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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
Pox:ミシュラランドの元祖(レガシー)
『兄弟戦争』で注目しているカードはそれこそ全部と言いたいぐらいだが……ひとまずミシュランが帰ってきたのは嬉しいところだ。
「ミシュラン」というのはミシュラランドの略称。その「ミシュラランド」とは、クリーチャー化する能力を持った土地のことである。
非クリーチャーのパーマネントがクリーチャー化すること、それがもたらす恩恵は《神の怒り》のようなソーサリーのクリーチャー除去に対する耐性の向上である。すべてのクリーチャーが対処されても、続くターンで破壊や追放をされずに残ったパーマネントをすかさずクリーチャー化させて攻撃すれば切れ目なくライフを詰めていける。
中でも土地がクリーチャー化する意味は大きい。デッキ内で最も必要なパーツでありながら、それを引きすぎると何もできないという事態を招く土地という存在。それがクリーチャーとしても働いてくれるとあれば、文句なしに嬉しいこと。
その元祖であるのが《ミシュラの工廠》。
アンタップ状態で戦場に出るので展開を阻害せず、起動コストはたったの1マナ。2/2という安定感のあるスペックに加えて、工廠で他の工廠を強化することもできて、タフネス3以上が立ちふさがっていてもお構いなしに攻められる。
無色マナしか得られないのが弱点ではあるが、2色以内のデッキであれば問題なく運用できるレベルの些細なことではある。
この元祖クリーチャー土地にリスペクトを払い、後継の様々なクリーチャー土地をミシュラランドと呼ぶようになった、と。人によってはマンランドと呼ぶこともあるね。
そんなミシュランの最新モデルは《ミシュラの鋳造所》!
元祖の調整バージョンがスタンダードにやってくる! クリーチャー化コストは{2}と重くなったが、その分攻撃している組立作業員への強化も倍に。攻撃限定というのがポイントで、初代ミシュランのように相手の攻撃をブロックしてから自身を対象として強化するという防御的な動きはできなくなっているね。
よって、コントロールが守りの手段として用いるには初代に劣る部分はあるが、アグロデッキにおいて最後の一押しを担うには良い仕事をしてくれる予感。スタンダードで《告別》に耐える攻撃役を務めるのをはじめ、新ミシュランが活躍するのを楽しみにしているよ。
さて、《ミシュラの鋳造所》を見て「そういえば《ミシュラの工廠》を目にする機会も減ったなぁ」と思ったのも事実。かつてはレガシーでこれをメインの勝ち手段に据えたデッキもあったものだ。
時代の流れとともに他のカードに置き換わっていく、それは仕方のないことかもしれない……と悲観的に鳴るにはまだ早かった。2022年秋現在も正真正銘「ミシュラランド」で戦うデッキがまだ…あるッッ!
8 《沼》 2 《ロークスワイン城》 4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《ミシュラの工廠》 4 《不毛の大地》 4 《ウルザの物語》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
4 《暗黒の儀式》 4 《思考囲い》 2 《両替機》 1 《塵へのしがみつき》 1 《呪われた巻物》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《真髄の針》 1 《カラスの罪》 1 《改良式鋳造所》 4 《小悪疫》 3 《トーラックへの賛歌》 3 《突然の布告》 1 《世界のるつぼ》 1 《影槍》 4 《ヴェールのリリアナ》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(34)- |
2 《戦慄の朗詠者、トーラック》 2 《敵対工作員》 2 《無のロッド》 2 《毒の濁流》 4 《虚空の力線》 3 《虚空の杯》 -サイドボード(15)- |
レガシーの「Pox」だ。
Poxこと《悪疫》自体を採用しているリストは少ないものの、《小悪疫》を採用しているリストは便宜上このアーキタイプに分けられる。
すべてのプレイヤーが1つずつ何かを失う、痛み分け系カードの中でも《小悪疫》はかなり使いやすい。土地と手札を失うことを避けることは困難を極めるが、クリーチャーはそもそも出さなければ損失も発生しない。相手だけがクリーチャーを出している状況に持ち込めば大きな被害を与えることができるというわけで、それゆえにノン・クリーチャーデッキとなっている。
そして《ミシュラの工廠》がその悪疫でこじあけた盤面を悠々と闊歩するという算段だ。古典的戦術だが、だからこそ楽しい。レガシーはこうでなくては。古き時代のテクノロジーで戦って、何が悪いんだという姿勢を示すリストには最新鋭のカードを意欲的に採用したものとはまた違った好感を抱いてしまうね。
工廠を4枚採用しつつマナシンボルの濃い《小悪疫》を唱えるために《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》も4枚!
伝説の土地だけれど、どうせ生け贄に捧げるのだからどうこう考えなくても大丈夫というポジティブな構築が清々しい。
《小悪疫》を筆頭に黒のクリーチャー除去と手札破壊とで対戦相手の資源(リソース)を削り取って、ミシュランでちくちく攻めるような消耗戦に持ち込むのがこのコントロールの狙いだ。
《ヴェールのリリアナ》もこれを強力に後押しする。
そして彼女と《小悪疫》に共通する、自分が手札を捨てるというデメリットをカバーするのが《両替機》だ。
捨てた手札をこれで追放し、宝物かならず者に両替することで無駄にしないという……一見すると派手さのない細かいアドバンテージの取り方を狙う。
ただ、この一見地味な動きが塵も積もれば敵にゲームを分ける大きな一手になるのだよ。この《両替機》は《ウルザの物語》からサーチしてくる選択肢でもある。
これも土地がクリーチャーを生み出す、ミシュランの別方向への進化系と言えるだろう。物語が生成する構築物はアーティファクトの数を参照したサイズを持つが、《ミシュラの工廠》はクリーチャー化すると同時にアーティファクトにもなるので、これまたほんの少しの、しかしながら確実なダメージ増加を狙って起動していこう。これらの土地と《不毛の大地》を《世界のるつぼ》で使いまわして、尽きないアドバンテージを堪能し尽くせ!
無茶苦茶シブい「Pox」デッキ、《ミシュラの工廠》はいまだ現役であると主張する素敵なリストに感服だ。願わくば《ミシュラの鋳造所》とセットで「8ミシュラ」体制のデッキが登場せんことを……一度は組立工作員軍団で戦場を埋め尽くしてみたいもんだなぁ。
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