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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
イゼット・ラフター・コンボ(アルケミー)
マジックを始めて間もない人。ビギナーの方々に読んでいただいても楽しんでもらえるような、マジックの魅力が伝わるような、そして一人前とは言わなくとも、構築フォーマットに対する知識や興味が深まってもらえたら。そういう思いでこのコラムを書かせてもらっている(まあ僕自身が書いてて楽しいってことも優先しているが)。
そういった層の皆は、まだカードをあまり持っていないのが普通というか、そういうもんだろう。セットが出る度に個人では差があるだろうがカードを集めてデッキを組んでと、それを繰り返していくのだから、「キャリアの差=カード保有数の差」になってしまうのは当然のことではある。
たとえばMTGアリーナをやる場合。直近のセットでデッキを組むスタンダードに限ったとしても、最近参入したプレイヤーは『ゼンディカーの夜明け』や『カルドハイム』といった、リリースされて時間が経ったセットのパックを手に入れる機会というものは少ないため、そこら辺のカードはあまり持っていないんだよなぁということもあるだろう。
現在、MTGアリーナでランク戦が実装されている構築フォーマットはスタンダード、アルケミー、ヒストリックの3つ。勝利がランクという形で評価され、成長を実感できるランク戦は初心者であっても遊びたいものである。そしてどうせなら多くのフォーマットを体験してみたいというのが人情。では3つのフォーマットそれぞれでデッキを用意するのかとなると……いきなりは難しいよなぁ。
ここで注目すべきはスタンダードとアルケミーだ。
このフォーマットは使用できるカード範囲の差がわずかである。スタンダードのそれをベースに、アルケミー専用カードが追加されている形になる。だったらデッキも比較的近いものを組んで遊ぶことができるってことである。
「でもそのアルケミー専用カードをいっぱい集めないとデッキが組めないんでしょう?」という声も聞こえてきそうだが……実はそんなこともない。以下のリストを見ていただきたい。
6 《島》 4 《山》 4 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 4 《進化する未開地》 1 《見捨てられた交差路》 -土地(23)- 4 《遺跡ガニ》 -クリーチャー(4)- |
4 《消えゆく希望》 4 《表現の反復》 4 《感電の反復》 4 《荒れ狂う騒音》 3 《二重の一撃》 2 《安堵の火葬》 1 《才能の試験》 4 《ゼロ除算》 4 《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》 2 《悪魔の稲妻》 1 《襲来の予測》 -呪文(33)- |
2 《環境科学》 2 《アルカイックの教え》 1 《ご破算》 1 《歴史解明学》 1 《マスコット展示会》 -サイドボード(7)- |
こちらはアルケミーのランク戦、BO1(1本勝負)で使用されてミシックランクの100位以内というかなり上位に上り詰めたデッキである。
デッキ自体の解説に入る前に明かしておくと、このデッキはメインサイドを構成する67枚中、66枚がスタンダードのカードである。残りの1枚、アルケミー専用のものは《見捨てられた交差路》だけだ。あれば便利な2色土地だが、まあなくてもデッキの動き自体は変わらない。となると、スタンダードで組めるデッキそのまんまでアルケミーでも勝てるということになる。これは朗報かもしれないな。
ではリストについて見ていこう。
青と赤の2色デッキで、役割の似たカードに注目すればこのデッキの正体は判明する。スタンダードで大活躍、ヒストリックでも強さを見せる《感電の反復》。これと同じく、インスタントかソーサリーをコピーする《二重の一撃》、これらが計7枚。
つまりはなんらかの呪文をコピーして美味しい思いをしたいデッキということ。スタンダードであれば《アールンドの天啓》がまさしく必殺技であるが、アルケミーではこのカードは調整されており、スタンダードほど強くは使えない。
そこで別のカードがその対象として選ばれている。《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》だ。
マナ総量の合計値が20以上になるまで対戦相手のライブラリーを追放する、かなり豪快な1枚。マジックの敗北条件のひとつとして、ライブラリーからカードが引けなくなるとそこでゲーム終了というものがある。これをライブラリーアウトと呼び、それを人為的に引き起こすデッキは古来より「戦闘以外で勝ちたい」というプレイヤーに愛されている。
このライブラリーアウト戦術を強烈にプッシュする、《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》。一撃で20枚吹っ飛んだということもザラにあるこのソーサリーをコピーして、40枚以上あるようなライブラリーも一瞬で空っぽにしてしまおうという恐るべきコンボデッキ――それが、このほぼスタンダードなアルケミーデッキの正体だ。
《感電の反復》or《二重の一撃》と《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》、あわせて5マナ、一撃を予顕していれば4マナでコンボは決まる。
しかしながらラフター2発では削り切るのは簡単ではない。反復と一撃を組み合わせて3連発にするか、他にライブラリーを削る手段を用意しておく必要がある。ラフターの追加枠的ポジションは《荒れ狂う騒音》が担う。
キッカーすれば1枚でライブラリーの半分をぶち抜き、2マナで唱えても8枚と効率よく削れるソーサリーだ。そのコストの軽さからこれをコピーする手軽なコンボも決めやすい。4ターン目騒音コピーで16枚、5ターン目ラフターコピーでフィニッシュといった動きがよく決まる印象だ。
そして、細かく削るのは《遺跡ガニ》の役目。
1ターン目から出していって、毎ターン土地を置き続けてゴリゴリと削る。《進化する未開地》と複数体のカニはコンボが要らないんじゃないかというレベルで削ってくれる。
これを《ゼロ除算》で護るなどの攻防を繰り広げながら、隙を見たらコンボで仕留める。ラフターコンボの理想的なゲームプランだ。
このリストは使用者のプレイングスキルや、ランク上位でのデッキ分布などにあわせて1枚挿しがあったりと、そのままコピーして使わない方が良いかもしれない。僕はせっかく反復などのコピー呪文があるのだからと《予想外の授かり物》を採用して強引にコンボを決めるためのマナと手札を確保する手段を仕込んで遊んでいる。
除去など細かいところを調整すれば、BO3やヒストリックで戦えるデッキに仕上げることも可能だろう。各々面白い構成を目指してほしいね。
このほぼスタンダードな構成のリストがなぜアルケミーで勝ったのか、分析してみると……スタンダードのように天啓コンボがパワーを持っていないということで、このカラーリングでコンボするならこの形の方が勝ちやすい。そして、実際にこのデッキでアルケミーのBO1をプレイしてみると環境にマッチしているということがよくわかる。
当たりは《恐るべき仔竜》を擁するドラゴン・デッキや《審問官の隊長》で決めるクレリック・デッキなど、相手のクリーチャーに対処しつつ4マナ以降のカードで勝負する中速デッキだ。つまりは、このリストであればカニ以外には除去の類は無駄なドローとなり、また超速攻デッキというわけでなければコンボを決めるまでの時間的な余裕がある。そういう相手のデッキとの噛み合わせに優れているのが、このデッキの立ち位置を良くしているんだろうなと。これ、他にも同じようなデッキで戦えば勝てるというヒントでもあるね。
アルケミー限定カードを所持していなくても、アルケミーは楽しめるし勝つこともできる。マジック歴や所持カードが少なくとも、複数のフォーマットでプレイ可能なデッキは組める。とにかく、まずはいろいろやってマジックを堪能してほしいね!
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