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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
金銀財宝土建組!(スタンダード)
マジックの競技イベントというやつはなかなかに凄いものだ。誰もが楽しめる、という意味でね。
トーナメントに参加し、熱戦を繰り広げるプレイヤーたちが楽しいのはもちろんのこと。それに参加していない者が楽しむ方法が存在しているのが素晴らしい。激闘を観戦すること、好きな選手を応援すること、そして……当コラム的にはデッキリストを眺めること! これは外せないね。
特に新環境が始まってから時間がさほど経過していないタイミング、この時期のデッキリストを観るのが一番面白い!
いくつものイベントやランク戦での膨大な試行を経て洗練されたデッキリストが完成した環境末期と呼べるタイミングでは、おのずと強デッキが絞られて個性的・独創的なリストは少なくなってしまう。
これに対してニューカペナ・チャンピオンシップは良いタイミングだった。『ニューカペナの街角』リリースから3週間。まだまだこのセットが参入した後のスタンダード、その底にたどり着くには時間が足りないタイミングだ。
強いデッキ、中心的な存在となるだろうデッキは多くのプレイヤーの共通認識としてあるものの、それが絶対的な強者として君臨しているかというと……そうでもない。このタイミングのスタンダード競技イベント、面白くないわけがない。
というわけで今回はニューカペナ・チャンピオンシップのスタンダードラウンドで使用されたデッキから、個人的にグッときた逸品をご紹介!
1 《森》 4 《ジアトラの試練場》 4 《闇孔の小道》 2 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 3 《落石の谷間》 2 《岩山被りの小道》 3 《バグベアの居住地》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(24)- 4 《闇市場の巨頭》 2 《祝祭の出迎え》 2 《しつこい負け犬》 2 《嘘の神、ヴァルキー》 3 《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》 1 《結ばれた者、ハラナとアレイナ》 1 《作業場の戦長》 2 《焼却するもの、ジアトラ》 -クリーチャー(17)- |
3 《電圧のうねり》 1 《強迫》 1 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 1 《冥府の掌握》 4 《鏡割りの寓話》 2 《土建組一家の魔除け》 2 《食肉鉤虐殺事件》 1 《髑髏砕きの一撃》 4 《エシカの戦車》 -呪文(19)- |
3 《作業場の戦長》 3 《強迫》 3 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 2 《古き神々への拘束》 2 《豪火を放て》 2 《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
チャンピオンシップの日曜日、決勝ラウンドに進出した八十岡翔太選手の宝物をテーマとしたジャンド……あるいは土建組カラーのデッキだ。
黒赤緑、いずれも古くからマナを伸ばす手段に長けたカラーであり、ニューカペナでは富に貪欲なドラゴン、ジアトラの束ねる土建組が宝物を生成するという形でこれを行う。
宝物は使い切りのマナ加速であるが、トークンとして戦場に残る。大量に用意して一気に用いたり、アーティファクトであることや生け贄をコストとすることを活かして他のカードとシナジーを形成したりと、単にマナを得るだけでなくいろいろなことができるメカニズムだ。
このリストでは《闇市場の巨頭》《祝祭の出迎え》《鏡割りの寓話》のゴブリン、そして《焼却するもの、ジアトラ》から宝物を生成する。これらで重いカードを唱えたり手数で押したりと、あふれるマナで勝利を掴み取りにかかる。
このリストの大きなアクセントとなっているのが《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》。
彼女は白を含む3色のカードではあるが、このデッキには{W}を捻出する土地は用意されていない。宝物で{W}を支払うか、あるいは{G}{G}{G}or{R}{G}{G}という形でコストを支払うのだ。混成マナコストである点を活かした運用法がカッコイイ。
ジニー・フェイはトークンを生成する際に、それを速攻の猫、あるいは警戒の犬へと置き換える能力を持っている。これはクリーチャーであるトークンについてはもちろんのこと、宝物も例外ではない。《闇市場の巨頭》をタップして2/2速攻でライフやプレインズウォーカーを攻めたり、ジアトラから3体のパワー3のブロック役を確保して睨みを効かせたり……ゲーム展開次第では特に使い道がなくなってしまう宝物を、ただのマナではなくクリーチャーという直接的な戦力に変換して戦える。
特に《闇市場の巨頭》との相性は抜群という他ないね。本来は宝物を持っているとアップキープにダメージを受けるというデメリットを持っているからこそ、タップするだけで宝物を得られるという破格の能力を持っている巨頭。これがノーリスクで犬猫を呼び出すカードに化けるのだから……消耗戦の末にこの2枚が揃えば、勝利はグッと近づいてくる!
《祝祭の出迎え》の場合も面白い挙動になるね。クリーチャーが戦場に出たことで団結が誘発、宝物生成→その宝物が犬か猫になればもう1回団結!と。ライフを得たりサイズアップしたりと強い状況を手軽に作り出せるぜ。
トークンと言えば《エシカの戦車》も一気に有利な盤面を作ってくれるのはご存知の通り。このカードもまだまだ強い!
これらトークンシナジーとともに、特に他のカードとの絡みなどはないが単純に強いクリーチャー陣。環境を定義する1枚《しつこい負け犬》、一時的な手札破壊の《嘘の神、ヴァルキー》は《星界の騙し屋、ティボルト》としてフィニッシャーにもなる。
《結ばれた者、ハラナとアレイナ》での速攻ラッシュ、《作業場の戦長》の万能っぷり……これらとジャンドカラーの誇るパーマネント除去の組み合わせ。分厚い構成の横綱相撲的な勝ちを目指すべし!
かつて新セットリリースから2週間という短いインターバルを経て開催されていたプロツアー。そこでは今回のチャンピオンシップのように、プレイヤーたちが選ぶデッキの個性が際立っていた。新しい制度のもと始まるプロツアーではまたあの日のように興奮できそうな……最後のチャンピオンシップのデッキから感じたときめきは、そんな未来への予兆とでも言うべきだろうか。
当たり前のことではあるが、大会は開催時期によってその様相が大きく異なる。そんなことを振り返ることができた、良いイベントと素晴らしいデッキに心からの感謝を。
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