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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
アゾリウス・ライブラリーアウト:常識破りのカラーチョイス(モダン)
常識なんてものは捨ててしまえ。マジックは時にそのメッセージを強烈に伝えてくる。
常識に則ってデッキを構築することは大事なことである。マナ総量が大きい呪文を多数入れているのに土地の枚数がごく少数とか、クリーチャーを大量に展開するデッキが自分から《神の怒り》のような除去をメインで使用するというのは常識を外れており良い結果に繋がらないものだ。
勝ちたければ常識を守ってデッキを組むに限るのだが、良い意味で常識を全く外れた構築を施すのをマジックは大歓迎してくれる。たとえばこのコンボならこの色の組み合わせしかないよな、そういう思い込みを裏切るカラーリングでデッキを完成させられたなら、デッキリスト非公開の戦いにおいて相手を撹乱できるかもしれない。常識を逆手に取った戦法!
これが簡単なようで、適当なことやるだけじゃなかなか上手くいかないものなんだよなぁ。常識破りのデッキを完成させているビルダーとの出会い、それは常に感動を伴う。
世界中のプレイヤーがオンラインにて公開しているリスト、それは常識に打ち勝つためのアイディアと努力の結晶なのである。
3 《島》 3 《平地》 4 《神聖なる泉》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《湿地の干潟》 1 《霧深い雨林》 4 《廃墟の地》 -土地(23)- 4 《面晶体のカニ》 4 《遺跡ガニ》 1 《エスパーの歩哨》 1 《ジェイスの幻》 4 《イーオスのレインジャー長》 1 《イーオスのレインジャー》 3 《孤独》 -クリーチャー(18)- |
4 《彼方の映像》 1 《流刑への道》 4 《帰寂からの帰還》 1 《虹色の終焉》 2 《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》 4 《書庫の罠》 3 《時を解す者、テフェリー》 -呪文(19)- |
1 《巨人落とし》 1 《砂の殉教者》 2 《戦争の報い、禍汰奇》 2 《翻弄する魔道士》 1 《孤独》 4 《外科的摘出》 2 《魂標ランタン》 2 《神秘の論争》 -サイドボード(15)- |
こちらのリストをじっくり見ていただきたい。モダンのもので、青を中心とした「ライブラリーアウト」デッキだ。
切削を行うカードを用いて対戦相手のライブラリーをゴリゴリ削り、特定のカードを引けないようなゲーム展開に引きずり込むと同時に、ライブラリーが0枚でカードが引けないという敗北条件へと追い込む。切削の英名から「ミル/Mill」と呼ばれることも多くなってきた、古くから存在するデッキだ。
モダン環境は《溢れかえる岸辺》などのフェッチランドでライブラリーから《ラウグリンのトライオーム》などの多色土地を探して戦場に出すというのがごくごく一般的で、ほとんどの多色デッキがこれに基づいた土地基盤を用いる。
そこでモダンのライブラリーアウトは《書庫の罠》から構築をスタートする。
これは常識というやつだ。対戦相手がライブラリーを探したら、このインスタントの唱えるためのマナ・コストは{0}になる! 無料で13枚も切削できてしまうのだ。2枚、3枚と重なれば一気にライブラリーは薄くなる。1ターン目にフェッチを切ったら《書庫の罠》4連打でライブラリー52枚削られた!というのはモダンプレイヤーなら一度は味わってみたい(?)、最高にモダンをやっていると実感できる瞬間だな。
他にも《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》で追放したり、《面晶体のカニ》《遺跡ガニ》で継続的に削ったりしてライブラリーを空っぽにする。
相手の墓地が貯まれば《彼方の映像》で手札補充する、と。
この辺は切削パッケージというところで、常識の範囲内。
ではこのリストの常識の範囲外とは? それは2色目。モダンにおけるほとんどのライブラリーアウトは青黒で組まれる。シンプルに10枚削れる《不可思の一瞥》、そして墓地が貯まった相手を自在にコントロールする《湖での水難》があるため、青をメインに黒を足すのが常識とされている。
それに反するこのリスト、青のお供には白を選んでいる。白? ライブラリーアウトのイメージにない色ではあるが、これはどのような恩恵をもたらすのだろうか?
確かに大昔には《石臼》でじっくり削っている間、《物語の円》で相手の攻撃から耐えるデッキもあったが、そういうわけではないな。このデッキが切削をサポートするのに白を選んだ理由は……《帰寂からの帰還》!
え、こりゃなんだ?とこのインスタントが完全に記憶にない、あるいは初見という方も少なくないはずだ。
この呪文はそのターンに墓地に落ちたパーマネント2枚を戦場に戻す、特殊なリアニメイトである。戦場へと戻すタイミングが限られているだけあって、2マナで2枚もパーマネントを戻せるのは破格だ。
ではこのカードをどう使うのか? それはカニとの組み合わせである。
《面晶体のカニ》《遺跡ガニ》たちが除去されたらこれで戦場に戻す? もちろんそれもある。が、注目すべきはクリーチャー以外のパーマネントも戻せるという点。つまりカニたちがいる状況で……《湿地の干潟》などのフェッチランドと《廃墟の地》のように、能動的に墓地に落ちてかつ1枚で2回上陸を誘発する土地、これらを《帰寂からの帰還》で使いまわす! このアクションで二桁枚数のカードを削り落とすのだ。この常識外れの組み合わせ、マジックの新常識になるか?!
《帰寂からの帰還》は《孤独》や《時を解す者、テフェリー》を戻すのも文句なく強いね。
白を足したことで《イーオスのレインジャー》《イーオスのレインジャー長》でカニをサーチしてくるのもイケているし、ライブラリーアウト以外にもクリーチャーで殴って勝つルートがあるのも素晴らしい。
デッキ構築において、常識に則ってカードをチョイスするのは重要なことだ。そしてだからこそその常識を超えてくる、新常識も生まれてくる。ライブラリーアウトは青黒だけじゃないぜ、これからは白も意識した方が……いや、赤とか緑でも何かしてきそうな気もする……次に常識を塗り替えるのは君のデッキかもしれないな。
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