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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
エスパー・フィッシュ:癒しのエキゾチック・ペット(スタンダード)
「日本選手権2022 -Tabletop Returns-」お疲れさまでしたッ!
テーブルトップ、つまり紙のマジックの帰還と銘打ったこの大会……約2年4か月ぶりか。紙のカードを使い、プレイヤー同士が面と向かって対戦する古き良き形式での競技イベントがようやく帰ってきたんだなぁ。
もう何年もプレイヤーとして参加はしていないが、スタッフとしてはそれなりの期間関わり続けてきたので、今回の紙大会の復活は喜ばしい限りだ。
2日目の夜、イベント終了後。僕は大阪でこじんまりとした飲食店をやっているのだが、ライブ配信のスタッフらがイベント終了後にお疲れ会をしに来店してくれた。以前までの年間に何度も何度もイベントが開催されている頃なら、ああまた会ったな、くらいの感覚だったのだが……2年ぶりに集うとなんだかそれだけで笑顔になれるんだなと、マジックを通じて知り合った仲間のありがたみを再認識した。
スタッフ目線から見た紙大会の復活がどれだけグッとくるものだったか、プレイヤーもジャッジもスタッフも皆こみ上げるものがあったというエピソードに、こっちもグッときたもんだ。後はいつものイベント後の飲みと同じくバカ話に花を咲かせて楽しい夜を過ごしましたとさ。あの頃、何とも思わずに過ごしていた日常が帰ってきたような気がした。
というわけで会場に行っていない人間にとっても心に響くものだった今年の日本選手権。スタンダードで開催されたわけだが、この紙の大会は久しぶりに参加者のデッキリストという形でも僕らを楽しませてくれる。イベント翌日など余韻に浸っている状態で改めてどんなデッキが使われていたのかリストを眺める。大会と言ったらやっぱりこれ。
というわけで前夜の盛り上がりを思い返しながら日本選手権参加者のデッキリストを眺めている、なうだ(5月30日)。そしてトップ8入賞デッキの時点で、これは面白いなと思わされるリストが。カバレージなどからもその味わい深さが伝わってきた、日本選手権らしいリストをご紹介させていただきますッ!
1 《平地》 1 《島》 1 《沼》 4 《ラフィーンの塔》 2 《さびれた浜》 4 《連門の小道》 4 《陽光昇りの小道》 2 《難破船の湿地》 4 《清水の小道》 1 《フロスト・ドラゴンの洞窟》 1 《目玉の暴君の住処》 -土地(25)- 4 《光輝王の野心家》 4 《幽体の敵対者》 2 《しつこい負け犬》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 2 《常夜会一家の介入者》 -クリーチャー(16)- |
1 《呪文貫き》 2 《かき消し》 2 《消失の詩句》 1 《冥府の掌握》 4 《風変わりなペット》 4 《婚礼の発表》 1 《エメリアの呼び声》 4 《放浪皇》 -呪文(19)- |
4 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 1 《強迫》 1 《無効》 3 《軽蔑的な一撃》 1 《パワー・ワード・キル》 2 《告別》 2 《未認可霊柩車》 1 《勢団の銀行破り》 -サイドボード(15)- |
山口弘太郎選手の「エスパー・フィッシュ」だ。
エスパー(白青黒)カラーといえば『ニューカペナの街角』にて《策謀の予見者、ラフィーン》などを得て大きく飛躍した勢力であり、クリーチャーで攻めて良し、除去や手札破壊でコントロールして良し、の中速デッキの代表格としてスタンダードにおける中心的な存在となっている。
《放浪皇》をはじめとするプレインズウォーカーを最も強く運用できるデッキという地位を確立しており、とにかく盤石な盤面を作りだせることがセールスポイントだ。
《光輝王の野心家》に加えてラフィーンもクリーチャー強化を担うので、見た目よりもはるかに狂暴なクリーチャーで対戦相手を殴り倒すぞ! 意外なパンチ力も自慢なのだ。
このラフィーン擁するエスパーデッキ、その亜種とも言える上記のリスト……デッキ名にも含まれるフィッシュとは、魚・トークンを生成する《風変わりなペット》のこと。
これはかなり珍しいチョイスだ。インスタントなので対戦相手のターン終了時に唱えることで、比較的安全にトークンを2体得てそのまま返すターンに攻撃に移行できる。
そのかわいらしい魚・トークンはブロックされないという最強の回避能力を持つので、1/1と言えど無視できない脅威。《光輝王の野心家》などで強化してやると見た目とは裏腹に殺意に満ちたモンスターフィッシュに化けるし、+1/+1カウンターが置かれているクリーチャーが既にいるならお魚ちゃんもそれを担いでやってくるというのが魅力的だ。
《婚礼の祭典》で強化されるとブロックされない4点ダメージ源となり、ライフはもちろん、プレインズウォーカーを巡る攻防においても目をみはる活躍をしてくれる。地味に見えてシブく活躍、いぶし銀カードだなぁ。
この《風変わりなペット》以外にも、このリストには他のエスパーではあまり見かけないカードチョイスが。《幽体の敵対者》である。
フェイズ・アウトにより自身のクリーチャーを除去から護ったり、対戦相手の攻撃orブロック役を複数どかしたりと、テクニカルな動きが光る玄人好みの1枚だ。
これに《常夜会一家の介入者》、《呪文貫き》に《かき消し》、各種除去に定番の《放浪皇》……そう、このエスパーはインスタントのタイミングで動くことを手としている。
より隙なく立ち回ること重視し、裏目を引くことを極力避ける形だ。ヤバいものは打ち消すか除去し、それらが飛び出さなければペットや敵対者でこちらの盤面を作っていく。「クロック・パーミッション」と呼ばれる戦術で、出たとこ勝負ではなく慎重に戦うマジックを好むプレイヤーにはこのようなデッキがオススメだ。
特に青いデッキに対しては向こうが得意とする打ち消し戦術に同じ土俵で勝負できるし、かつ従来の自分のターンで動くカードの部分も強いという点で優位に立ち回れるようだ。
「ニューカペナ・チャンピオンシップ」からたった1週間、されど1週間。その期間でスタンダードのデッキは着実に進化したということだ。これもまた競技イベントが複数開催される世界における楽しい瞬間だ!
強いデッキに独自性を持たせて大会上位入賞を果たす、こういう光景が今後日本や世界各地で見られる……少し前までは普通だったあの光景が、今まさに戻ってきつつあるのだ。
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