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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
オルゾフ・シャドウ:ワイルドカードのやりくり日記(ヒストリック)
MTGアリーナをやっていると実に悩ましいことがある。単刀直入に言おう――ワイルドカードが足りない!
「ワイルドカード」はアリーナ内に存在する、定められたレアリティのカードと交換できるアイテムのこと。新セットリリース直後など、あのレアもこの神話レアもどれもが魅力的に見えるもので……嗚呼、試したい! パックから出たカードでは足りない! という時にこのワイルドカードを使って欲しいカードを揃えることになる。
ワイルドカードを手に入れるにはパックを剥き続けたり、イベントに勝利して景品として獲得したりという方法がある。
強いカード、デッキを見定めてイベントで各種イベントで勝利を重ねてパックやワイルドカードを大量に手に入れる競技志向のプレイヤー、構築を始める前にドラフトなどをひたすらにプレイし続けてワイルドカードなんか不要なくらいにカードを収集するリミテッド勢、そういった層はこのワイルドカード切れとはもしかすると縁遠いかもしれないが……スタンダードもアルケミーもヒストリックもプレイして、良いなと思ったものは全部試したいカジュアルプレイヤーにとっては、このワイルドカードというものは結構な問題である。
せっかく貴重なアイテムを消費して手に入れたカードとは、上手く付き合っていきたいもの。減価償却ってわけじゃないけど、遊んでナンボだ。
僕もつい先日、ずっと持っていなかったあるカードをどうしても試したくなり……イニストラード2セットにアルケミーと、3つの要素で枯渇していたワイルドカードの最後の最後を切ってある神話レアを手に入れた。《スカイクレイブの災い魔》だ。
今さらと思われるかもだが、パックからどうしても出てこず今日に至っていたもので……そして最近、ヒストリックでこのカードに立て続けに殴られたことで使ってみたいなという気持ちが高まり、文字通り切り札を使うことにしたってわけだ。
《スカイクレイブの災い魔》はゲーム中、ライフが多い方のプレイヤーのそのライフ量を20から引いた値のパワーとタフネスを持つ。理論上2マナで20/20にもなるわけだが、まあどちらのプレイヤーもライフ0で生きているのであればもはやゲームはクリーチャーのサイズで争うものではなくなってるな(笑)。
このクリーチャーのポテンシャルを引き出すには、対戦相手のライフを減らしつつ、こちらもライフが減っていなければならない。一方的な攻めだけでは、ずっと2/2とか2マナに見合った大人しいカードのままだ。
したがって自らのライフを失うデメリットのついたカードと併用することになる。幸い黒にはそういうカードがたっぷりとある。昔から「俺も痛いがお前も苦しめ」を体現し続けているカラーだからね。
マナ効率や使い勝手が良いものの代償としてライフを差し出す。そういった黒い自滅的なカードを重ねてライフを吐き出しつつ、優れたクリーチャーで相手のライフも失わせていく。
この戦術で一大アーキタイプを築き上げたのが《死の影》だ。
こちらは1マナ13/13、自分のライフ分サイズにマイナス修整がかかるという能力で、ライフがひと桁になれば1マナではおよそ得ることのできないバカげたサイズの怪物を降臨させることが可能となる。
モダンやレガシーで大人気の《死の影》デッキは、現在《スカイクレイブの災い魔》との二段構えが基本となっている。そしてそれはヒストリックでも同様で、この2マナ以下の癖の強いハードパンチャーを相棒《夢の巣のルールス》でバックアップするのが定番だ。
とりあえずこれらのカードとライフを失う手段とで黒は固定として、純粋な黒単でも良いが、何らかの色でやれることを増やすのがスマートな運用だ。
ヒストリックで僕が立て続けにマッチアップしたのは、白を足しているタイプ。白には低コストに優秀なクリーチャーが多いのは言うまでもなく。《エスパーの歩哨》や《無私の救助犬》などで死の影軍団を更にサポートしようという魂胆だ。
特筆すべき存在としては《アダントの先兵》も忘れてはいけない。
破壊不能を得てしぶとく攻めるコントロールデッキへのキラーカードだが、その能力の起動に4点という大きなライフを支払わなければならない。
