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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

プロツアーデッキおさらい!5色ランプ(スタンダード)

岩SHOW

 やあやあ、これを書いているのは5月8日の月曜日。つまり……日本の伝統であるゴールデンウイークが明けた日、ってことだな。眠い……眠くてたまらねぇ。いや、この眠さは連休をだらだら過ごしてた反動ってわけじゃないんだ。日本が大型連休真っただ中だったタイミングで、アメリカのミネアポリスではマジックの特大イベント「Magic Con」が開催されていた。同会場での最大のイベントである、2023年より復活したプロツアーの第2弾「プロツアー・機械兵団の進軍」。今プロツアーは世界中にリアルタイムで中継され、日本でも現地の映像を観ながら実況解説を行う生放送がTwitchおよびYouTubeで配信されている。

 ありがたいことにこの実況に招かれて、何年ぶりになるかな?プロツアーの試合を皆様にお届けするお手伝いをさせていただいた。アメリカってのもあって昼夜が完全に逆転した生活が続いたので、日が昇っている時間がもう眠くってしょうがないが……後悔はない、どころか最高にエキサイティングな体験が出来て、幸せをかみしめているぜ。何せプロツアーのフィーチャーマッチはどれも本当に面白かった。世界中の予選を勝ち抜いてきたプレイヤーたちによるハイレベルな攻防からは、競技プレイヤーを目指している人なら学べるものが山ほどあるはず。アーカイブでも観られるので、未視聴の方は是非。

 個人的に特にエキサイトしたのは……2日目の最後、予選ラウンド最終戦となる16回戦。プロツアー連覇を狙うリード・デュークと、カナダの予選を勝ち抜きこのトップ8がかかった試合までたどり着いたデイヴィッド・オルセンが……文字通り“ぶつかり合った”激闘。これは今のスタンダードのパワフルさを象徴した、見応え抜群の怪獣の激突だった。《偉大なる統一者、アトラクサ》や《多元宇宙の突破》《絶望招来》などの高コストの呪文が飛び交った末に……最後に立っていたのはオルセンだった。彼が使用した「5色ランプ」、この印象的なデッキを今回は紹介させていただこう!

デイヴィッド・オルセン - 「5色ランプ」
プロツアー・機械兵団の進軍 / スタンダード (2023年5月5~7日)[MO] [ARENA]
1 《耐え抜くもの、母聖樹
2 《
3 《平地
1 《
4 《スパーラの本部
4 《ジアトラの試練場
1 《
4 《
4 《ジェトミアの庭
2 《ミレックス
-土地(26)-

2 《原初の征服者、エターリ
4 《偉大なる統一者、アトラクサ
4 《怒りの大天使
4 《装飾庭園を踏み歩くもの
-クリーチャー(14)-
4 《ゼンディカーへの侵攻
4 《群れの渡り
2 《太陽降下
2 《勢団の銀行破り
4 《力線の束縛
4 《骨化
-呪文(20)-
4 《ティラナックス・レックス
2 《大群退治
1 《太陽降下
4 《石術の連射
2 《未認可霊柩車
1 《一時的封鎖
1 《ミレックス
-サイドボード(15)-

 そもそもランプとは?その語源には諸説あるが今回はそこは置いといて。緑に見られるライブラリーから土地を探してきて戦場に出すタイプのものを中心に、クリーチャーやアーティファクトなどのマナ加速を用いて、本来そのターンには唱えられない高コストの呪文を唱えることで優位に立つデッキの総称だ。

回転

 現スタンダードにおけるランプ要素といえば《装飾庭園を踏み歩くもの》。3ターン目に唱えれば次のターンに5マナ使えるようにジャンプアップ。そして新たに加わったのが《ゼンディカーへの侵攻》!今プロツアーのタイトルでもある『機械兵団の進軍』からの新カードだ。かつてランプのお供であった《爆発的植生》と同様に4マナで土地2枚をサーチ。4ターン目にこれを唱えたなら次の5ターン目には7マナの呪文が狙える。重い呪文を唱えることが信条のランプに噛み合っているだけでなく、《装飾庭園を踏み歩くもの》との相性が抜群。

 3ターン目踏み歩くもので土地が計4枚。次のターンに手札から土地を出しつつ《ゼンディカーへの侵攻》で2枚サーチ、これで土地が計7枚。これによって踏み歩くものの戦闘に参加できる条件が満たされ、そのままスムーズに《ゼンディカーへの侵攻》に向かって攻撃、ダメージを与えることに成功すれば《覚醒したスカイクレイブ》まで追加して、対戦相手とのマナの格差は圧倒的に開いてしまうというわけだ。まさしく溢れんばかりのマナ、これだけあれば何でもできるぜ。

 緑を中心とした5色デッキであり、何よりも重要なのは土地。土地が置けないターンが来るとデッキがまともに呼吸できずに機能停止してしまうレベルだ。土地は26枚と取られているが、それでも詰まることがあり得る。そんな時に《群れの渡り》を手札から捨てて基本土地を探してくる能力は命を繋ぐ蜘蛛の糸。3点のライフ回復も、序盤に攻められると脆いランプの弱点を埋めてくれる。土地がしっかり並んだ終盤ではこれを唱えてビーストをドカッと並べてフィニッシュも狙えると、隙のない1枚だ。

