《黙示録、シェオルドレッド》《キキジキの鏡像》《策謀の予見者、ラフィーン》《産業のタイタン》……鬼のように強いクリーチャーたちがひしめき合う、スタンダードの戦場。

　これらへの対策手段を用意しない構築は、かなりの覚悟が試される。わざわざリスクを背負う必要はないので、よっぽどの理由がなければクリーチャー除去を採用した方が良い……というかしないと負けるので普通のデッキには半ば自動的に採用されている。

　ただ、除去だけ引いてもゲームに勝てないのがマジックの悩ましいポイント。脅威となるクリーチャーはどんどん生えてくるのでそれらを捌くための手段は１枚でも多く用意しておきたい。しかし攻めに転じたいタイミングでそれらを引くとげんなりしてしまう、なんてことも。

　このジレンマを解決する術は……ある、あるぞ。

　スタンダードのバント(青白緑)カラーのデッキ……ミッドレンジやコントロールといった大雑把なアーキタイプ名よりも、より細かく「ビッグマナ」に分類したい構成だ。

　デカいマナという意味そのままで、土地やクリーチャーやアーティファクトといったパーマネントからマナを多く得られる状況を作って、他のデッキでは扱いにくいような高コストのカードを唱えて圧殺することを狙ったデッキである。

　このリストではその圧殺役を《収穫祭の襲撃》が担っている。

　６マナで５マナ以下のパーマネントを２枚展開、マナ効率に優れまくりなパワフルさで対戦相手をノックダウン。このソーサリーを素で唱えて、さらに墓地からフラッシュバックで唱えて物量差をつけてフィニッシュ……するには結構なマナが必要なので、《ドーンハルトの主導者、カティルダ》《根のとぐろの忍び寄るもの》でマナ加速。

　カティルダはマナが有り余る状況下で全体強化として勝ち手段にもなり、しかも《婚礼の発表》の生成するトークンもマナ加速となる。忍び寄るものはフラッシュバックのためなら２マナ分の加速になる効率の良さがセールスポイント。《麒麟の教え》で墓地に《収穫祭の襲撃》を落としてからのフラッシュバックで大きくアドバンテージを確保しに行こう。

　で、冒頭のジレンマの話。このデッキではクリーチャーへの対策手段として《移植された自我》を用いる。

　４マナでクリーチャーのコントロールを奪い、しかもほんのり強化するいやらしいオーラだ。カード１枚で相手の脅威を取り除き、こちらに戦力が加わる。

　この手のコントロール奪取呪文はいずれも非常に強力で、特にこの《移植された自我》は４マナというこの手のカードの中でも軽いコストが魅力的だ。追加コストの生け贄も《麒麟の教え》《婚礼の発表》《放浪皇》とトークン生成手段が豊富なので困ることはない。

　そしてこのデッキの主役《収穫祭の襲撃》と《移植された自我》の相性は抜群！ 何せ襲撃からは直接戦場に出るので、追加コストの生け贄は不要。ライブラリーの上から見た５枚の中に２枚ある幸運に恵まれたりしたら、６マナで対戦相手のクリーチャーが２体減りこちら側に２体増える。どちらか片方の効果でも６マナに十分に見合うものなのに……マナ効率の良さに震えるぜ。

　《夜明けの空、猗旺》の死亡誘発でもこのオーラを直に戦場に出せるので、あらゆる角度から相手のクリーチャーを奪いにかかろう。

　クリーチャー対策には除去、打ち消し、手札破壊とさまざまな形がある。その中でも最もクレバーでデンジャラスなものはコントロール奪取！ ただ１対１交換を繰り返すのではなく、２対１以上の美味しい交換を取れるカードを用いることで、対戦相手との戦力差を大きく開ける。

　《黙示録、シェオルドレッド》《キキジキの鏡像》あたりをチョウダイすると、本当にニヤニヤが止まらない良いマジック体験ができるぜぇ。