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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
メイヤーオース:エクステンデッドの記憶(過去のフォーマット)
SNS上でこのような質問を受けた。「一番好きなエクテンのデッキはなんですか?」
良いパスだ、ちょうどネタが欲しかったところでね。
「エクテン」と言われても若いプレイヤーにはわかりようもないよね。これはかつて存在したフォーマットのことで、正式名称は「エクステンデッド/Extended」。意味としては「拡張」となり、これはスタンダードと対比した場合のフォーマットの様子を意味している。
スタンダードには年に1度のローテーションがあり、カードプール(使用可能なカード)には限界がある。エクステンデッドにも同じくローテーションが存在するのだが、それはスタンダードのものよりも緩やかであり、そのためかなり広大なカードプールを誇っていた。
セットが出るたびに文字通りフォーマットが拡張されていく一方で、どんどん使えるカードが増えてデッキの幅も拡がっていくと。そのためちょっと懐かしいカードで遊べるということから人気の高いフォーマットだった。かつては特別に《Volcanic Island》などのデュアルランドが使える期間が設けられていて、この至高の2色土地を使いたいがためにこのフォーマットを遊んでいたプレイヤーも少なくなかった。
競技シーンでも多く採用され、カジュアルプレイでも愛されたエクステンデッドではあるが、時の流れとともにルール変更で広大なカードプールが徐々に狭められていき、ローテーションの頻度もスタンダードと変わらなくなった。ちょっと拡張されたスタンダード、くらいの位置付けになった後、新たに制定されたモダンにその立場を譲り、エクステンデッドは廃止となった。
しかしながら今でも「○○時代のエクテンではどのデッキを……」などとベテランプレイヤーの間でも話題に上ることがあり、完全に忘れ去られてはいない。思い出は永遠に拡張されていくのだ。
カッコつけ終わったところで、本題。エクテンで好きだったデッキねぇ。
結局のところ、僕自身エクテンと聞けば、やっぱり「デュアルランド期」と呼ばれる時代を思い浮かべてしまう。『メルカディアン・マスクス』のリリースによりローテを受けた環境であり、マジック黎明期の古いセットは退場。『アイスエイジ』以降のセットと、先述のようにローテ落ちしたカードの中でも特別にデュアルランドだけが使用可能だった時代だね。
当時はまだ中学生なので、スタンダードのデッキも満足に組めなかったが……手持ちのカードで頑張ってデッキを組んで、『アイスエイジ』など僕らの知らない時代のカードを堪能したものである。
当時このフォーマットに興味を持ったのは、マジックを取り扱う雑誌で2つのデッキによる激闘が取り上げられていたことが大きい。プロツアー・シカゴ1999の決勝戦、ボブ・メイヤー/Bob Maher(後述)の《ドルイドの誓い》デッキと、対するはブライアン・デイヴィス/Brian Davisの「ネクロ・ディスク」。
この後者のデッキは当時の僕でも知っていた。《ネクロポーテンス》の圧倒的なドローパワーで常に手札を満たし、ライフが支払えなくなったら《ネビニラルに円盤》で盤面をリセットするのに巻き込んで破棄、ドロー・ステップを飛ばすデメリットから抜け出す脱法エンジンを持った恐ろしいデッキだ。このコンボはマジックを始めた当初『基本セット第5版』の目玉でもあり、さまざまな雑誌で紹介されていたからね。
対する《ドルイドの誓い》デッキは何をするのかよくわからない。デッキ紹介記事を何度も読み込んだのが懐かしい。
誓いを意味するオースから、このデッキは「メイヤーオース」として紹介されていた。メイヤーとはMaherの当時の日本語表記である(今はマーハー)。メイヤーの手によって作られた、オリジナル要素あふれるオースデッキというわけだ。デッキに自分の名前がつくというのもなんだかカッコ良く見え、そしてその独特な構成にも胸をときめかせたものだ。
そんなわけで長くなったが、今日のデッキはエクテンで僕が一番好きなデッキ、「メイヤーオース」を紹介だ!
