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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
《目覚ましい修復術》コントロール、そして遠い過去より蘇る《補充》の記憶(スタンダード&過去のフォーマット)
当コラムでも何度も何度も取り上げていることだが、マジックというゲームの素晴らしいところは過去と現在が繋がるということ(ということは現在と未来も繋がってるってこと)だな。
カードデザインから過去のカードのオマージュやリスペクトが感じられ、今の時代に会うように調整されてはいるものの在りし日のあのデッキを思い出させるデッキが生まれる……長く携わっていればいるほど、こういったエモーショナルな瞬間が訪れるんだ。
今日もそんな体験をしたので、それを皆にシェアするのもこのコラムの存在意義なので取り上げさせてもらおう。遠いあの日を知る人は懐かしいなぁと。知らない若い世代はそんな時代があったのかと考古学的な探求心で、楽しんでもらえれば幸いだ。
7 《平地》 5 《島》 4 《さびれた浜》 4 《連門の小道》 2 《皇国の地、永岩城》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 2 《天上都市、大田原》 -土地(26)- 4 《陽刃の侍》 4 《鏡殻のカニ》 -クリーチャー(8)- |
3 《蝋燭罠》 4 《監禁の円環》 4 《記憶の宝球》 4 《永岩城の修繕》 1 《精霊界との接触》 2 《発明的反復》 4 《ドゥームスカール》 2 《語られざるものの警告》 2 《目覚ましい修復術》 -呪文(26)- |
1 《蝋燭罠》 1 《レイ・オヴ・フロスト》 3 《霊灯の罠》 -サイドボード(5)- |
スタンダード・BO1の白青コントロール(サイドボードが5枚しかないのはそのためかな)……なのだが、リストにはちょっと、否、かなりクセがある。
目を惹くのはたっぷり採用された英雄譚を始めとするエンチャント。クリーチャー除去の面においても《蝋燭罠》《監禁の円環》を用いて構築が行われている。
またアーティファクトも《記憶の宝球》に《鏡殻のカニ》と、能動的に墓地に送ることが可能となっているものが採用されている。
これら独特のチョイスの理由は《目覚ましい修復術》。
墓地にあるエンチャントとアーティファクトを問答無用で全部戦場に出せるという、とんでもない効果を持ったヘビー級のソーサリーだ。
唱えるのは容易くはないが、ハマれば笑いが止まらない。ドローとして生け贄に捧げた《記憶の宝球》、打ち消しに用いた《鏡殻のカニ》などが戦場に飛び出し、他にもクリーチャー化して破壊されてしまった英雄譚や《永岩城の修繕》で捨てたカードをまとめて戦場にどどんと送り出し、一気にこちらが有利な戦場を作り出そうという魂胆だ。
大技のみならず《永岩城の修繕》で《記憶の宝球》を再利用するという小回りも効く設計で、相手の構成を捌いてから一転攻勢というコントロールの醍醐味を味わえそうなリストだ。
このデッキリストを見た時に、色や設計思想、そして《目覚ましい修復術》からなんとなく想起したのが古のデッキ「補充」だ。
その名の通りキーカードは《補充》で、このたった4マナで墓地のエンチャントすべてを戦場に出せるぶっ壊れソーサリーで強いエンチャントをどどんと戦場に並べてしまおうぜという、パワフルなコンボデッキたちを世に送り出した。
中でも印象深いのは『ウルザズ・サーガ』ブロック構築およびスタンダードで活躍した「パララクス補充」。当時は中学生だったのだが、あれから20年以上たっても白青2色のヤバいデッキとして強く印象に残っている。
2000年の世界選手権で5位に入賞したトム・ファン=デ=ロト/Tom van de Logtのリストは、金枠(銀枠と同じく公式フォーマットで使用することができない)の特別なカードとして構築済みデッキが販売されたので特に思い出深いものだなぁ。
9 《島》 8 《平地》 4 《アダーカー荒原》 4 《リシャーダの港》 -土地(25)- -クリーチャー(0)- |
1 《空色のダイアモンド》 3 《悟りの教示者》 1 《神秘の教示者》 1 《退去の印章》 3 《対抗呪文》 1 《エネルギー・フィールド》 1 《浄化の印章》 4 《調律》 4 《大あわての捜索》 4 《オパール色の輝き》 4 《パララクスの波》 3 《パララクスの潮流》 1 《神の怒り》 4 《補充》 -呪文(35)- |
