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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:禍我シュート(過去のスタンダード)
まいど! クールな金曜日の到来や!
というわけで今週も始まりますよCool Deckのコーナー。私、岩SHOWが独断で「これはクールだ!」と感じたデッキを紹介していくわけですが……タイミング的にね。谷間の期間というか、『神河:輝ける世界』リリース前に書き、公開されるのはMTGアリーナでのリリース直前。毎度毎度、正直言ってネタを捻出するのに苦しいタイミングだ。この弱音、not coolかもしれないがまあ切実なわけで。
そういうことを周りに相談しても良いだろうなと、最近では公の場でネタを求めることもある。やっぱり1人で考えるより、皆の柔軟な脳みそを共有してもらう方がクールな結果につながるからね。
そこで「この間のエクテンのやつとか面白かった」とコメントしてもらえた。確かにこういう時こそ、マジックの膨大な歴史に眠るクールな遺物に頼ってみるのが良いかもしれない。いやそうすべきだ!
と、良い意味で開き直った所存。過去を遡るのであれば、やはり現在や未来とリンクさせたいところ。なので以前の神河時代のデッキを紹介しよう。
そんなわけで配信やりつつ皆で過去のデッキを振り返っていたのだが……断トツでインパクトを放つリストに注目が集まった。ああ、確かにこれはクールなデッキだ。
唯一無二とも言える納得の異形っぷり、そのクールさを後世に伝えるぜ。
10 《森》 10 《島》 1 《沼》 1 《山》 -土地(22)- 4 《桜族の長老》 4 《幻の漂い》 1 《現し世の裏切り者、禍我》 -クリーチャー(9)- |
4 《師範の占い独楽》 4 《交錯の混乱》 4 《差し戻し》 1 《ブーメラン》 4 《早摘み》 4 《春の鼓動》 4 《木霊の手の内》 1 《強迫的な研究》 1 《喚起》 1 《奇妙な収穫》 1 《火想者の発動》 -呪文(29)- |
4 《殴打蔦の葛》 3 《素拳の岩守》 2 《曇り鏡のメロク》 1 《潮の星、京河》 1 《紅蓮地獄》 3 《大竜巻》 1 《梅澤の十手》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
伝説的なエピソードも持つプロツアー・ホノルル2006。
知らない人のために補足すると、プロツアーというのは今でいう○○チャンピオンシップなどの前身。かつて年に4回ほど、世界各地を巡る形で招待制&賞金制のトーナメントが開催されていた。このプロツアーの舞台に立つことが競技プレイヤーの夢・目標であり、またプロツアーに継続参戦し賞金を得ている者をプロプレイヤーと呼び憧れたものである。
そんなプロツアーのひとつである同大会はフランスのルーエル/Ruel兄弟が揃ってトップ8に入賞したり、その弟オリビエ/Olivierが対戦相手のクレイグ・ジョーンズ/Craig Jonesに「(引くカードを)見るな、叩きつけろ!」と舞台を整え、そこに叩きつけられたのは勝負を決める《稲妻のらせん》という劇的なトップデックが炸裂したりと、忘れられない大会となった。
スタンダードで争われた同大会、トップ8進出デッキの顔ぶれもバラエティ豊かであり、今振り返ってもどのデッキも色あせないクールさを誇っている。
その中でも他と明らかに異なる構成をしていたのが、この「禍我シュート」だ。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:基本土地オンリー!?
デッキ名の通り、勝負を決めるのは《現し世の裏切り者、禍我》。
X個の+1/+1カウンターとともに現れ、X点のライフを失わせる能力を持つこのクリーチャーで、対戦相手のライフをゴリッと削り切って勝利するのを狙う、コンボデッキである。
禍我で一発勝利を狙うのであれば{B}{B}{B}と20マナ以上が必要になる。なかなかに条件が厳しいが、それを支えるさぞや立派なマナ基盤を……と土地を確認すると衝撃を受ける。
まるでシールドデッキのなりそこないのようなマナ基盤で、これがスタンダードのプロツアーのトップ8に名を連ねているのは過去の歴史を振り返っても異質極まるものである。単色のアグロでも何らかの基本でない土地を入れてその恩恵を受けるものだからねぇ。
こんなクールな土地構成になっているのは、このデッキのマナ製造エンジンに理由がある。このデッキは英語圏では「Heartbeat」コンボと呼ばれる。《春の鼓動》のことであり、このエンチャントは土地から得られるマナを1つ増やす。
これで山のような基本土地から得られるマナを増やしつつ、《早摘み》を自分を対象にして唱える。
このインスタントは基本土地をすべてアンタップさせてくれるので、そうやって起こした土地からさらに大量のマナを得る。そのマナで《春の鼓動》を追加したり、《早摘み》をおかわりしたり。この工程を何度か重ねて、相手のライフを奪い尽くせるマナを注いだ《現し世の裏切り者、禍我》でフィニッシュするのである。決着方法、ド派手にも程があるクールさだって!
