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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:トレードウィンド・サバイバル~友情が込められたイラスト~(過去のフォーマット)
さあ今週もやってまいりました~クールな金曜日!楽しい週末が待っている金曜はただでさえクール、マジックプレイヤーにとってはフライデー・ナイト・マジックだったり新セットの発売日だったりでさらにクールな素晴らしい曜日だ。
そんな金曜をもう一段階上のクールさ、言うなればネクストレヴェルへと持っていくために、当コラムでは「クールなデッキ」を紹介している。何をもってしてクールというか?とにかく ……何か惹かれるものがあるということ、これが一番大事だね。それじゃ今週も行ってみよう!
Fun Magic the Gathering fact: I am the Tradewind Rider. John Matson, the artist for this piece, and I are friends since high school. He used me as a model for a number of his paintings in those early days of MtG pic.twitter.com/oj68o1rRhM
— Jeff Miracola (@JeffMiracola) 2023年1月11日
早速だが上記のツイートを見ていただこう。発信元はジェフ・ミラコラ/Jeff Miracola氏。マジックのカードイラストを長きにわたって担当してきたアーティストであり、アメコミ風の独特のタッチは一目見たら忘れられないインパクトの強いもの。特に《活発なビーブル》《釣り合い》などのカードに見られるピンクのころころしたかわいいクリーチャー、ビーブルは彼の創造したオリジナルキャラクターがマジックに取り入れられたものになる。
クールすぎる歴史を持つ偉大なアーティストの最新作は先日発売開始となった『ドミナリア。リマスター』にも収録されているのでそちらも要チェック。
で、肝心のツイート内容。そこには非常に面白いクールな情報が ……「私は《貿易風ライダー》です」、のっけから衝撃的な一言。どういうことかというと、この《貿易風ライダー》というカードのアートを担当したのはジョン・マトソン/John Matson氏。『アライアンス』から『時のらせん』ごろまでの期間、活躍したアーティストだ。このマトソン氏とミラコラ氏はなんと高校時代からの友人であるという。二人はそれぞれにファンタジーアートを手掛けるアーティストになり、互いにマジックのカードイラストを担当することになり ……ちょっとクールすぎないかこの二人。
そしてマトソン氏はそのキャリアの初期に手掛けたイラストにおいて、ミラコラ氏をモデルとすることがあったのだという。つまり《貿易風ライダー》のモデルはミラコラ氏であり、このカードには彼の風貌が反映されているということ。はぁ~、マジックのクール話ってまだまだあるんだなぁ。
4 《真鍮の都》 2 《知られざる楽園》 4 《Tropical Island》 4 《Savannah》 2 《Taiga》 -土地(16)- 4 《極楽鳥》 2 《ラノワールのエルフ》 4 《根の壁》 2 《クウィリーオン・レインジャー》 2 《マーフォークの物あさり》 2 《ゴブリンの太守スクイー》 2 《貿易風ライダー》 1 《金粉のドレイク》 1 《現実主義の修道士》 1 《ギトゥの投石戦士》 1 《平和の番人》 1 《ウークタビー・オランウータン》 1 《レイディアントの竜騎兵》 1 《スリヴァーの女王》 -クリーチャー(25)- |
1 《吸血の教示者》 4 《秘儀の否定》 2 《意志の力》 2 《炎の鞭》 4 《適者生存》 3 《対立》 3 《冬の宝珠》 -呪文(19)- |
1 《誠実な証人》 1 《解呪》 2 《意志の力》 1 《水流破》 1 《現実主義の修道士》 3 《無のロッド》 1 《対立》 1 《一掃》 2 《剣を鍬に》 1 《ウークタビー・オランウータン》 1 《冬の宝珠》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
上記のクールなエピソードにグッときたので、今回は《貿易風ライダー》が採用されたデッキを ……なんだったらライダーとライダー自身=ミラコラ氏の手がけたカードとが共演するデッキがあればそれがクールってもんじゃないか?と、思い立ってライダーが輝いていた時代のデッキリストを漁ろう!と意気込んで臨むと ……一発だった。最初にアレかなと思い付いたリストがドピンシャで、このクールな偶然を逃す手はないなと。
というわけで今回のデッキは、プロツアー・シカゴ99TOP8進出デッキの一つである「トレードウィンド・サバイバル」!1999年のシカゴといえば、当コラムでも不定期で取り上げている伝説のトーナメントだ。使用者は"フランスの英雄"ラファエル・レヴィ/Raphaël Lévy、プロツアー殿堂顕彰者で非常に長いプロキャリアを誇るレジェンド中のレジェンドだ。15歳で初めてプロツアーに出場してから、実に91回連続プロツアー参加の記録を誇るリビング・レジェンドは、かのシカゴの日曜日にもその名を刻んでいたのである。
