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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:アゾリウス・スピリット~怖すぎるカード、見つけました~(ヒストリック)
この秋、皆の生活で変わったことって何かな?
これを読んでくれる多くのマジックプレイヤーは「お店で紙のマジックが遊べるようになった!」と喜色満面の笑みで答えてくれそうだ。That’s cool! 僕も久しぶりに何かマジックのイベントをしてみたいななんてぼんやり考えているくらい、自由にマジックが遊べるようになったことはクールなことだ。
マジックと同じくらい映画が好きな僕にとっては、その感覚と同様にレイトショーで映画を観に行ける日々が帰ってきたのは実に喜ばしくクールなことだ。
秋というのはハロウィンシーズンと重なることもあって、映画館では各種ホラーが目白押しとなる時期。個人的にはホラー映画は夜に観てこそクールだと考えている。映画を観終わった後の余韻が、映画館を出た後の暗闇で継続するあの感じ……特に近場の映画館で観て家まで歩いて帰る時などは、あれこれ妄想を膨らませているところに物音がしてビビったり、人通りが皆無の道を歩いている時に向こうから来る車の灯りに安堵したり、いや待てよむしろあれは危険な兆候では?……とか、とにかくレイトショーならではの後味ってやつがあってクールなのだ。
ホラーと言えば、この秋にリリースされた「イニストラード」2セットも各種ホラー映画に勝るとも劣らない怖いカードが揃っている。「『真夜中の狩り』&『真紅の契り』、どのカードが一番怖いかランキング!」みたいな企画記事をやってくれと言われたら、これだなという1枚は決めてある。《復讐に燃えた犠牲者、ドロテア》だ。
フレイバーを見るに、彼女はヴォルダーレン家の吸血鬼によって命を奪われたものの幽霊なのだろう。復讐に燃えているということで、彼女自身も霊体として戦うし、その思いを《ドロテアの報復》という形で生ける者に降霊して果たそうという、執念めいたものを感じる。
が、イラストはむしろ美しくすら見える、聖なる霊として描かれているので恐怖のようなものは感じない……と、思ったでしょ?では、このカードの「永遠の夜」版のアートをご覧いただこう。
こ、こえええええ~ッッ。いやむしろ立場はなんであれ怨霊の類なのだから、こんな見た目の方がマッチしていると言えばそうではあるな。
このアート、ホラー好きな僕にはむちゃくちゃクールに見える。この亡霊を用いたデッキこそクールデッキ!というわけで今回は《復讐に燃えた犠牲者、ドロテア》を使ったデッキの一例をご覧いただこう!
4 《島》 4 《神聖なる泉》 4 《さびれた浜》 4 《氷河の城砦》 4 《連門の小道》 -土地(20)- 4 《ランタンを携える者》 4 《幽体の船乗り》 4 《鎖鳴らし》 4 《至高の幻影》 2 《復讐に燃えた犠牲者、ドロテア》 3 《スカイクレイブの亡霊》 -クリーチャー(21)- |
4 《執着的探訪》 3 《好奇心》 4 《高尚な否定》 1 《ドビンの拒否権》 1 《本質の把捉》 4 《霊灯の罠》 2 《大魔導師の魔除け》 -呪文(19)- |
4 《静寂をもたらすもの》 2 《耳の痛い静寂》 3 《安らかなる眠り》 2 《ドビンの拒否権》 2 《本質の把捉》 2 《浄化の輝き》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
ヒストリックの「アゾリウス(白青)スピリット」だ!
