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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
「エディクト」デ除去セヨ!黒単コントロールと、ある俗称の歴史(レガシー)
『ファイレクシア:完全なる統一』の新カードは確認したかな?このセットは邪悪な新ファイレクシアとそれに対抗するミラディン人はじめとする抵抗戦力とがカード化され、パッと見の印象は……低コストのカードが強そうだなというところ。これを書いている時点ではまだ全カードが公開されていないのだが、マナ総量が現実的で扱いやすく、かつ強そうなカードが目立つなと。中でもSNS上で多く見られたコメントが「エディクト強い!」「新エディクト優秀すぎない?」などなど、世界的にも“エディクト”への期待が高まっているようだ。それと同時に一つ思ったことが。
「……というかエディクトって何?」
そう思っている初心者の方も同時にいたのかな、とね。エディクトとは英単語「Edict」のこと。これが意味するのは政府や支配者、宗教的組織からの「布告・政令・法令」といったもの。マジックとしては主に「布告」として翻訳されカード名に用いられている。特に歴史があり広く知られたのは《悪魔の布告》。
対戦相手にクリーチャーの生け贄を要求する、変則的なクリーチャー除去だ。クリーチャー自身を対象に取らないので呪禁やプロテクションなどの除去耐性を無視し、破壊ではないので再生や破壊不能でもあらがえない非常に優秀な除去だ。2マナのインスタントというのもあって『テンペスト』でリリースされてから、長きにわたって黒いデッキのクリーチャー対策として愛用され続けたものだ。
名カードであるエディクトはその後、同じ様な処理を行うリメイクが量産された。《チェイナーの布告》などは青春の1枚として心に深く刻まれているプレイヤーも少なくないのでは。それらのリメイクには必ずしも布告/Edictという名が用いられることはなかったが、それでもプレイヤーは修正でそれらを「○○エディクト」「エディクト系」と呼んだ。その系譜の最新モデル《シェオルドレッドの勅令》。
これは2マナインスタントと初代エディクトと同スペックであり、生け贄に捧げさせる除去というところは共通。ただ3つのモードを持っており、トークンでないクリーチャー、クリーチャー・トークン、プレインズウォーカーの3つからいずれかを選んで、全ての対戦相手に生け贄に捧げさせるというもの。クリーチャーを用いないプレインズウォーカーデッキ相手にも効果があり無駄になりにくく、エディクト系の弱点だった大型クリーチャーの横にトークンを置かれることで非常に効果が薄くなるという弱点も回避できる可能性がある。むちゃくちゃ便利な除去になっており、この新エディクトにはそりゃあ期待しちゃうってなもんだよ。
今回はこの新エディクトが採用されるかもしれない、エディクト主体デッキを紹介しよう。フォーマットはレガシー、膨大なカードプールから選ばれしエディクトが揃ったアンチクリーチャーデッキがこの「黒単コントロール」だ。
8 《冠雪の沼》 4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《ウルザの物語》 4 《ミシュラの工廠》 4 《不毛の大地》 1 《ロークスワイン城》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 -土地(26)- 1 《呪詛の寄生虫》 4 《ダウスィーの虚空歩き》 -クリーチャー(5)- |
4 《暗黒の儀式》 4 《思考囲い》 2 《トーラックへの賛歌》 4 《突然の布告》 4 《小悪疫》 1 《両替機》 1 《真髄の針》 1 《呪われた巻物》 1 《影槍》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《世界のるつぼ》 1 《The Abyss》 4 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(29)- |
4 《虚空の力線》 4 《Helm of Obedience》 3 《疫病を仕組むもの》 2 《Dystopia》 1 《弱者の石》 1 《罠の橋》 -サイドボード(15)- |
このリストはよくよく見ればエディクトの集大成のようなものだ。《突然の布告》はその名の通りエディクトの系譜であり、刹那を持っているので打ち消しなどで対処不可能というのが強み。
《小悪疫》もクリーチャーの生け贄を要求するのでエディクトの亜種とも言えなくもない。《悪疫》をリメイクしてより使いやすくしたこのソーサリーも、生け贄という対策しにくい形で対戦相手からクリーチャーを奪うと同時に、手札や土地やライフもまとめて削るいやらしいものだ。自分にも同じ被害がふりかかるが、自身はほとんどクリーチャーをデッキに採用しないことで相手よりも失うカードを1枚減らすという形で差をつけられる。捨てた手札や生け贄とした土地は《両替機》《世界のるつぼ》で損害を取り戻せるので問題なし。
そしてエディクトの親玉とも言える《ヴェールのリリアナ》。[-2]能力はまんまエディクトで、これを繰り返し用いて対戦相手の攻め手を疲弊させる。[-6]能力はスーパーエディクトとでも形容しようか、パーマネントを複数枚生け贄に捧げさせることで戦場の差を圧倒的なものにしてしまう。こんな感じでこのデッキはエディクトを集結させた、対クリーチャーへのガードを高く上げた典型的なボード(盤面)コントロールだ。
さて、この硬派極まる黒単色のコントロールに最新のエディクト《シェオルドレッドの勅令》は採用されるのか?興味深いところだね。マジックにおいては“完全上位互換”のようなものは少なく、どのカードにもそれが輝くシチュエーション、それだったからこそ切り抜けられるケースというものがあると信じている。
このリストに勅令を採用するのであれば、同じ枠を争うことになるのは《突然の布告》だろう。《突然の布告》の打ち消されなさ、青くてかつクリーチャーをキーにしたデッキに対処できることを重視するか?《シェオルドレッドの勅令》の効果範囲の広さ、狙った獲物をより確実に生け贄にさせられる点を評価するか?その辺はデッキを持ち込むフィールド……店舗大会だったりオンライントーナメントだったり、あるいは身内での対戦会だったりで変化するもの。
戦う相手のデッキを読み、的確なエディクトを採用して勝利を手繰り寄せよ、というのがシェオルドレッドからの布告の全容かな。とりあえず、迷った時には《突然の布告》2:《シェオルドレッドの勅令》2みたいなバランスからお試ししてみても良いかもね!
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