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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:ヘリオッド・カンパニー 無限の命、限りある命(モダン)
特別企画、Wild Deckと番外編が続いたので、久しぶりになるね。マジックのデッキを“クール”を主題に語る、今週のCool Deck!
○○で優勝した、今環境で最も勝率と使用率が高い、などなどガチガチな情報も大事である。同時に、デッキからクールさを感じるか?これも同じくらい大事なことだと思うね。カッコいい、楽しい、憧れる……強さだけを探求するのではなく、自分の思い通りのデッキを組めるのがマジックの素晴らしいところ。それを伝えるために今週もクールなデッキ、取り上げちゃうぜ。
モダンで開催された「プロツアー・指輪物語」は観戦してもらえたかな?このトーナメントを目の当たりにして、皆にはどのような感情が起こっただろうか?非常に広大なカードプールで構成されるモダン。同トーナメントでは「緑単トロン」がマナの暴力で他を圧倒したり、その暴力性を奪った「ラクドス・ミッドレンジ」が3ターン目に掟破りの《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を叩きつけたりと、やりたい放題。これ見てモダンのデッキに求められている質というか、デッキパワーはかなり高いと感じてしまった人もいるんじゃないかな。
強すぎるデッキが目立つのもインパクトがあってそれもそれで面白いのだが、個人的にモダンの魅力ってのは「こんなデッキも組めるんだ!」というマッチごとにバリエーション豊かなカードが飛び交う光景にあると考えている。それこそがモダンのクールさだ。なので、プロツアーの結果はどうであれ、店舗主催だったりオンライン上だったりのモダンの大会では、ガチガチなデッキ以外にクールな顔ぶれを目にすることができる。これが……良いんですよ。モダンのデッキバリエーションの豊富さ、カードを知っていることで選択肢が増える奥深さ。たとえば最近目にする機会が減少していた、こんなデッキから感じることができるのではないかな……。
4 《吹きさらしの荒野》 3 《霧深い雨林》 1 《樹木茂る山麓》 4 《寺院の庭》 4 《地平線の梢》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 2 《冠雪の森》 1 《冠雪の平地》 -土地(20)- 4 《東屋のエルフ》 2 《ルーンの与え手》 4 《オーリオックのチャンピオン》 4 《議事会の導師》 4 《太陽冠のヘリオッド》 4 《スパイクの飼育係》 4 《イーオスのレインジャー長》 2 《人の子の女王、アルウェン》 2 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(30)- |
4 《楽園の拡散》 4 《集合した中隊》 2 《カイラの再建》 -呪文(10)- |
2 《流刑への道》 1 《巨人落とし》 2 《活性の力》 1 《機能不全ダニ》 2 《減衰球》 2 《一つの指輪》 2 《忍耐》 1 《塔の長官、ボロミア》 1 《呪文滑り》 1 《虚空の杯》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
懐かしの「ヘリオッド・カンパニー」!一時期モダン環境で隆盛を誇ったコンボデッキだ。デッキの主役はその名の通りテーロス次元の太陽神であるヘリオッド。
《太陽冠のヘリオッド》は条件を満たさなければクリーチャーでなくなってしまう、テーロスの神々に共通する能力を備えている。それらを戦力として運用するには盤面づくりに気を配らなければならないが……このヘリオッドはちょっとした例外。テーロスの最高神を名乗るだけあって、彼はクリーチャー化しなくても十分に強いエンチャントとして運用できるのだ。
ヘリオッドが戦場に居る時にライフを得ることに成功すると能力が誘発し、クリーチャーに+1/+1カウンターを置くことができる。ライフを打点に変換することで、相手によっては恩恵の少ないライフを得るというアクションが勝利に繋がるものになる。さらにヘリオッドの起動型能力でクリーチャーに絆魂がつけられるので、クリーチャーで殴って回復してサイズアップ、というサイクルを繰り返して対戦相手のライフ差がどんどんと開いていくことになる。
このヘリオッドと2枚コンボになるのが《歩行バリスタ》だ。このバリスタに絆魂を与え、カウンターを取り除いて1点ダメージを与える→ヘリオッドが誘発してカウンターを補充……と無限ライフ&無限ライフがお手軽に決められる!このコンボはパイオニアでは危険すぎるため、禁じられてしまったレベルの強さ。このクールさを味わうならぜひモダンで。というわけでライフを得て勝つ「ヘリオッド・カンパニー」、もっと細かく見ていこう!
