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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

シミック腐敗僧:毒が引き出す隠れた実力、カードの真価(スタンダード)

岩SHOW

 いざ開幕!スタンダード新環境!『ファイレクシア:完全なる統一』の参入で劇的に変わることが予想されたスタンダード……待ってましたと言わんばかりにデッキ構築にのめり込んでいるプレイヤーもいっぱいいることだろうね。喜ばしいったらないぜ。

 やっぱりスタンダードはあらゆるカードに可能性があって、5色全てに魅力とセールスポイントがあり、様々な色の組み合わせのデッキが驚きや感動を与えてくれる……そういうのが理想形だと考えている。ファイレクシアがもたらす新戦力はもちろんのこと、新しいカードの参入が既存のあまりスポットライトを浴びていなかったカードに輝きをもたらすというのもまた、新環境がやってくるたびに願ってしまう展開だ。

 はてさて、MTGアリーナでリリース開始と同時にスタンダードのランク戦に潜ってみたが……既存のデッキともよく当たるが、野心的な構築にも遭遇しておぉ、と新鮮な感覚を味わわせてくれて実に楽しい。様々なデッキとマッチングする中で、リリース直後によく見かけるデッキというのもあった。著名なプレイヤーの配信などで完成度の高いデッキリストが爆速で拡散するこの時代。お手本のリストを手にしてスタートダッシュを切ろうと狙うプレイヤーたちの心をつかんだのは、こんなデッキ。

MtgMalone - 「シミック腐敗僧」
スタンダード (2023年2月4日)[MO] [ARENA]
4 《ヤヴィマヤの沿岸
2 《スパーラの本部
7 《
7 《
-土地(20)-

4 《敬慕される腐敗僧
3 《嵐追いのドレイク
4 《陽気な呪文盗み、アイヴィー
-クリーチャー(11)-
4 《下支え
4 《タイヴァーの抵抗
2 《有貌体の向上
3 《タミヨウの保管
3 《渦巻く霧の行進
4 《芽吹く生命の行進
2 《カエル声の写し身
3 《終焉よ来たれ
4 《歪められた好奇心
-呪文(29)-

-サイドボード(0)-
AetherHub より引用)

 

 シミックと呼ばれる緑と青の組み合わせ、この時点で超新鮮!前環境のスタンダードでは目にする機会が稀だったカラーリングが、『ファイレクシア:完全なる統一』シーズンのスタンダード最初期には最多勢力かと言わんばかりの大繁殖!この時点でスタンダードの新しい日々がやってきたのだなと、楽しくなってくるものだ。

 このデッキの主役は《敬慕される腐敗僧》。毒性1を持ち、自身の攻撃により対戦相手に毒カウンターを与える1マナクリーチャー……そして、攻撃だけでなく間接的な手段でも毒を載せる、かなりのテクニシャンである。

 自身のクリーチャーが呪文の対象になるのがその引き金であり、この誘発型能力は対戦相手の除去呪文でも良いし自身の唱えたものでも構わないという範囲の広さが魅力的だ。腐敗僧自身でも他のクリーチャーでも良いという許容範囲の広さも強みで、このリストはそれを活かして勝利をもぎ取ろうとしている。自身のクリーチャーを対象に呪文を連打し、対戦相手を毒に沈める!恐るべき戦術を見ていこう。

 腐敗僧で緑は確定として、青が採用されているのはなぜか。その理由はクリーチャーにある。《嵐追いのドレイク》、そして《陽気な呪文盗み、アイヴィー》!

 どちらも2マナで飛行持ちという共通点があるが、それぞれに別の個性で腐敗僧の毒殺プランを押し進めてくれる。

 《嵐追いのドレイク》はこれが自身の唱えた呪文の対象になるたびに、1ドローを提供してくれる。少し前のスタンダードでもこれにオーラを貼り付けて、手札の消費を抑えて強化するという戦術を用いるデッキを見かけることがあったね。ドレイクは手札を減らさず毒は増やすという、一方的なマイルールで対戦相手を毒塗れに誘う。

 《陽気な呪文盗み、アイヴィー》は通好みのカードであったが、腐敗僧の登場で大きく評価が上昇した1枚になった。アイヴィー以外のクリーチャーを対象に呪文を唱えたら、それをアイヴィーに対してもコピーすることができる。1枚の呪文でクリーチャー2体分の対象を取り、即ち腐敗僧もてんてこ舞いの大忙しだ。これらの青いクリーチャー陣が腐敗を蔓延させる恐怖の青緑デッキを成立させた!

 上記のクリーチャーらを対象にする呪文は、それらを強化するものでありかつ守るものである。緑や青が得意とする、クリーチャーに呪禁や破壊不能などを与えるインスタントたちを主に用いるということだね。腐敗僧はじめとするこのデッキのクリーチャーは「このクリーチャーを対象に呪文を唱えてワルいことしますよ!」と言わんばかりの見た目で、対戦相手も真っ先にこれを除去しようと策を講じてくる。これに対抗するために《下支え》や《タミヨウの保管》を用いる。このラインナップに新たに加わった《タイヴァーの抵抗》もしっかりと用いたい。

 これは単に除去避けというだけでなく、余ったマナを注ぎ込むことでダメージにもつながる。毒殺だけでなく、アイヴィーでコピーすることで大ダメージを叩き込んで勝つというビートダウンとしての正統派な動きもできるのを忘れずに。ただのコンボデッキってわけじゃないのがこのデッキの強いところ。《有貌体の向上》からの不意な毒付与もあったり、状況に応じてベストな立ち回りを選択していくのはプレイしていて楽しいと思えるものだろう。

 先にも触れたように新カードが既存カードの強さを引き出すというのはスタンダードの醍醐味だ。《渦巻く霧の行進》は青いテクニカルなデッキで目にする機会もあったりしたが、《芽吹く生命の行進》などは僕自身はお目にかかったことが一度もないようなレアな存在。


※日本語版の《芽吹く生命の行進》には誤訳がございます。詳細はこちら


 これらの行進呪文はどちらも自身のクリーチャーを対象とするもの。1枚で複数体を対象にしつつ《告別》のような全体除去も回避してしまえる《渦巻く霧の行進》、そして腐敗僧を増やすことで毒の回り具合を倍速にする《芽吹く生命の行進》!デッキに入れたことがないカードが急にデッキのキーパーツとして躍り出てくるのは何とも嬉しいこと。それで言うと《カエル声の写し身》もこれまた腐敗僧の水増し要員として非常に面白い1枚に化けたもんだね。

 フラッシュバックも相まって、盤面を捌かれた後に立て直しつつ一気に勝利をかすめ取る必殺の1枚になること間違いなし!

 新カード《敬慕される腐敗僧》がもたらした攻撃しなくても毒で勝てるデッキ。この新ジャンルを支えるのは、スタンダードで活躍の時を待ち続けていたカード達というのが個人的にはグッとくるね。回った時には対戦相手が一生懸命攻める準備を整えている間に、一瞬で毒10個を与えて瞬殺してしまえるスピード自慢。

 このコンボ的なビートダウンデッキ、《ふくれた汚染者》を採用してより戦闘に特化したもの、《戦闘研究》でドロー力を高めたものなどなど、プレイヤー間では細部の調整が異なるのも面白い。

 腐敗僧とシナジー(相互作用)を織り成すカードのチョイスはストリーマーなどのリストから見習いつつ、どんな形が自分にしっくりくるか、君自身の手で自分に合ったものをチューニングしてみよう!

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