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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
アゾリウス・ロータス:30年続く睡蓮の夢(パイオニア)
マジック生誕から30年が今まさに経過しようとしている。1993年8月5日、カードを集めてデッキを作り、それを用いて対戦する……新しいゲーム体験をもたらすマジック:ザ・ギャザリング最初のセット、リミテッド・エディションの『アルファ版』が発売開始となった。最初の印刷分である『アルファ版』は当初100万枚のカードを6か月かけて販売する方針だったという。ふたを開けてみればこれらの在庫は一週間で売り切れてしまう。ゲーマー界隈にトレーディングカードゲームというジャンルが瞬く間に浸透し、そこからマジックの30年の躍進が今日まで続く……と。リミテッド・エディションのカードが魅力的であったからこその30年なのだろう。爆発的人気を集めた同セットの中でも、やはり一番人気は《Black Lotus》。
{0}のアーティファクトにして3マナ加えられる、ぶっちぎりの超強力マナ加速。その強さもさることながら、イラストの魅力もまた格別。最強のアーティファクトが睡蓮というセンスもたまらんね。様々な記念品においてもシンボルとして描かれる睡蓮のマーク。全てはこの黒き蓮から始まった。以後、30年の歴史において様々な蓮関係のカードが作られた。いずれも《Black Lotus》とのつながりを感じさせるもので、しかしながら問答無用でマナを加える本家よりはマイルドに、様々なデメリットの下でマナを得られるカードとしてリメイクが為されている。
近年の蓮系カードの中でも、珠玉の出来は《睡蓮の原野》。薄暗がりの中、一面に並ぶ睡蓮の花が紫に染まっており、美しさと共にどこか不気味さ・奇妙さも感じるイラストがいかにもマジックらしくて良い。この土地は呪禁を持っており、《廃墟の地》などの対象にならない。そしてタップすれば任意の色マナを3つ加えるという、まさしくロータス土地!……と、話はそう簡単にはいかない。戦場に出る際にはタップ状態であり、さらに戦場に出ると土地2つの生け贄を要求する能力が誘発!これが痛い。1・2ターン目などに誤って戦場に出してしまうと、この原野自身を生け贄に捧げることになって何も得られない。
真面目に運用するなら、3ターン目以降に戦場に出して土地1枚から3マナ得られることに喜ぶという形になるが……ここで真面目とわざわざ表記したということは、即ち不真面目に運用する方法もある。ちょっとしたズル、それもテクニックの内。
3 《スパーラの本部》 4 《神聖なる泉》 4 《連門の小道》 4 《睡蓮の原野》 3 《演劇の舞台》 1 《アーデンベイル城》 1 《ヴァントレス城》 1 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 1 《皇国の地、永岩城》 1 《天上都市、大田原》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《平地》 2 《島》 -土地(27)- 4 《厳しい試験官》 1 《夢さらい》 -クリーチャー(5)- |
3 《検閲》 1 《冥途灯りの行進》 3 《ドゥームスカール》 3 《告別》 1 《オンドゥの転置》 4 《記憶の氾濫》 2 《サメ台風》 4 《不連続性》 3 《放浪皇》 4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 -呪文(28)- |
4 《ドビンの拒否権》 2 《霊気の疾風》 2 《ナーセットの逆転》 1 《思考のひずみ》 1 《冥途灯りの行進》 2 《失われし者のランタン》 2 《龍王ドロモカ》 1 《伝承の収集者、タミヨウ》 -サイドボード(15)- |
というわけでパイオニアの「アゾリウス(白青)ロータス」を紹介しよう。このデッキは低速、長期戦を見据えてコントロールデッキだ。原野のもたらすマナ加速により《告別》《サメ台風》などの重いが効果の大きい呪文を運用することを狙っている。これらの呪文は原野に頼らずとも唱えられるものではあるが、5・6マナの呪文を唱えつつ相手のターンにもインスタントなどを、というような2回以上の行動となると難しい。原野はそんなワガママとも言えるコントロールの望みをかなえてくれる夢のエンジンになれるのだ。
では原野のデメリットを克服するためのカードを紹介しよう。まずは《厳しい試験官》。パーマネントが戦場に出ることで誘発する能力に睨みを利かせる、妨害能力の持ち主だ。能力を解決するためには{2}を要求するのだが、これはコントローラー自身の能力に対しても働く。そのため試験官がいる状況で原野を出せば、土地を生け贄に捧げる能力を解決するためにマナの要求が起こる。これを無視することで、原野の能力は打ち消され……つまりはノー生け贄でフィニッシュ!厳しいどころか身内には激甘な試験官に感謝。
試験官のように能力を踏み倒す、なかったことにするというのが原野の使い方としてスマートである。ならば《不連続性》は最もスマートな1枚と言えるだろう。自身のターンに唱えるのであればたったの2マナで済むこのインスタント。原野を手札から出し、能力が誘発したところでこれを唱えると……ターンが終わる。解決されていない能力などはすべてなかったことになるので、原野による生け贄も発生しない。こうやってデメリットをうやむやにしつつ、本来のコストが払える体制になったら対戦相手のアップキープに唱えてターンを終わらせる!こちらが攻勢に出る体制が整った時や、あるいはどうしようもなく緊急事態でその場しのぎに唱えるなど、いずれにせよ対戦相手にとってはたまったものじゃない強制ターン終了によってゲームの流れをこちらに引き寄せよう。試験官もそうだが、ただのコンボパーツじゃなくて妨害も兼ねているってのが無駄がなくて偉いよね。
パイオニアで原野と言えば《演劇の舞台》とのコンボデッキも知られている。このリストでもこの土地を用いて、原野をコピーするというテクが盛り込まれている。これなら素直に土地を生け贄にして出すことを選んでも、お釣りがくるというものだ。そうやって複数枚並んだ原野&舞台を《ドミナリアの英雄、テフェリー》の能力でアンタップすると……自身のターンで6マナ以上、対戦相手のターンでも6マナ以上と驚異的な両のマナを用いることだってイージーなのだ。
これだけの量のマナが捻出できるので、デッキ内のカードチョイスもそれと噛み合うものが集まっている。クリーチャー除去の枠には《告別》と共に《ドゥームスカール》!5マナで唱えても良いし、予顕しておいて後から唱えるなら3マナとコストダウン。ちょうど原野1枚で払えるのがスマートだ。手札を補充するアドバンテージ源にはテフェリーの他に《記憶の氾濫》。4マナで唱えても十分に強いが、フラッシュバックによって7マナで唱えるとライブラリーの上から7枚見てそのうち2枚が手札に加えられる。これだけ掘り下げれば何かしら有効なカードは見つかるというもの。きっちり髄までしゃぶって、このカード1枚を手札4枚分へと変換して対戦相手の心を折ろう!
ゆるやかに有利になっていくのがコントロールの醍醐味だが、このデッキはあるターン突然使えるマナが一気に増えるのが独特で、プレイしていて癖になってくる気持ちよさ。攻守きり帰のタイミングも早く、コントロールに不慣れだという人にも原野を取り巻くコンボでマナを増やす快感があるのでとっつきやすいものだと思うね。30年前、《Black Lotus》が飛び交っていた遥か遠い日に思いを馳せつつ、最新のロータスデッキをプレイする。現在と過去を繋げるゲーム、それがマジックだ。
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