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:コンボのためのクールスタッフ
それではコンボパーツをおさらいしよう。まず必須は《太陽冠のヘリオッド》。そして最も簡単なルートである《歩行バリスタ》。この2枚でもコンボは決まるのだが、バリスタに絆魂をつける手間を省いて無限ライフを得る方法がある。
《スパイクの飼育係》は+1/+1カウンターを取り除くことで2点のライフを得ることができる。ライフを得る→ヘリオッドでカウンター補充→無限!……Cool‼イージーだぜ。この2枚が揃うだけでとりあえずはライフで負けることはなくなるので(向こうが無限コンボをやってきても簡単に無限ライフで応じられる)、その時点でバーンデッキなどは投了するだろう。
無限ダメージの元である《歩行バリスタ》、これを手に入れるには《イーオスのレインジャー長》を使おう。唱えていない時のマナ総量は0なので、問題なく手札に加えられる。同時にこれを生け贄にすると対戦相手が非クリーチャー呪文を唱えられなくなるので、除去を気にせず安全にコンボを始動できる。
また1マナのクリーチャーもサーチできることを活かして《ルーンの与え手》を持ってきて、より安全に動くこともできるぞ。クリーチャーで攻撃して勝つというパターンにもこれらのスタッフは大いに貢献してくれる。クールなやつらだ。
さらにこのレインジャー長を含めてコンボパーツをすべて戦場に出せるサーチ手段が《集合した中隊》、そして《カイラの再建》だ。中隊はモダンでも歴史ある1枚でお馴染みではあるが、現スタンダードのカードでもある再建もかなり強力だ。これらの呪文やバリスタに絆魂を与えるなど、なんやかんやでマナを食うデッキなので……。
マナ加速は必須。《東屋のエルフ》はクールなチョイスだね。《楽園の拡散》との組み合わせはマジでマナが爆発するお手軽エンジン!これでたっぷりとマナを捻出して、モダンの他のデッキとも速度勝負が可能ッ!
クールポイントその2:不死を手放し、人としての最後を
このリストに採用されていることで初めて目にしたカードは《人の子の女王、アルウェン》。アートがビューティフル極まるこのキャラクター、指輪物語の作中でも屈指の美貌の持ち主だそうだ。2700年以上の悠久の時を生きている、エルフである彼女。人間のアラゴルンの愛する人であるという。人の子というのは英語表記ではMortal Queen。定命ってことになるのかな。指輪物語のエルフは不死の運命にあるらしいのだが、彼女は自らそれを捨てて愛するアラゴルンのように人として死を迎えることを選んだという……そのエピソードが表現されているカード名なのだろう。クールかつ泣ける話だ。不死を捨てたアルウェン、定命の者を何とも思わぬ神のヘリオッド……味わい深い共演だな。
アルウェンの能力も彼女の一生を上手く再現している。破壊不能カウンターを伴って戦場へ出る姿はまさしく不死そのもの。このカウンターを自ら捨て去ることで他のクリーチャーに一時的に破壊不能を与える。これでスパイクやバリスタを救ってあげたいところだね。また、これを起動すると今度は+1/+1カウンターと絆魂カウンターもばら撒かれることに。ヘリオッドよりも起動コストが軽いため、これでバリスタを無敵の無限砲台に……儚いエピソードと裏腹にロボットアニメのノリになってしまうが、それもまたマジックのクールな側面ってことでね。いや~まさか「ヘリオッド・カンパニー」がこのタイミングで密かに新戦力を得ていたとは、知らなかったなぁ。
クールなまとめ
プロツアーではこのようなコンボを目にする機会はなかった。競技マジックの最前線ではなかなか難しいところもあるのかもしれないが、使われていないデッキ=存在しないデッキというわけではない。モダンには万を超える大量のカードが息づき、君のデッキに採用されるのを待っている。もう見なくなったデッキ、それは終わりを迎えたのではなく、むしろこれからもひっそりと輝き続けるのである。皆の手で様々なデッキを表舞台に引き出してもらえたら、デッキマニアとしてこれ以上クールなことはない。
それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Hail mortal queen!!
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