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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

多色だけがモダンじゃない!硬派な黒単デッキ2選(モダン)

岩SHOW

 前回でも触れたが、モダンはマジで土地が強い。ここ20年間のマジックの集大成、多色土地に困ることはまずない。ありとあらゆるセットの2色以上を加えられる土地の中から、デッキのベクトルに噛み合ったものをチョイス。そりゃあマジックは運の要素もあるので、どんなマナ基盤を作っても事故ってしまうことはあるけども、それはしょうがない。そこまで割り切れるほどの優秀な土地構成により、4色5色のデッキが平然と機能している。

 では、単色デッキという選択肢はないのか?否、決してそんなことはない。むしろ単色は単色で、多色デッキでは使いにくいに種類の土地の強さを引き出せるというものだ。今回はプロツアー・指輪物語にて使用された黒単デッキをフィーチャー!

Tamás Glied - 「Mono-Black Grief」
プロツアー・指輪物語 / モダン (2023年7月28~30日)[MO] [ARENA]
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
2 《解体爆破場
11 《
1 《汚染された三角州
4 《廃墟の地
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
1 《ロークスワイン城
1 《血染めのぬかるみ
-土地(22)-

4 《黙示録、シェオルドレッド
4 《悲嘆
4 《オークの弓使い
4 《ダウスィーの虚空歩き
-クリーチャー(16)-
2 《血の署名
4 《思考囲い
2 《シェオルドレッドの勅令
4 《致命的な一押し
2 《不憫な悲哀の行進
4 《マラキールの再誕
4 《一つの指輪
-呪文(22)-
3 《戦慄の朗詠者、トーラック
2 《血の長の渇き
1 《不憫な悲哀の行進
1 《漸増爆弾
1 《金線の酒杯
2 《虚空の杯
4 《虚空の力線
1 《解体爆破場
-サイドボード(15)-

回転

 まずは「黒単悲嘆」なるアーキタイプから。今トーナメントにはこのデッキの使用者が2名。一体どういうデッキかというと……プロツアー優勝デッキである「ラクドス想起」デッキから赤を抜いた、というのが的確な表現になる。《激情》と《悲嘆》、2種類のインカーネーションを想起で唱え、生け贄となる前にそれらに《フェイン・デス》のようなインスタントを唱えて、墓地から即時復活させて能力おかわり+低コストで打点の高いクリーチャーを用意し攻撃していく。攻撃的かつコントロール力の高いコンボから……赤を抜いて《悲嘆》+《マラキールの再誕》の組み合わせのみに絞っている。赤を減らしても同デッキの精神性、手札破壊とクリーチャー除去を軸とした妨害+攻めに優れたクリーチャーという構成は保てる。そういった判断から組まれた引き算のデッキだ。

 1ターン目《悲嘆》で手札を2枚すっぱ抜きつつ、パワー4の威迫という動き。苦にしないデッキなどというものはこの世に存在しない!さらに《ダウスィーの虚空歩き》、こちらもマラキールの対象としてからその能力を起動することで、追放された呪文を唱えるアクションを2回使いまわせるというとてつもないムーブも可能となっている。ラクドスでの活躍が印象的なダウスィー、もちろん黒単でも強いぜ。

 さて、黒単色で組むことのメリットは何か。いくらか多色化することが簡単な環境とは言え、《汚染された三角州》や《血の墓所》などの土地ばかりで構成していると土地を戦場に出すという行動を続けるだけでライフが奪われてしまう。こういった問題点を緩和し、ライフをより高い値で保っていられる。これは単色ならではのメリット。

 そして無色マナしか加えられない土地を複数枚搭載してもデッキの運用に不安が少ないというのも単色デッキのセールスポイント。このリストにはメインサイドと合わせて計7枚の《廃墟の地》と《解体爆破場》が採用されている。これらの無色土地はほぼ同じ挙動を見せるので同カードとして扱って問題ないだろう。対戦相手の基本でない土地を破壊できる!これにより対戦相手は代わりとなる基本土地を得ることになる。多くのデッキはそれでまあなんとかなったりするが……《ウルザの塔》《ウルザの鉱山》《ウルザの魔力炉》の3種類を揃えたいトロンデッキにとっては、基本土地との強制交換は鬱陶しいことこの上ない。