4 《Tropical Island》 4 《Tundra》 2 《Volcanic Island》 1 《Savannah》 3 《氾濫原》 1 《反射池》 3 《樹上の村》 1 《フェアリーの集会場》 4 《不毛の大地》 -土地(23)- 1 《スパイクの飼育係》 1 《陶片のフェニックス》 1 《変異種》 -クリーチャー(3)- |
4 《渦まく知識》 4 《悟りの教示者》 2 《剣を鍬に》 1 《撹乱》 4 《対抗呪文》 3 《衝動》 2 《ガイアの祝福》 2 《ドルイドの誓い》 1 《無のロッド》 1 《火薬樽》 1 《森の知恵》 1 《交易路》 1 《沈黙のオーラ》 1 《禁止》 1 《豊穣》 1 《象牙の仮面》 4 《意志の力》 -呪文(34)- |
1 《平和の番人》 1 《火口の乱暴者》 1 《ファイレクシアの炉》 1 《剣を鍬に》 2 《ドルイドの誓い》 1 《赤の防御円》 1 《たい肥》 1 《ガイアの祝福》 1 《火薬樽》 1 《聖なる場》 2 《枯渇》 1 《沈黙のオーラ》 1 《日中の光》 -サイドボード(15)- |
まずはオース・デッキの基礎知識を。
《ドルイドの誓い》はコントロールしているクリーチャーが少ない方のプレイヤーが、対戦相手に追いつけとライブラリーからクリーチャーを戦場に出せるエンチャントだ。その際にはライブラリーの上からクリーチャーカードが公開されるまでめくり続ける。そうやって公開されたクリーチャーを戦場に出し、その他のカードは全部墓地に落ちる。
クリーチャーをマナなしで出せるメリットを享受するためにライブラリーがスッカラカンになるリスクを背負うことになるが、この問題点を《ガイアの祝福》でカバーする。
自動的にライブラリーが修復されて、これでカードが引けずに負けるという事態を回避。
また、そこから出てくるクリーチャーにも《スパイクの飼育係》や《陶片のフェニックス》を採用。
プレイヤーに何かをもたらしつつ自ら墓地に落ちることのできるクリーチャーなので、《ドルイドの誓い》が対戦相手にクリーチャーを提供するという状況も回避できる仕様になっている。
最終的には当時のクリーチャーとしては最高の品質を誇っていた《変異種》を出し、この除去耐性と高い打点、飛行を併せ持ったクリーチャーで殴り勝つのを狙う。
《樹上の村》などクリーチャー化する土地でも誓いを気にすることなく攻められるのが強みだ。
誓いと祝福、そしてクリーチャー以外の部分は概ねコントロールデッキに必要なもので構成される。青の打ち消しとドロー、白のクリーチャー・エンチャント・アーティファクトへの除去だ。
そしてここからがメイヤー式。このデッキでは《ドルイドの誓い》の枠を2枚に抑えてデッキ内のコントロール用カードのスロットを拡張。パーマネントなどに対処したり、アドバンテージを稼いだりするカードを1枚ずつ挿し、それらと誓いを《悟りの教示者》で状況に合わせてサーチするという方式を取っている。
アーティファクト・デッキには《無のロッド》や《沈黙のオーラ》といった具合に、狼男に対する《銀弾》のような特効薬をサーチしてきてぶつける戦術を「シルバーバレット」と呼ぶ。
中でも決勝戦、「ネクロ・ディスク」の《堕落》《生命吸収》を無力化させる《象牙の仮面》はまさしく決勝打となる一手であった。
この1枚挿し構成をメインとサイドに備えたオースという点が「メイヤーオース」のオリジナリティだ。
実はシンプルな好き度で言えばその対戦相手「ネクロ・ディスク」の方が好きだったりするのだが、今回は伝説の決勝戦を勝利した「メイヤーオース」を取り上げさせてもらった。またこんな感じで古い時代のデッキも取り上げていこうと思うので、要望などあれば声かけてちょうだい!
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