になかった貴重品室だが、『モダンホライゾン2』に収録される形で参入してきた。これも当時クールだったなぁ初出の『トーメント』で出会った頃、この土地をひたすらに使っていた身としては、思い出の1枚が現役で戦えるフォーマットが増えたのは朗報以外の何物でもない。こういうサプライズをくれるマジック、マジでクール。
さて話はデッキリストに戻って。モダンであれば《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》が使える。これにより全ての土地が沼のタイプを得るので、貴重品室から大量の黒マナ供給が狙える。貴重品室自体は沼ではないという弱点もカバーできて素晴らしい。以前はこの組み合わせをレガシーで試そうとしていたものだが、《不毛の大地》に対して脆すぎるのがきつかった思い出しかないので……アーボーグと貴重品室、この2枚の竹馬の友がモダンで再会したのはそれだけでグッとくるものがある。
このリストは黒単色をベースに青を足した貴重品室デッキだ。《湿った墓》に《ザンダーの居室》と、元々沼である多色土地を備えつつ、青い特殊な仕事を担う土地を採用したマナベースは異形とも言える。大量のマナの注ぎ先にもなる《ストーム・ジャイアントの聖堂》、これと貴重品室が同じデッキリストで名を連ねているなんて……クールとしか表現できないだろこれ。それから《アカデミーの廃墟》、アーティファクトを再利用できる超強力な能力を持ちつつも、色マナを供給できないという無視できない弱点を抱えている伝説の土地。沼にしてやれば随分と使い勝手も向上することだろう。
貴重品室から溢れ出る黒マナを使って、さあどんな黒が濃い呪文を唱えるんだというところだが……その使い道は以外にも黒ではなく、無色。《一つの指輪》で一気にドローしたり、《大いなる創造者、カーン》からアーティファクトを引っ張ってきたり……これ、やってることは実質「トロン」とか「緑単信心」のようなデッキと同じだな。“ウルザの”土地3種類をそろえて大量の無色マナを得るトロンに、緑マナシンボルが濃いパーマネントを並べて《ニクスの祭殿、ニクソス》から緑マナを供給する信心、これらと別のベクトルでアーボーグと貴重品室の組み合わせからカーンなどの無色パワーカードを用いる、そういう新しい派閥の誕生ってことだな。
カーンから持ってくるアーティファクト、《液鋼の塗膜》や《街並みの地ならし屋》はお約束として、《隔離するタイタン》がまた最近使われているのもクールだと感じるんだよな。《力線の束縛》を用いるデッキが増えたことで対象に取れる土地は多いし、なんだったらアーボーグで対戦相手の土地にも沼タイプを与えているので強引に叩き割りにいけるのがイカすぜ。
そして《精神隷属器》!これも懐かしの1枚だ。対戦相手のコントロールを得るという強烈な能力、これを上述の《アカデミーの廃墟》で回収しては投げつけるのを繰り返すことで、対戦相手はもうゲームに勝てなくなってしまう。この邪悪っぷり、Cooool!!
このデッキに青を足しているのは隷属器×アカデミーコンボを狙うのが主目的であるが、メインデッキでは唯一の青いカード《呪文貫き》を用いるためというのもある。非クリーチャー呪文に{2}の追加コストを要求する打ち消し、1マナで構えられて使いやすいインスタントで、対戦相手の《思考囲い》などによる序盤のプラン崩壊・デッキバレを防止し、各種コンボにも睨みを利かせ、そしてこちらの大振りの動きに飛んでくる《対抗呪文》等の打ち消しの迎撃……痒い所に手が届くこの1枚のため、強い意志を持って青を足した英断。逆に他にあれこれと青いカードを採用したくなるのをグッとこらえて、あくまでメインは黒単に近い形に抑えた調整のクールさには思わず拍手が出てしまう。
そんなスマートなメインデッキを見た後にサイドボードに目を通して気付いたよ、おいおいこのデッキ、《湧き出る源、ジェガンサ》が相棒なんかい!もう何でもありだ。確かに勝つためのカードは無色で、そこに至るまでの時間を稼ぐ黒と青のカードも色マナシンボルは1つのものばかり。ジェガンサは《汚染された三角州》から持ってきた《ザンダーの居室》から加える赤マナで唱える。まずこういうデッキにジェガンサを相棒にする発想が出てこないので、そのクールな脳細胞にはひれ伏すしかない……対戦開始時に「相棒いてます~」とジェガンサ見せられて、まさかアーボーグ×貴重品室デッキが目の前に座ってるなんて夢にも思わんよなぁ。
まだまだクールなカードチョイスが随所にみられて語り尽くせないデッキだが、誌面の都合でここらで。いやぁクールの供給過多って感じではあるが、こういうものを拝むと……自分でもすげーデッキを組みたくなるってもんだね。さあ皆も各々の貴重品室からカードを引っ張り出して、今夜は徹夜だ。
それじゃあ今週はここまで。Stay cool!! Open your coffers!!
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