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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
黒単手札破壊:そして意外なキラーカードの浮上(アルケミー)
MTGアリーナ専用フォーマットの1つ、アルケミー用サプリメント・セットの第2弾『アルケミー:神河』がこの春にリリースされた。
忍術や魂力、エンチャント・クリーチャーなど神河のテイストを持ったカードが収録されたわけだが、30種類の新規カードの中でも、真っ先に注目を浴びたカードは黒のインスタントとソーサリー。
まずはわかりやすいインスタントの方から紹介しよう、《痛ましい絆》だ。
2マナでカードを2枚引く。シンプル過ぎる1行目が、1枚のカードを2枚の手札に増やすというお手軽堅実なアドバンテージを保証してくれる。
ソーサリーでも強いのだが、インスタントってこれマジ?と最初は素っ頓狂な声を上げてしまった。《冥府の掌握》などの除去を構えつつ、対処すべきものが出てこなかったらドローする。この動きのなんと強いことか。
もちろんこれだけではいくらなんでもお手軽過ぎるので、デメリットも付与されている。ドローした後に、手札にあるマナ総量3以上のすべてのカードが「唱えれば1点のライフを失う」という、負のオマケを背負う形になる。
言い換えれば3マナ以上のカードが手札になければノーリスクであり、それらの枚数を抑えたデッキでは、いわゆるただ強。3マナ以上のカードをたっぷりと採用していたとして、1点のライフで済むのであれば……と開き直れる値ではある。《食肉鉤虐殺事件》《不憫な悲哀の行進》など黒には失ったライフを取り返す手段も豊富にあるしね。
もう1枚のソーサリーは《地底街の略取》。
初心者には少しわかりにくいテキストかもしれないが、この呪文の言いたいことを要約すれば「対戦相手が手札2枚を捨てる」「対戦相手が手札1枚を捨て、こちらの手札が1枚増える(何がくるかはランダム)」ということ。
これも《痛ましい絆》と同じく、どちらの結果になってもカード1枚でカード2枚分との交換となり、気楽にサクッとアドバンテージを得られてしまう。手札は捨てたくないが、相手の手札が増えるのも嫌……と、状況によって悩まされる分、こちらの方がよりワルなカードだと言える。
どちらの呪文も2マナと軽いので、強いだろうなと。また先日の「神河チャンピオンシップ」の結果もあって、そこで活躍した各種黒系の中速デッキにはすんなりと迎え入れることが可能という状況も追い風に。
結果として、アルケミーの新環境スタート直後は、この2種類の新カードを搭載した黒いデッキが大増殖! 今回紹介するのはその象徴とも言えるリストだ。
18 《冠雪の沼》 3 《目玉の暴君の住処》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《不詳の安息地》 -土地(24)- 2 《墓地の侵入者》 4 《恐怖の神、ターグリッド》 4 《街追いの鑑定人》 2 《契約縛りの召使い、ガットモーン》 -クリーチャー(12)- |
2 《強迫》 2 《冥府の掌握》 1 《パワー・ワード・キル》 2 《真っ白》 1 《食肉鉤虐殺事件》 1 《ハグラの噛み殺し》 4 《絶望招来》 1 《雪上の血痕》 1 《アガディームの覚醒》 1 《勢団の銀行破り》 4 《痛ましい絆》 4 《地底街の略取》 -呪文(24)- |
2 《墓地の侵入者》 2 《強迫》 1 《血の長の渇き》 1 《大群への給餌》 1 《不憫な悲哀の行進》 1 《パワー・ワード・キル》 2 《真っ白》 2 《雪上の血痕》 2 《食肉鉤虐殺事件》 1 《勢団の銀行破り》 -サイドボード(15)- |
というわけで黒単色のどっしりヘビーなコントロールデッキだ。
アルケミーの黒は手札を捨てさせるマシーンだ。環境を定義する1枚、《街追いの鑑定人》が相手の手札から最も重い=最も強い1枚を捨てさせる。
さらにはスタンダードでもお馴染み《強迫》《真っ白》とで、とにかく相手の手札を根絶やしにする。
ジャスト1枚という状況で《地底街の略取》を唱えれば捨てさせて空にしつつこちらに手札1枚という美味しい状況になるので、それを目指してとにかく捨てさせていくというスタイルだな。
まあそれだけだとさすがにがら空きになるので、黒の得意とするクリーチャー除去もモリモリだ。
対戦相手のパーマネントと手札をもぎ取るコントロール、それ自体はスタンダードでも見られるものではあるが、このアルケミー仕様のデッキがそれと比べて尖っている部分は、除去したり捨てさせるだけでなく、奪ってしまうというところ。
これだけ手札破壊があるのだからと《契約縛りの召使い、ガットモーン》を採用しているのが貪欲だ。
相手が手札を捨てれば捨てるほどこっちがそのコピーを得てホクホクになっていく。最初の能力で相手にもこちらのカードを渡す形になったり、自分のターンに血・トークンを生け贄に捧げると相手の手札が増えたりとちょっと使いにくい要素はあるのだが、ハマった時の決定力は本当にハンパない野郎だぜ。
そしてガットモーンと同じく手札を捨てれば誘発する能力を持つのが《恐怖の神、ターグリッド》。
相手が捨てたパーマネントをそのまま戦場に出すという素晴らしき強奪能力! これも実際に能力を誘発させるには合計でマナが必要だったり相手が除去を持っていたら介入されたりと、難易度は高いのだが……決まればもうその日は安眠が約束されたようなもの。
ターグリッドは手札だけでなくパーマネントの生け贄にも誘発してそれをイタダキするので、《絶望招来》と組み合わせて無茶苦茶してみたいところ。
《鏡割りの寓話》と《漆月魁渡》をセットで奪った時には、正直言って笑いが止まらなかった。
第2面の《ターグリッドのランタン》も、手札と盤面の資源を枯渇させた相手の首を真綿で絞める系のフィニッシャーとして機能してくれるぞ。相手を勝利から遠ざけて同時にこちらは近づいていく、コントロールにとっての理想的なストーリーを描いていこう。
《痛ましい絆》《地底街の略取》の登場でますます勢力を増していくアルケミーの黒系デッキ。最後に、これらのデッキへの対策として急激に使用率が増加したカードを紹介しておこう。《万物の姿、オルヴァール》だ。
この多相の戦士は戦場に出さず、手札に握っていることが黒いデッキへの牽制となる。《地底街の略取》《街追いの鑑定人》などで手札を捨てるように指示された際に、オルヴァールを捨てると……戦場のパーマネントのコピーであるトークンを生成することができる。
土地に化けてマナ加速、なんてのはかわいいもの。鑑定人で捨てさせられたらむしろコチラがそれのコピーを出して、相手の手札から強いカードを奪うという自滅に導けてしまう!
これがあるからサイド後は手札破壊カードの扱いが非常に難しい。オルヴァールをメインから忍ばせるリストも出てきたりと、スタンダードとは全く異なるカードがスポットライトを浴びているのはとても面白いなと、現在アルケミーにハマり中だ。
黒で捨てさせる側に回るか、あるいはオルヴァールでそれに対抗するか。ゲームはデッキ構築の段階から始まっている!
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