 また、プロツアーでは対戦相手のデッキリストを確認してからゲームを行えるので、相手のデッキに基本土地がほとんど採用されていないのを確認してからこれで破壊し、代わりの土地を与えない一方的なマナ基盤の崩壊を狙いに行くことも可能だ。土地を潰すという点ではラクドスにも《血染めの月》があるが、それよりも安定して運用できる土地という形で仕掛けていけるのはこの「黒単悲嘆」のセールスポイントだな。

Giona Cai - 「Mono-Black Coffers」
プロツアー・指輪物語 / モダン (2023年7月28~30日)[MO] [ARENA]
4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
4 《解体爆破場
10 《
4 《廃墟の地
4 《陰謀団の貴重品室
-土地(26)-

1 《街並みの地ならし屋
3 《黙示録、シェオルドレッド
3 《オークの弓使い
-クリーチャー(7)-
4 《大いなる創造者、カーン
1 《絶望招来
1 《滅び
2 《夜の囁き
3 《血の長の渇き
2 《不敬な教示者
4 《不憫な悲哀の行進
3 《致命的な一押し
3 《一つの指輪
4 《大祖始の遺産
-呪文(27)-
1 《街並みの地ならし屋
1 《隔離するタイタン
1 《ワームとぐろエンジン
1 《ファイレクシアの変形者
1 《歩行バリスタ
4 《思考囲い
1 《一つの指輪
1 《液鋼の塗膜
1 《石の脳
1 《金線の酒杯
1 《漸増爆弾
1 《虚空の杯
-サイドボード(15)-

 こちらは同プロツアーでの黒単デッキのもう一つのバリエーション。英語では「Mono-Black Coffers」と分類されている。Coffersとは《陰謀団の貴重品室》のこと。沼の数だけマナを出すこの土地、「黒単貴重品室」というアーキタイプ名はそりゃあそうだろ!としかツッコめないので(笑)、個人的には「貴重品室ビッグマナ」とかそういう風に呼びたいね。

 単色デッキにして基本土地の少ない相手をハメるための《廃墟の地》《解体爆破場》をたっぷり採用しているのは先のリストと同じだが、この土地構成で貴重品室からたっぷりとマナを得るために《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を組み合わせる。これで緊張品質自身も沼タイプを得るので、かなりの効率でマナを供給するエンジンを用できる。

 このリストもクリーチャーやプレインズウォーカーに対する除去をメインとしたコントロールデッキである。大量供給された黒マナは《滅び》や《絶望招来》などの大振りの除去に注ぎ込むもよし、あるいはフィニッシャーを……即ち《大いなる創造者、カーン》とそこから繋がる大型アーティファクトを唱えるのに使ってもよし。《街並みの地ならし屋》はバキバキと盤面を掃除しつつライフを減らす打点も併せ持っている頼もしいヤツ。

 そして今のモダン、《隔離するタイタン》が強い時代がまた到来している!《創造の座、オムナス》《力線の束縛》などを用いる多色デッキが多数存在するからこそ、このタイタンでそれらのマナ基盤をメッキメキに粉砕してやればよいのだ。さらにアーボーグで対戦相手の土地も沼になっているため、どんな相手でもこれで割る土地があるのは忘れちゃいけないポイントだ。

 《廃墟の地》《解体爆破場》などの無色土地、そして沼で固めたデッキで火を噴く《陰謀団の貴重品室》。これら単色デッキの友を用いること、これもまたモダンの醍醐味なのである。多色デッキよりも単色が良い、そんな硬派な面々はぜひともモダンの黒単、極めてみてほしい。他にもまだまだモダンの黒単のアーキタイプは存在するので、また機会があれば紹介させていただこう。

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