と、使用者もクールすぎるこの「トレードウィンド・サバイバル」。その詳細を見ていこう。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:今はなきエクステンデッド
プロツアー・シカゴ99はエクステンデッドという構築フォーマットにて開催された。今は廃止となったものであるが、これは例えるなら"ローテーションのあるパイオニア"というところ。スタンダードよりも古い時代のカードが使用可能であるが、マジックのまさしく黎明期のカードはその範囲外という絶妙なカードプールだった。
当時使用可能だったセットは、基本セット『第5版』&『第6版』。エキスパンション・セットは『アイスエイジ』〜『メルカディアン・マスクス』まで。さらにこのフォーマットをスタンダードとは全くの別物であるということを強調するためにも特別に、《Tropical Island》などの2種類の基本土地タイプを持った土地、通称デュアルランドが使用可能となっていた。これがめっちゃクールだったんだよな。
当時マジックを初めてようやくルールをきちんと理解できて、毎日スタンダードを遊んでいる自分にとって「なんのデメリットもなく簡単に3色以上の多色デッキが組めるとは!」と衝撃的だったのを今でも覚えているよ。
そんなデュアルランド期のエクステンデッドを代表するカードの一つが《適者生存》。デッキ名のサバイバルはここから取られている。
クリーチャー・カードを捨てて、ライブラリーから任意のクリーチャーを手札に加えられるという驚異的なサーチ能力を継続的にもたらすエンチャントだ。このサバイバルでトレードウィンドこと《貿易風ライダー》らを状況に合わせてサーチし、盤面を自分が有利になるようにコントロールしていく。これがサバイバル系デッキの基本であるが、トレードウィンド型は特にマナロックに重きを置いている。
そして《対立》《冬の宝珠》も搭載。《極楽鳥》らマナ加速役の1マナクリーチャーからこれらを展開したら、あとはそれらをタップして《対立》を起動。対戦相手のアップキープに土地をタップすることでメインフェイズで自由にマナを使わせない、がんじがらめの状態に持ち込むのだ。
後はトレードウィンドでパーマネントを戻し、再展開が絶望的な状況を作りあげたら勝利は自ずと舞い込んでくる、と。これほど自分にとって極楽、対戦相手にとって地獄な盤面を作り出すデッキもないんじゃないかな。それを四文字でまとめると「Cool」になるってこったな。
クールポイントその2:友の炎
さて、今回のメインテーマでもあるトレードウィンドとミラコラ氏がイラストを手がけたカードとの共演。このリストでそれを実現させているのは《炎の鞭》!
このオーラはクリーチャーに除去能力を与える。タップすることで1点ダメージを与え、またこの鞭自体を生け贄に捧げても1点ダメージが飛ぶ。たかが1点、と侮ることなかれ。同時期のエクステンデッドにおいて、対同型戦において重要なのはマナクリーチャー。リストを見てもらえれば分かる通り、土地の枚数は削ったうえで《極楽鳥》らマナクリーチャーがどっさりと採用されており、これでマナ基盤を作り上げていくものになっている。
これを一方的に、そして継続して焼き払う《炎の鞭》は勝負を決める一手になり得た。さらに《クウィリーオン・レインジャー》がいれば、鞭を持ったクリーチャーをアンタップすることもできる。タップしてマナを加えた後の《Savannah》などを手札に戻し、出し直しするのとマナクリーチャーのアンタップとでマナをたっぷりと供給する便利なクリーチャーは、鞭と絡めれば攻撃的な運用も可能ということ。タフネス2以上のクリーチャーにも対処できるようになるので、アグロデッキを押しのける!《金粉のドレイク》《ギトゥの投石戦士》らと《貿易風ライダー》とが絡めば、対戦相手のクリーチャーに明日は訪れない!
余談だが、《炎の鞭》は当時と今とで挙動は大きく異なる。現在はクリーチャー「に」タップすることで1点ダメージを与える能力を付与するものとなっているが、初出の『ウェザーライト』当時のテキストはクリーチャー「を」タップしてダメージを与えるという能力を鞭自身が持っていることになっており、つまりは召喚酔いのクリーチャーにつけても即座にダメージを与えられる。昔のデッキを再現して遊ぶ際には、当時と挙動が異なるカードには気を付けよう!
クールなまとめ
ジェフ・ミラコラとジョン・マトソン。《貿易風ライダー》という一時代を築き上げた名カードの印象的なイラストは、二人のアーティストが互いに支え合った友情なくしては存在しなかった。マジックはただのカードを使ったゲームじゃない、そこには多くの人が携わっており、デッキにはそれぞれの思いや歴史が詰め込まれている。
このクールなゲームが残すエピソードを、これからも追いかけていきたい。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Ride on the tradewinds!!
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