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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
青単クロックパーミッション:刻みつつ構えるというスタイル(スタンダード)
~マジック用語集~
クロック:多くの場合クリーチャーのこと、状況によってプレインズウォーカーやエンチャントなどパーマネント全般も指す。対戦相手の残りライフを現状の戦力であと何ターンで削り切れるか、時計が針を刻むことになぞらえてクロックと表現する。対戦相手のライフが5点でこちらにパワーの合計が3点分のクリーチャーがいる場合「2ターンクロック」となる。転じて、与えられるダメージを強調して「3点クロック」などと言うことも。プレイングにおいて「除去するかクロック展開するか」「アグロだからクロック最優先」など実質的にクリーチャーを指しているやりとりも耳にすることもあるでしょう。
パーミッション:「許可」という意味の英単語が元。青い打ち消し呪文を用いた戦略やデッキを指す。打ち消しを持っている側に対戦相手が「この呪文は打ち消されずに通りますか?」と許可を求めるようにプレイする光景よりそのように表現されるようになったという。日本ではパーミと略されることもある。《対抗呪文》など優秀な低コスト打ち消しがある時代には活躍したが、近年の打ち消し呪文のコスト上昇により打ち消しのみで完封することは困難に。結果パーミッションを主体とした戦略は衰退し、単にコントロールと分類されるようになった。
クロックパーミッション:クロックを展開しパーミッション戦略で支えるデッキジャンルの一つ。1~2マナの優秀なクリーチャーを最序盤に出し、それらに飛んでくる除去や対戦相手の勝ち手段を打ち消し続けてクロックを完走させる、テクニカルなデッキである。ただやみくもに打ち消ししても手札が無くなり、クロックを展開し続けてもリスクが増す。完璧に使いこなすには高いプレイヤースキルが求められる。クロックパーミと略すことが多い。
というわけで今日はクロックパーミを紹介しよう。打ち消しが強いレガシーでは今日でも1ジャンルとして成立しているが、なんと今回取り上げるのはスタンダードのものだ。
まさかのスタンダード、パーミッションの説明でも述べたように近年の打ち消しは3マナ以上と重めに設定されがちである。2マナ以下は打ち消せる条件が設定されたものしかない。そんな環境でもクロックパーミを組んでしまうというのは、もはや愛だな。
というわけでスタンダードのクロックパーミの一例をご紹介!
20 《冠雪の島》 4 《不詳の安息地》 -土地(24)- 4 《隆盛するスピリット》 4 《心悪しき隠遁者》 4 《怪しげな密航者》 2 《砂漠滅ぼし、イムリス》 -クリーチャー(14)- |
4 《考慮》 4 《消えゆく希望》 4 《一枚岩の防衛》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《乱動への突入》 2 《却下》 4 《ゼロ除算》 -呪文(22)- |
2 《環境科学》 1 《拡張解剖学》 1 《予言学入門》 1 《アルカイックの教え》 1 《殲滅学入門》 1 《マスコット展示会》 -サイドボード(7)- |
スタンダードの「青単クロックパーミッション」! まずリストから漂う雰囲気がカッコいいよね。毎週金曜日にやっているCool Deckのコーナーで紹介しようか迷ったくらいクールだ。
青の軽いクリーチャー(クロック)と打ち消しなどのインスタントでパーミッション戦術で戦う、由緒正しい構成だ。一部パワフルなカードもあるが、全体的にいわゆる「線が細い」カードで構成されているのがよくわかるだろう。カード1枚1枚ではなく、組み合わせでシチュエーションを乗り切る。これを心がけてリストを見ていこう。
まずはクロックから。何度も言うようだがクロックはコストが軽いことが最優先。1ターン目に出せる《隆盛するスピリット》は素のままだと1/1とヒョロヒョロだが、氷雪マナを注いでやると2/3、4/4とサイズアップしていくので、インスタントなど構えても使うことがなかったターンに浮いたマナを使って頼もしいクロックへと成長させてやろう。
クロックに求められる回避能力として、「ブロックされない」という最高のものを持つのが《怪しげな密航者》。
攻撃が通るとカードを1枚引いて1枚捨てる手札入れ替え能力を持つ(こういう能力持ちを「ルーター」という)。土地を引きすぎるとしんどいデッキなので、不要なものをクロックや打ち消しなどのより良いものに交換できるチャンスがあるのは嬉しい。
パワー1と純粋なクロックとしては弱めなのだが、これが変身して《船乗りの人狼》になるとパワーが2に上昇。さらに攻撃が通るとカードを捨てずに純粋に引くというアドバンテージ獲得能力にランクアップ。これで毎ターン打ち消しを補充していけば理論上完封さえ可能だ。
変身するための条件、戦場を夜にするのは簡単。だってそもそもがあまりメインで動かないデッキだからね。ターンをパスして頼もしい人狼に変身させ、ザクザクとクロックを刻みながら手札を得よう!