いや、逆に考えるんだ。4点も失うことができる、と。このアダントにライフをガンガン支払って、《死の影》で相手のライフを削ることで《スカイクレイブの災い魔》も肥大し、ついでに4点というライフ減少は《漆黒軍の騎士》も誘発させる……美しいシナジーであるなぁ。
これを体感したかったので災い魔にワイルドカードを費やし、いざデッキを組んで使ってみたのだが……か、勝てない。ライフを減らした勢いのままに圧倒されてしまうケースが多々。《死の影》デッキは昔から難易度の高いデッキではあったが、ヒストリックのこれは思っていた以上に綱渡りだ。
思わず諦めてしまいそうになったが、せっかく使ったワイルドカードだ、元を取るまではやめられん!と変なスイッチがONに。とりあえずは先人の知恵を借りたいと、ヒストリックの大会にて入賞したもやランク戦で活躍したものなど、各種リストを眺めていると……これは良さそうだ、なんだかグッと感じるものがあるリストに遭遇した。
4 《神無き祭殿》 4 《陽光昇りの小道》 2 《磨かれたやせ地》 1 《静寂の神殿》 1 《砕かれた聖域》 4 《イフニルの死界》 2 《シェフェトの砂丘》 1 《目玉の暴君の住処》 -土地(19)- 4 《死の影》 4 《漆黒軍の騎士》 4 《エスパーの歩哨》 2 《無私の救助犬》 4 《アダントの先兵》 4 《光輝王の野心家》 4 《スカイクレイブの災い魔》 -クリーチャー(26)- |
4 《思考囲い》 3 《致命的な一押し》 2 《コジレックの審問》 3 《冥府の掌握》 3 《アガディームの覚醒》 -呪文(15)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 4 《静寂をもたらすもの》 2 《封じ込める僧侶》 2 《ポータブル・ホール》 1 《魂標ランタン》 2 《真っ白》 1 《魔女の復讐》 2 《欲深い衝動》 -サイドボード(14)- |
というわけで「オルゾフ(白黒)シャドウ」デッキのサンプルとなるリストだ。
《思考囲い》《冥府の掌握》《アダントの先兵》とライフを失うカードはバッチリ、土地も《地下遺跡、アガディーム》や《イフニルの死界》など、とにかくライフを失える陣容で固めてある。
ここまでは僕のイメージする「オルゾフ・シャドウ」そのものだが、ひとつ気になるチョイスがこのリストにはあった。《磨かれたやせ地》である。
他のほとんどのカードがライフを自ら放棄するものの中、この土地だけは「ライフを得る」と書かれている。たかが1点、されど1点。他のカードとは明らかに正反対のベクトルに向かうカードの存在は、際立って目を引くものだった。
なぜこの土地が入っているのか? その答えは自然と分かった。このデッキにはライフを失うカードはしこたまあるが、相手のデッキによっては想定よりもライフが減ってしまい、ピンチに陥ることがある。事実そうして負けてきたのは先述の通りで、そんな中たった1点でも回復することで、打点は保ったままぎりぎり紙一重の勝負を制する……そういう狙いがあっての採用ではないだろうか。
こういうところにアツくなるのはデッキリストを普段から見過ぎている反動かもしれないが、なんかこんな細かい部分に、グッときちゃうんだよなぁ。
《光輝王の野心家》も自分の中では完全に頭から抜け落ちているチョイスだったので、これもなるほどと。
《エスパーの歩哨》《アダントの先兵》とも好相性で、影&災い魔を引けない時の打点不足という弱点をカバーしてくれている。サイド後、「バーン」など相手にした際にはライフを放棄するカードを減らして絆魂持ちの《静寂をもたらすもの》を育て、むしろしっかりライフを得ていく戦い方にシフトできるのも良いね。
というわけで今回は「ワイルドカードを使ったらただじゃ転ばないぞ」の精神で見つけ出した「オルゾフ・シャドウ」のリストを紹介させてもらった。これを参考に、災い魔というカードをじっくり骨までしゃぶりつくそうと考えている。
皆も新セットでワイルドカードを使ったは良いが、勝てない……と挫折することもあるかもしれない。そんな時は諦める前に、誰かのリストから学べるものがないか、広大なネットを探索してみよう! 使いたいと思ったカードを手に入れ、それを楽しむ。皆のワイルドカードがひとつでも良い出逢いにつながりますように!
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