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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

グリクシス・ルールス:その老人、心悪しきか優しきか(ヒストリック)

岩SHOW

 意地悪、不愛想、頑固なおじいさん(あるいはおばあさん)が出てくる昔ばなしというのは世界各地に見られる。最後にはその老人が改心し、他の登場人物との関係が良くなって終わるというものが多く、なんともホッコリするお話は素敵だなと。

 イニストラードにもそんな老人がいるようだ。《心悪しき隠遁者》である。

回転

 隠遁者ということで世間の人々から離れて暮らしているのだろう。背景から漁村の外れにでも1人で暮らしている様子が伺える。

 彼が人を憎むようになったのは何らかの恨みによるものらしい。しかしその死後、彼が霊となった際には「昔の恨みがたちまち笑えてくるほどに下らなく思えた。なので、彼は笑った。」(フレイバー・テキスト)と記されているように、その恨みから解放されて《心優しき霊》へと生まれ変わった。

 死後に恨みや誤解が解消するというのは悲劇的にも思えるが、死後の人々が霊となって次元に留まるイニストラードにおいて、彼が悪霊とならずに済んだのはハッピーエンドと言えるのではないかな。

 生前に心悪しきと言われるまでの悪行を積み重ねていたかもしれない、そんな老人は霊となった今恨んでいた人々に対して生前の行いを償うかのように優しく助力していくことだろう。ええ話や。

 カードとしては心悪しき時には非クリーチャー呪文に対する打ち消しとして機能し、生け贄となった後は降霊能力で変身。心優しきモードになると今度は自分の非クリーチャー呪文を打ち消せなくさせるという優れもの。冷静に考えれば、対戦相手から見ればどっちも心悪しきと言えるんじゃないのか?

 まあそれはおいといて、非常に使い勝手の良いクリーチャーであることには違いない。このカードのポテンシャルを最大に活かすのであれば……降霊以外にも墓地から戦場に戻す手段を用意する、というのはひとつのアンサーだな。

 最も手っ取り早いのは……《夢の巣のルールス》で毎ターン墓地から唱える!

 非クリーチャー呪文を主体としたコントロールやコンボなどにとって、使い減りせず毎ターン自動装填される打ち消しなどたまったものではない。まあ《心悪しき隠遁者》は確定の打ち消しではないが、何をしても追加で{3}を支払うというのは簡単なことではない。

 というわけでルールスと隠遁者を組み合わせたヒストリックのデッキをご紹介ッ!

Zan Syed - 「グリクシス・ルールス」
ヒストリック (2021年10月3日)[MO] [ARENA]
4 《湿った墓
4 《血の墓所
4 《荒廃踏みの小道
2 《蒸気孔
4 《尖塔断の運河
1 《河川滑りの小道
1 《神託者の広間

-土地(20)-

4 《ボーマットの急使
4 《ドラゴンの怒りの媒介者
4 《心悪しき隠遁者

-クリーチャー(12)-
3 《思考囲い
3 《コジレックの審問
4 《邪悪な熱気
2 《致命的な一押し
1 《上天の呪文爆弾
1 《塵へのしがみつき
4 《表現の反復
3 《記憶の欠落
3 《眼識の収集
2 《湖での水難
2 《コラガンの命令

-呪文(28)-
1 《夢の巣のルールス

-相棒(1)-

2 《死の飢えのタイタン、クロクサ
4 《魂標ランタン
2 《大群への給餌
2 《才能の試験
4 《食肉鉤虐殺事件

-サイドボード(14)-
Zan Syed氏のTwitter より引用)

 

 「グリクシス(青黒赤)ルールス」、このデッキ自体はヒストリックでも珍しいというものでもない。《ドラゴンの怒りの媒介者》という環境最強の1マナクリーチャーを主役に、これの諜報能力で墓地に落ちたカードや媒介者自身をルールスで再利用することで長期戦にも対応する、手数で押していく強力なデッキだ。

 ルールスを相棒とすることで3マナ以上のパーマネントを採用できないが、黒が入っている分、青赤2色の媒介者デッキよりも行動の幅は増えている。

 《思考囲い》《コジレックの審問》による手札破壊こそがその最大の恩恵と言えよう。

 これらで相手の肝となるカードを落とし、展開速度をダウンさせながら媒介者の昂揚を満たして早いターンから3/3飛行での攻撃を狙う。

 そしてこの動きを《心悪しき隠遁者》でサポートするというわけだ。隠遁者は諜報で墓地に送ってしまっても降霊で墓地から利用できるという点でもデッキには噛み合っている。

 《記憶の欠落》《湖での水難》と打ち消しでしっかりと相手のアクションを封じ込め、ゲームの優位は手放さない。主導権を握り続けたい人にはオススメのデッキだ。

 ルールスデッキということで、サイドボードにもアツい工夫が見られる。《食肉鉤虐殺事件》の採用だ。

 各種クリーチャー主体デッキに対抗するための全体除去の枠をこれにしている理由は、回復できるからだろう。(スタックにないかぎりXは0として扱われるため)2マナのパーマネントであるのでルールスと問題なく併用可能で、Xを3以上で唱えればかなりの範囲のクリーチャーを除去できる。エンチャントというタイプも墓地に落ちることで昂揚を大きくサポートしてくれる無視できない要素だ。

 ただ、ルールスのルールとしてこの虐殺事件のXを1以上にして墓地から唱えられないことには注意だ。3マナ以上のパーマネント呪文になってしまうからね。ルールスから虐殺事件を再利用という動きはできそうでできない、夢まぼろしのムーブであると覚えておくと失敗は起こらない。忘れちゃいけないぜ。土地や《思考囲い》でライフを失うデッキなので、1点ずつ回復していくのは塵も積もれば的ありがた味に満ちている。

 実際に使ってみて、ルールスと隠遁者がバッチリ噛み合うと文字通りロック状態に持ち込めて、使っていて強く楽しいデッキだ。ただプレイの選択肢は多く、勝ち手段の線も細いのでかなり上級者向けのデッキであると感じた。

 勝ちにくいのであればもう少し殴れるクリーチャーを増やすのも正解だね。《秘密を掘り下げる者》とか《くすぶる卵》あたりを使うことでより勝ちやすく、また墓地対策で詰まない道筋ができるのではないかな。

 このデッキでは隠遁者はなかなか心優しくはならず、ルールスによって蘇生され続けて霊にはならないかもしれないが、そうやって機能しているのであれば、少なくともあなたにとってはかなりの助けになってくれている。ムスッとしているかもしれないが、プレイヤーのために何度も何度もその実を捧げてくれるのは優しさの証拠である。じいさん、ありがとうな。

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