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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ジャンド・サクリファイス:理想の盤面づくりにこだわりました(スタンダード)
『兄弟戦争』リリースからはや1か月。長かったような気もするし、あっという間な感覚もある、不思議な1か月だった。
このセットがもたらした変化を味わうべく、スタンダードはそれなりにプレイした。環境スタート時に比べると、日を重ねるにつれて特定のデッキとマッチする確率が上昇してきた。MTGアリーナという世界中の人が気楽にプレイできるツール、ランク戦という試行回数を重ねてデッキの最適化を促すモード、そしてデッキリストの拡散速度……などなど合わさって、スタンダードのデッキが洗練される速度は昔のそれに比べると格段に増したというのを実感している。
だからといって、それら流行りのデッキ・定番の形というものにこだわらないといけないということはない。自分が組みたいデッキを組めばそれで良いのだ。
このコラムでは環境の顔とも言えるポピュラーなデッキから、使用者数は多くないが独特の雰囲気を持ったマニア向けのデッキまで、さまざまなものを偏りなく紹介することを目指している。
今回紹介するのは、デザイナーの好みが色濃く反映されたもの。このデッキを組み上げた人は「生け贄」というフレーズがたまらなく好きなんだろうな。
4 《ジアトラの試練場》 4 《硫黄泉》 4 《憑依された峰》 4 《ラノワールの荒原》 1 《死天狗茸の林間地》 3 《カープルーザンの森》 2 《落石の谷間》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(25)- 4 《生歯の子ワーム》 4 《ヴォルダーレンの美食家》 4 《税血の収穫者》 1 《ラトスタイン翁》 4 《空漁師の蜘蛛》 -クリーチャー(17)- |
4 《ミシュラの研究机》 1 《切り崩し》 4 《鬼流の金床》 1 《喉首狙い》 4 《鏡割りの寓話》 4 《人体改造機の冠》 -呪文(18)- |
2 《機能不全ダニ》 2 《燃え立つ空、軋賜》 3 《強迫》 2 《切り崩し》 2 《兄弟仲の終焉》 2 《未認可霊柩車》 2 《ヴェールのリリアナ》 -サイドボード(15)- |
いきなりプレイした感想から。うーむ、好き!
単体のカードでゴリゴリ押し切るパワフルなプレイ感ももちろん大好きなんだけども、こういう細かなパーツが歯車のように噛み合うことでジリジリと確実に有利になっていくデッキというのもまた大好物なんだよなぁ。
脂質と炭水化物の塊! ジャンクフード! って感じも好きだけど、お出汁とお野菜の繊細で奥深い落ち着く味わいも好き、といえばわかってもらえるかな? このデッキはまさしく後者であり、デッキパーツが醸し出す風味が混然一体となって盤面に広がる……そんなゲーム体験をもたらしてくれること間違いなしなテクニカルデッキだ。
このデッキのメインエンジンは《鬼流の金床》である。
アーティファクトが墓地に置かれると構築物・トークンを生成する。この能力は自身の起動型能力でアーティファクトを生け贄に捧げることで誘発させられるが、それだけに頼らず能動的に墓地に落ちるアーティファクトも用意することで、そのポテンシャルを最大限に発揮できるように作られている。
宝物および血・トークン、そして《ミシュラの研究机》。
これらを自然に起動しているだけでそこに1/1のおまけがついてくる。そしてこのデッキではそのおまけが持つ意味が非常に大きい。
まず、アーティファクトが戦場に出るということ。これにより《生歯の子ワーム》がサイズアップ!
+1/+1カウンターが置かれるのは各ターン1回のみではあるが、ライフを得るのは同一ターンで何度でも誘発する。これを利用してとにかく回復しまくりながら、子ワームが一人前に育つのを待とう。
金床および子ワームが複数並べばそれだけモリモリとライフが回復し、それこそ《黙示録、シェオルドレッド》によるライフ損失がほとんど気にならなくなるぞ。
そしてこの金床の生成する構築物に《人体改造機の冠》を装備すると……そりゃあもうオイシイ思いができちゃうよ。
毎ターン構築物を金床で生け贄に捧げることで、1点ドレイン・1枚ドロー・1/1生成・子ワームサイズアップ&1点回復……得られるものが多すぎる!
これらのピースを揃えてガチャガチャやってれば、ちょっとやそっとのことでは敗北しなくなる強固な戦場となる。いずれのカードもコストが軽いので、複数のパーツであっても戦場に揃えるのは決して難しいことではない。気が付けば子ワームのサイズが膨れ上がり攻撃に転じることができるようになり、金床で相手のライフも擦り減っているはずだ。
そしてこのデッキのもう1つの必殺パターンが《空漁師の蜘蛛》!
このカード、黒緑2色のお約束とも言える万能パーマネント破壊で大好きなのだ。クリーチャーの生け贄を要求してくるが、そんなものは金床の構築物で賄えば無料も同然。
この蜘蛛を《キキジキの鏡像》でコピーすることで、毎ターンパーマネントを1枚消し飛ばしていくのが最高に気持ち良い。
キキジキによるコピーはターン終了時に生け贄に捧げられるのだが、この蜘蛛は死亡時に墓地のクリーチャーカードの枚数分のライフを得ることまでできる。完璧に噛み合ってるぞ!
これでクリーチャーを撃ち落としながら回復して耐えて、耐えきったら無人の戦場を駆け抜ける……そんな受けの美学にあふれたプレイが決まった時の感動は何にも代えがたい。システムを組み上げて、とにかく生き延びること。それが最大の攻撃となるのだ。
スタンダードは使用可能なカードが限られてはいるが、このリストのように個性と実力を兼ね備えたデッキを組むことは可能だ。
環境を代表するデッキは1か月という期間があれば作られるものではあるが、それすなわちスタンダードが攻略されてしまったというわけではない。それらに対抗するデッキ・自分自身を表現するデッキなどなど、あなたにしか組めないデッキを組む余地はまだまだあるのだ。
使ったことがないカードがあるのなら、積極的に採用してみよう。可能な限り多くのカードとデッキを体験することで、マジック生活は豊かなものになると、そう心から信じている。
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