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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:黒単パラドックス(ヒストリック)
やってきました今週も。あなたの心のオアシス……かどうかはわからないが、クールなデッキをお届けする当コーナーのお時間だ。今週も冷え切った冬の空気に負けないくらいのクールなデッキを見つけてきたぜ。
改めて、何にクールを感じるかを振り返る(毎回やっている気もする)。カードとは、つまるところ紙である。縦約9㎝、横約6㎝、厚さは0.3mmあるかないかくらいか? この小さく薄い紙が、さまざまなことを起こす。対戦してゲームを楽しめる、人と人の繋がりを作る、手に汗握る激闘とその先の感動を呼び起こす。これだけでもう、クールすぎるんだよな。
そんなただでさえクールなマジックのカード、さらにクールを体感するには……予想を裏切ることがキーになってくるかもね。一見何をするかわからないカードが光り輝く時こそ、誰もがエキサイティングする瞬間だというのはマジックの歴史が証明している。
そんな予想を裏切るものの中でも、やっぱりコンボは良いものだよな。思いもよらぬカードの組み合わせが、必殺のコンボとして火を噴く時……僕らは大いにワクワクするのである。これぞクール体験、僕がマジックに追い求めているもののひとつだ。
そんなわけで今日はコンボデッキの紹介だ。まさかこの2枚が組み合わさるとは……初見の際にはなるほどなと、文字通り感動を覚えたものである。それじゃあリストを見てみよう。
10 《沼》 4 《光輝の泉》 4 《埋没した廃墟》 2 《産業の塔》 1 《大瀑布》 1 《廃墟の地》 1 《発明博覧会》 1 《スコフォスの迷宮》 -土地(24)- 4 《不吉な旅人》 3 《アーチリッチ、アサーラック》 -クリーチャー(7)- |
2 《致命的な一押し》 4 《冷鉄の心臓》 4 《守護像》 4 《精神石》 4 《面晶体の記録庫》 4 《書庫の鍵》 3 《パラドックス装置》 4 《大いなる創造者、カーン》 -呪文(29)- |
1 《トーモッドの墓所》 1 《保有の鞄》 1 《秘儀大全》 1 《霊気貯蔵器》 1 《火想者の器》 1 《見捨てられた碑》 1 《パラドックス装置》 1 《次元橋》 -サイドボード(8)- |
このクールなデッキは?
ヒストリックの「黒単パラドックス」だ。その名の通り《パラドックス装置》がキーカードである。
このカラデシュ次元製の伝説のアーティファクトは、初出以降一部の人々のハートを鷲掴みにし続けているクールな1枚だ。
土地以外のパーマネントをすべてアンタップする、そのシンプルな一文がどれほど恐ろしいことか。タップすることで何かを行うパーマネントなど、それこそ数千と存在するわけで、この装置はそれらすべてとシナジーを形成するのである。
このクールな能力で狙うのは、まずはマナを継続して得ることが思いつく。呪文を唱えるたびにパーマネントをアンタップするので、マナを出すクリーチャーやアーティファクトから捻出したそれで呪文を唱え、そしてそれらをアンタップしてまたマナを得て……とループを形成することが可能だ。
いつまでも呪文を唱え続けられるというわけだが……その呪文=手札を得る工夫が必要になってくる。ではそのあたりを解説していこう。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:無限へと続くパラドックス
まずはこのパラドックス・デッキのマナ基盤で大きく強化された点から。ヒストリック環境にはマナを出すアーティファクトが多種多様存在することはこのリストを見ても分かるが、そこに加わった超新星が《書庫の鍵》。
ミスティカルアーカイブのカードが手札に加わるパワフルな1枚であるが、この鍵がマナ・アーティファクトとして非常に優れているのは「色マナが得られる」という点である。これまでの実用的な色マナ生産カードは《冷鉄の心臓》くらいだったので、鍵の参入は大いにクールな追い風である。《時間のねじれ》が手に入ればコンボまでの時間をガッツリ稼げるし、《悪魔の教示者》でコンボパーツをサーチしたり《新たな芽吹き》で拾うという動きもクールだ。
では、鍵が加わり色マナが得られるようになったアーティファクト陣を並べ、パラドックスを設置し、どうやって手札を連打するか。
これに対するシンプルなアンサーはこのデッキが黒い理由である《アーチリッチ、アサーラック》だ。
アサーラックはダンジョンを探索できる能力を持つが、同時に「魂を喰らう墓」というダンジョンを踏破していないのであれば手札に戻ってしまう。