スピリット自体はこの環境にもともとそれなりの数がいるのだが、パイオニアほど層が厚いわけではなかった。《至高の幻影》というスピリット・デッキの軸となるカードはあるものの、細かい部分を埋めてくれるカードが足りないという状況が続いていた。
そこに『イニストラード:真紅の契り』の参入である。今回のテーマであるドロテアをはじめとして、スピリット関係のカードがたっぷりやってきたことで、ヒストリックのスピリットに足りないものが埋まったようだ。それでは詳しく見ていこう。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:亡霊と降霊
このデッキが採用した『イニストラード:真紅の契り』の新カードはなんと10枚。ヒストリックというカードプールが広大なフォーマットで、最新セットからこれほどの新戦力が迎え入れられるのはなかなか見られない光景だ。
まずはドロテア。《復讐に燃えた犠牲者、ドロテア》はなんと驚異の2マナ4/4飛行! しかしながら1回でも攻撃かブロックに参加すると、戦闘終了時に生け贄に捧げられるデメリットを併せ持っている。本体に撃ち込む4点ダメージ呪文のような感覚で、あるいは相手の攻撃をブロックして除去のように用いようってことだね。
そして生け贄に捧げられた後は墓地から降霊コストで唱えて《ドロテアの報復》として再利用。こちらはつけたクリーチャーで攻撃すると、ドロテア本体のような4/4飛行・攻撃している状態のスピリットを呼び出し、そして戦闘後消えるというかつての《聖トラフトの祈祷》を彷彿とさせるデザインだ。
攻撃的なオーラではあるが、つけたクリーチャーが除去されると1対2交換となるというオーラの宿命的弱点を背負っているのも事実。ただ、ドロテアというクリーチャーのオマケであるので、もしこれをつけるというプランが失敗しても通常のオーラよりは被害が少なく済むという点は評価ができる。何より出てくるトークンがスピリットなので《至高の幻影》で5/5になるという点が素晴らしい。
このスピリット・デッキはクロック・パーミッションだ。軽量のクロック(ダメージを刻んでいくクリーチャー)を展開し、それを打ち消しで支えるパーミッション戦術を用いるデッキという意味だ。この手のデッキは低コストで回避能力持ちのクロックに頼るので、どうしても線は細くなりがちである。その弱点をドロテアはピッタリ埋めてくれる1枚である。
他の新戦力はこのクロックパーミが必要とする二大要素。クロックは《ランタンを携える者》!
えっ、1マナ1/1のコモンが?と思うかもしれない。しかしこれが重要、侮るなかれ。《ランタンを携える者》はこの環境において、《幽体の船乗り》に続く2種類目の1マナで飛行のスピリットなのである! 待望のクールな1枚だったというわけだ。
たとえこれ単体では線が細くとも、《至高の幻影》や《ドロテアの報復》で打点を引き上げてやれば良い。1マナで飛行持ちなので1ターン目に出して2ターン目に《執着的探訪》《好奇心》を貼って殴ってドローというプランを押し進めていける。
除去されても降霊で最低限強化オーラになってくれる。素では飛んでいない《スカイクレイブの亡霊》につけてやりたいところだ。
クールポイントその2:呪文を唱えるには許可が要ります
ランタンor船乗りにドローするオーラを貼る2ターン目という、このデッキのブン回りムーブは、そこに除去を使われると大きく損をするというリスクと紙一重である。
このリスクを取り去ってくれるのが、もう1つの新カードでありパーミッション要素を担う《霊灯の罠》。
スピリットはもちろんのこと、オーラ呪文や降霊によりエンチャントも戦場に出しやすいこのデッキでは《霊灯の罠》を唱えるコストを{U}にまで絞ることは容易い。これなら2ターン目に1マナスピリットにオーラを貼って殴りながら構えることが可能だ。
3マナ追加コスト要求は序盤であれば確定打ち消しも同然。クールすぎる打ち消しで序盤から終盤までゲームの衝動権を握り続けよう。
これに加えて従来のスピリットの武器である《高尚な否定》も併用。
飛行クリーチャーがいればこれも{4}要求と、実質《対抗呪文》と過言ではない。
《本質の把捉》《ドビンの拒否権》と対象が限られるも2マナの確定打ち消し、そして打ち消しでありかついろいろできちゃう《大魔導師の魔除け》と、これだけあればひたすら打ち消し続けて何もさせず完封というクールなゲーム展開も夢じゃない。
スピリットとエンチャント、両方揃ったデッキでこそ輝く《霊灯の罠》がこの鬼のパーミッション戦術を可能にするのだ。
クールテクニック!
そんな《霊灯の罠》。降霊デッキで使われることを前提に作られたようなデザインなので、このデッキを使ってみるまでは勘違いしていたのだが……このカードが参照するのはエンチャントであり、別にオーラに限ってはいない。
なのでサイドボードのコンボや墓地への対策カードは《耳の痛い静寂》《安らかなる眠り》とエンチャントを用いている。
状況によってはスピリットより先にこれらの対策カードを出さないと危ない場面もあるだろう。そうした状況でもコストが軽減されて構えやすい《霊灯の罠》はクール! マジクールなのだ!
もっともっとエンチャントに特化したサイドボード、例えば《虚空の力線》のような力線サイクルとも組み合わせてみるとかも試してみたいね。
クールなまとめ
何度見ても怖くてクールな《復讐に燃えたドロテア》の「永遠の夜」版アート。見た目だけでなくその性能もクールでオンリーワンのものなので、これを活かした相手を震え上がらせるデッキを皆も考えよう。それじゃ今週はここまで。Stay cool! Don't afraid of ghosts!!
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