 この《群れの渡り》および《力線の束縛》と版図能力を持ったカードを備え、緑を供給しつつ複数の土地タイプを持つ《ジェトミアの庭》などの土地を用いてこれらの効果を高める。このため版図の英名から「ドメイン・ランプ」「5色ドメイン」などと表記することも見られる。低コストで盤面を捌ける力線に土地サーチの渡り、これらはスタンダードにおけるランプになくてはならない貴重な戦力だ。

 このリストの細やかさとして2枚採用された《ミレックス》は見逃せない。アンタップ状態で戦場に出せる土地でありつつ、出したターンのみではあるが5色どれでも供給できる。この器用さが5色デッキには有難い。タップ状態で出る土地が多い中、どんなターンであってもアンタップで出せてそのターンに必要なマナを得られる、この土地も置くターンが非常に重要。大きなアクションを起こしつつ、この《ミレックス》から白マナを得て《力線の束縛》、みたいな動きをしっかりと決めることが勝利の秘訣だ。

回転

 さて、本題とも言えるマナを伸ばした先のゴール。これは言うまでもなく《偉大なる統一者、アトラクサ》だ。サイズにキーワード能力、戦力としても素晴らしくまた手札を一気に補充する。プロツアーでもリアニメイト(墓地から戦場に戻す)デッキが用いているのが印象的だったが、このデッキでは4色の7マナというコストも平然と払えるので素出しで運用するという大物っぷりを見せつける。同じく7マナの《原初の征服者、エターリ》も大逆転を演出する能力を持ち、フィーチャーマッチにおいては《原初の病、エターリ》に変身して一撃必殺という大怪獣愛好家にはたまらない勝ちっぷりも披露してくれた。

 これら2大巨塔よりはサイズで劣るものの、《怒りの大天使》もまた非常に重要なカードで4枚採用されている。実質的にキッカー込みの6マナで運用し、これの与えるダメージでクリーチャーやプレインズウォーカーなどを除去しつつ4点回復する動きがランプにおいては痒い所に手が届きまくり!必殺技に繋げる前の下準備としての仕事をこなしてくれるだろう。

回転

 5色デッキと言えば、やはり思い浮かぶのは《アラーラへの侵攻》。これを搭載したランプもプロツアーにしっかりと参戦していたので、そちらのリストも併せて紹介させていただこう。

デリック・デイヴィス - 「5色コントロール」
プロツアー・機械兵団の進軍 / スタンダード (2023年5月5~7日)[MO] [ARENA]
2 《ラフィーンの塔
4 《ジアトラの試練場
2 《ザンダーの居室
3 《スパーラの本部
2 《ジェトミアの庭
1 《
1 《憑依された峰
2 《ラノワールの荒原
1 《
1 《日没の道
1 《
1 《平地
1 《
2 《砕かれた聖域
2 《草茂る農地
-土地(26)-

2 《偉大なる統一者、アトラクサ
3 《墓所の冒涜者
1 《怒りの大天使
3 《伝染病のヴォラック
-クリーチャー(9)-
4 《力線の束縛
4 《鏡割りの寓話
4 《群れの渡り
4 《アラーラへの侵攻
3 《底への引き込み
3 《喉首狙い
3 《勢団の銀行破り
-呪文(25)-
1 《怒りの大天使
1 《黙示録、シェオルドレッド
1 《底への引き込み
4 《強迫
1 《石術の連射
2 《軽蔑的な一撃
2 《切り崩し
3 《未認可霊柩車
-サイドボード(15)-

 《装飾庭園を踏み歩くもの》《ゼンディカーへの侵攻》といった土地を伸ばすカードは不採用で、どちらかというと5色コントロールと表現した方が正しいリストだ。使えるマナを増やす要素はなくとも、《群れの渡り》や《伝染病のヴォラック》で土地を獲得するシステムを用意して5色という腕白なデッキのマナ基盤を成立させている。

 このデッキの特徴的な1枚となると、やはり《墓所の冒涜者》。墓地追放とクリーチャー除去を同時に行う能力持ちであるが、これはモード選択によってはパーマネントの上からカウンターを取り除くこともできる。つまりこれで《アラーラへの侵攻》の守備値を削ろうというのが狙いなわけだな。守備値が7と非常に高いこの包囲戦を活用するためのなんともシブいチョイスだ。《大渦の目覚め》へと辿り着き、大きなアドバンテージを獲得するべし!

 また全体除去(クリーチャー2体以上に対する除去)の枠には《底への引き込み》をチョイスしているのも《アラーラへの侵攻》との噛み合いを意識してのもの。この侵攻が戦場に出た際にはライブラリーから公開された4マナ以下のカードを1枚手札に加え、もう1枚はそのままマナを支払わずに唱えられる。何が公開されるかはランダムではあるが、大ピンチの状況をこのバトルからの全体除去でリセットできれば、あとはヘビー級のカードパワーで攻勢に転じよう。

 多色で高コスト、即ちカードパワーの高いもので形成されたランプデッキ。力でねじ伏せるデッキを求めるのであれば、このデッキを手にすることをオススメしよう。《力線の束縛》《群れの渡り》がある限りこのアーキタイプを探求するプレイヤーは尽きないことだろう。ある意味スタンダードのオールスターデッキともいえる5色のランプ、君も理想のリストを作ってみよう!

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