この戦場に出られないデメリット的な能力も、パラドックスと交わればクールなメリットとなる。{B}を含む3マナがアーティファクトから得られる状況でパラドックスとアサーラックが揃う、これすなわち「魂を喰らう墓」以外のダンジョンは好きなだけ探索できるということ。アーティファクトからマナを得て、アサーラックを唱えてアーティファクトがアンタップ、アサーラックで探索して手札に戻り、これを望むだけ繰り返すまでだ。
「ファンデルヴァーの失われた鉱山」というダンジョンには「暗黒の泉」という部屋があり、ここを探索すると対戦相手のライフを1点奪うことができる。つまりアサーラックにこの鉱山を何周も走ってもらって、1点1点1点……と積み重ねてライフを削り切って勝利するのだ。奇妙なエンジンを前に走り回る、至高のリッチ……クールな光景だぜ。
このダンジョンはカードを1枚引いてしまうという部屋がゴールである都合上、ライブラリーの枚数分しかライフは吸い取れない。通常のゲームであれば問題ないだろうが、相手がとんでもなくライフを回復するデッキの場合は足りない可能性がある。
その時は《大いなる創造者、カーン》から《霊気貯蔵器》を持ってきて、アサーラックが出入りするたびにこれでおびただしい量のライフを得て、50点ダメージを連発するという大技もある。
この徹底したコンボで勝つという姿勢こそ、クールと呼ぶにふさわしい。
クールポイントその2:不吉なパラドックス
《パラドックス装置》メインに3枚、サイドに1枚と分けることでカーンから引っ張ってこれるようにして、メインデッキに実質7枚採用しているように水増ししている。
では、同じくコンボパーツであるアサーラックの枠も他にカードが欲しいところ。ご心配なく、アサーラックと同じくカード1枚で連鎖を生みだしつつも、ベクトルが異なるクールな1枚があるからね。それが《不吉な旅人》!
一見、コンボデッキとは縁のなさそうなクリーチャーである。その名の通り、人間にとって敵となる狼男・吸血鬼・ゾンビにスピリットといった面々が手に入り、それらのカードを唱えると手札に戻るという能力。旅人がローブを脱ぐとその正体はなんと……というクールなフレイバーを表現しているんだろうね。
さて、もうわかったかな。この旅人は手札に創出したクリーチャーを唱えると手札に戻る。戻った旅人を唱えて、アーティファクトをアンタップ。旅人が出て手札を創出。それを唱えてアンタップ&旅人回収、再び旅人を……というループが可能だ。
こちらはループの間にドローを挟まないので、戦場に出せるクリーチャーの限界値に達するまで回し続けることが可能となっている。《霊気貯蔵器》と組み合わせれば狂ったようなダメージが叩き出せる、クールの究極系のようなコンボである。
旅人単体でも、大量のクリーチャーを並べることでフィニッシュまで持っていくことが可能である。《威圧する吸血鬼》をタップリ得て速攻をつけまくって勝ち、コントロールなどの相手にはゾンビを並べまくって《首無し騎手》で《神の怒り》などの全体除去があっても返しのターンには殴り勝てるという盤面を作って圧倒しても良いね。
この《不吉な旅人》を初めて見た時には、とてもじゃないが《パラドックス装置》のことなど考えもしなかったなぁ。これに気付いてデッキを作った人々全員がクールピープルだ。
さらなるクールのために
このリストはミシック上位に到達したという報告とともに載せられていたものだが、僕がそれを目にした時にはサイドボードは8枚までしか判明していない。どうやらBO1専用のリストとして作ってあるようなので、BO3で使うには他にアーティファクトを足した上で追加の除去など、アーティファクト以外のカードも採用するとクールに仕上がるだろう。
元のリストで気になる1枚は《秘儀大全》。
3マナタップで1枚ドロー、これをパラドックスが完成している状況下でカーンで引っ張ってきて、マナを得てはドローして起こしてを繰り返すのを狙っているわけだ。
構築で使用されているところをほとんど見たことがないカードなので、なんともクールに見えたねぇ。こういうカードチョイスができるビルダーになりてぇもんだなぁ。
クールなまとめ
《パラドックス装置》に《書庫の鍵》、《アーチリッチ、アサーラック》と《不吉な旅人》……一見無関係なカードを組み合わせることで必殺のコンボに仕上げる。これぞマジックのクールな楽しみ方、お手本とも言えるリストだったね。
神河が到来する前にもまだまだこんなにクールなデッキがある。この先のことを考えると、クール成分摂取過多を心配するレベルだな。それじゃ今週はここまで。Stay cool! Break through the paradox!!
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