《早摘み》のために基本土地でガチガチに固められた構成は、《踏み鳴らされる地》などの多色土地や《ウルザの塔》などの特殊な挙動を見せる土地を搭載した他のトップ8入賞デッキと並ぶことでそのクールさがより際立つ。そもそも禍我のための{B}{B}{B}を《沼》1枚から得ようとするその精神、そしてそれを実現させる鼓動コンボの恐ろしさよ。
基本土地で固めることには他にも利点がある。『神河物語』が誇る強力な土地サーチ、《桜族の長老》と《木霊の手の内》。
これらがあれば、正直なところ欲しい色マナが見つからないということもなく、序盤からガンガンとマナ加速して対戦相手とマナの差をつけることが可能となる。
基本土地だけのデッキに不自由がある、というのはこの時期のスタンダードにおいては存在しないも同然の固定観念であったわけだ。クールな時代だなぁ。
クールポイントその2:誰にでもなれる0/5
このデッキを体現する、クールな象徴的1枚。それが《幻の漂い》。
3マナ0/5防衛・飛行、ただの壁役にしか見えないが……「変成」という能力に注目。これを手札から捨てることで、同じマナ総量のカードを手札に加えられるという特殊なサーチ手段である。能力であるので普通の打ち消し呪文に引っかからない便利なものであるが、このデッキではコンボを成立させるのになくてはならない存在とも言える。
コンボパーツを見てみよう。《春の鼓動》に《早摘み》、どちらもマナ総量は3だ。決め手の《現し世の裏切り者、禍我》も唱えられていない時のXは0扱いなのでマナ総量は3、もうひとつの決め手でありコンボを繋げるためのドローにもなる《火想者の発動》も同じく3。
動き出したコンボを途切れさせないように《強迫的な研究》を持ってきたり、下準備するために《木霊の手の内》を確保したり……驚くほどデッキのさまざまなカードにアクセス可能となっている。
そんなサーチ手段が、アグロデッキ相手にはいざとなればタフネス5という圧倒的な硬さでライフを護る壁として立ち塞がる。特に赤系のアグロに対しては除去1枚で沈むことはほぼなく、戦闘ダメージ+《稲妻のらせん》や《黒焦げ》といった合わせ技でようやく、というところ。これだけダメージを防いでくれれば十分すぎる活躍、そうやって稼いだ時間でコンボを決めて勝利するだけだ。
こういうコモンカードがデッキの中核を担っている、それってクール以外に表現のしようがあるかい?
クールテクニック!
勝つためにはあえてコンボを捨てる選択肢も。サイドボードには《殴打蔦の葛》《素拳の岩守》などコストパフォーマンスに優れたクリーチャーの姿が。
これらをコンボパーツと入れ替えることで、サイド後にはビートダウンで勝利する中速デッキに変形するという、マジックプレイヤーがいかにも好みそうなクールなテクニックを備えている。
相手クリーチャーとの殴り合いに勝利するために。小物を粉砕する《紅蓮地獄》や《梅澤の十手》を用いることになるが……そんなカード1枚だけ入れてて大丈夫かって?
問題ないんです、そこも変成です、と言わんばかり《交錯の混乱》が主張する。
メインのコンボも変成、サイド後の変形プランも変成で支える……なんともクールかつビューティフル。
クールなまとめ
元祖神河時代のスタンダードより「禍我シュート」を紹介させてもらったが……この時代のデッキは、リストを見ていてワクワクするものが本当に多いね。また近々、かつての神河が作り上げたデッキを紹介しよう。
『神河:輝ける世界』のカードも、先輩方を上回るようなインパクトをスタンダードに刻み付けてくれることに期待している。それじゃ今週はここまで。Stay cool! Increase your heartbeat!!
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