クロックでありパーミッション要素も持つ《心悪しき隠遁者》も頼りになるヤツだ。
タフネス1なので積極的に攻撃に行けるわけではないが、隙があればクロックとして機能しつつ、生け贄に捧げて非クリーチャー呪文を打ち消すのが主な役割。死亡した後には《心優しき霊》になってこちらの非クリーチャー呪文が打ち消されない状態にしつつ、飛行持ちクロックとして働く。
これら軽量クロックに比べるとデカいのが《砂漠滅ぼし、イムリス》。
最後の一押し二押しをねじ込む飛行5点クロックであり、攻撃が通るとカードを引ける完全無欠っぷり。護法{4}なので除去を考えすぎずに叩きつけ、攻撃時に護法が外れるその隙はしっかり打ち消しを構えてカバーすれば隙なく運用可能。
これらのクリーチャーカードとともに《不詳の安息地》をクロックとして用いて、対戦相手のライフを終焉に向かって刻んでいこう。
パーミッション要素を見ていこう。《ゼロ除算》《軽蔑的な一撃》などスタンダード定番の打ち消しもあるが、その要素を強めているデッキなのであまり見慣れないカードもあるだろう。
《却下》は2マナでクリーチャーを打ち消せるので、緑単や白単などのアグロへの牽制として用いる。対象も限られるし追加のマナを支払われると打ち消せないが、序盤に使う分には問題ないしアグロが多い環境を見切れば綺麗にハマる。
《一枚岩の防衛》はその軽さと、密航者と隠遁者のクリーチャータイプがその効果を高めるので採用されている。何よりも読まれにくく、また読まれたところで1マナなので回避するのも難しいのが強みだ。
これらの打ち消しで打ち漏らしたカード、特にクリーチャーに対しては手札に戻す「バウンス」で対処し、こちらのクロックとの殴り合いを優位にしていく。
《消えゆく希望》は1マナという軽さに占術という大きなオマケ。トークンを用いるデッキが多いこの時代には実質的に確定除去としても機能する強力カードであり、自身のクロックを相手の除去から護る最終防衛手段でもある。《乱動への突入》と併せて、相手のクリーチャーを一時的に無力化させてクロック完走をアシストしよう。
サイドボードは《ゼロ除算》で持ってくる講義・カードのみの7枚なのだが、この構成で実はBO1ではなくBO3、サイドボードありの2本先取制のトーナメントに参戦していたリストだ。間違いなのか、あるいはこだわりなのか。そんな構成でも勝ち越しているのがマジックの面白さだと思う。
たまにこういうデッキを使うといい気分転換になるし、突き詰めていくとマジックのスキルは確実に上昇する。詰めるところと構えるところ、その塩梅を上手く見極める能力が養われるからね。
メインデッキの非クリーチャー呪文はアンコモン以下というのも組みやすく、気になったらぜひとも実際に手に取ってクロックパーミというものを実感してほしい。簡単ではないけど、楽しいよ!
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