3 《消去》 2 《目くらまし》 2 《軽快なリフレイン》 1 《寒け》 1 《黒の防御円》 1 《呪われたトーテム像》 1 《浄化の印章》 2 《神の怒り》 2 《水没》 -サイドボード(15)- |
上記がその「やべーデッキ」として当時の中学校同級生のコミュニティで恐れられたリストだ。
その頃の僕らは、ここでもたびたび思い出話を書かせてもらっているが、お小遣いで何とか手に入れたパックから入手したカードをどんなものでもとことん使い尽くすくらいにはカードが揃わない中で、試行錯誤してデッキを組んでいた。雑誌で最新デッキの情報は得るが、レアで固めれた競技レベルのデッキは夢のまた夢……
そんな中、たまたまマジックプレイヤーのお兄さんが僕らのコミュニティに声をかけてきて、僕の友人に対してその人の使っていた「補充」デッキのほとんどのパーツを譲渡してくれるという事件が起きた。僕はその場には居合わせなかったのだが、どうやら進学か何かで引退するということだったようで、自分のデッキを若い世代に託して去っていったのだ(その友人の持つドラゴンのカードとトレードしていたので、引退後に眺めるコレクション用のカードが欲しかったのかな)。
そんなわけである日突然グループの中に現れたのがこの「パララクス補充」。感想としては……つ、強すぎて手も足も出ない……。完膚なきまでに叩き潰されるとはまさにこの経験を言うのだろう、僕らのお手製デッキではどうにもならなかった。今となっては良い思い出だが、当時は本当に悔しかったなぁ(笑)。
デッキとしては先のスタンダードの《目覚ましい修復術》デッキよりもさらにコンボに特化しており、《対抗呪文》《神の怒り》《エネルギー・フィールド》でコントロール的に立ち回れるが、いち早くコンボを決めて勝ってしまおうという攻めのデッキである。
《大あわての捜索》《調律》でカードを引いては捨てるを繰り返す。手札の枚数は増えないが、ライブラリーを掘り進んで決め技の《補充》やそれに繋がる《神秘の教示者》などを引き込みにかかる。
その過程で捨てたエンチャントをまとめて墓地から戦場に戻してゲームを終わらせる。大量のエンチャントが戻る中、《オパール色の輝き》がエンチャントをクリーチャーへと変貌させる。
エンチャント軍団で殴ってゲームエンドというわけで、いきなり4/4が大量に並ぶという光景は当時の僕らのデッキでは正直どうしようもなかったな。
より大きいクリーチャーを並べて対抗しようとしても、それは《パララクスの波》に阻まれる。
このエンチャントは消散カウンターをコストにして一時的にクリーチャーを戦場から追放してしまうもの。ブロックなど許さずにまとめてどかしてワンパンぶちかますフィニッシャーであり、またコンボが決まるまでに殴り勝とうとするこちらのクリーチャーを食い止めて時間稼ぎをするコントロール手段でもある。
では《燎原の火》なんかでまとめて吹っ飛ばすのはどうだろう? これも《パララクスの潮流》が許可してくれない。
こちらの土地を4枚ほどまとめて追放し、使えるマナを縛って一切の抵抗を許しはしない無慈悲さを見せつける。これも波と同様にコンボに至るまでの時間稼ぎを果たすものでもあり、パララクスカードはどちらも消散カウンターがなくなることで勝手に墓地に落ちる。
これを《補充》で釣り上げて再利用するってわけで……思い出しただけでも当時の絶望がアリアリと脳裏に浮かぶね(笑)。生まれて初めて「手も足も出ない!」と悲鳴を上げてしまったデッキと出逢ってしまった。あの日のことは、いくつになっても忘れることはないだろう。
そんな思い出の「パララクス補充」ほど無茶苦茶なデッキというわけではないが、《目覚ましい修復術》デッキは遠いあの日を思い出せつつ、記憶の中のデッキと似通った挙動であの頃のマジックとそして自分自身が、今の自分に繋がっているものだと思い出させてくれる。どちらも良いデッキだ。
最新のデッキを回し研究する傍ら、各々の思い出のデッキをまた押し入れから引っ張り出してきて遊んでみるってのも、有意義な時間なのではないかな。
さあ、今日もマジックをプレイして、未来のデッキ、未来の自分に繋げるとしようか。
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