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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
イゼット・デルバー:伝統の1枚、再び変身せよ(スタンダード)
マジックでは過去のセットに収録されたカードが最新のセットに再び収録される、すなわち再録されるというイベントがたびたび起こる。もう持っているカードが……と思うプレイヤーもいるかもしれないが、この再録は全体的に見ればありがたく、また意味のあることなのである。
まず、初心者やマジック歴の短いプレイヤーにとって嬉しいということ。古くからやっているプレイヤーと違って再録カードのリアルタイムを知らない世代は、その現物を目にするのも手にするのも初めてである。入手が難しくなっているものが最新セットのパックから出てくるとなれば、そのハードルはガクッと下がる。それをきっかけにモダンなどの他のフォーマットへの参入へと繋がれば、再録カードを所持しているプレイヤーにとってもコミュニティの活性化に繋がるので万歳というわけだ。
そして通常セットで再録されたということは、スタンダードで使用できるということになる。かつて名カードとして活躍したあのカードが、最新の環境ではどのような挙動を見せるのか。これは過去を知るプレイヤーでも新鮮な気持ちで楽しめるはず。スタンダードのみならずパイオニアやヒストリックなど、そのカードが使用可能プールに含まれていなかったフォーマットにも変化をもたらすので、再録カードによっては大きなインパクトをもたらすことになる。
今回はもちろん、そんな再録カードから1枚をフィーチャーしたデッキのお話。『イニストラード:真夜中の狩り』には過去のイニストラード系のセットからの再録がいくつか見られるが、最も人々の興味を惹いたのは《秘密を掘り下げる者》に違いない。
掘り下げる者の英語表記からデルバーと呼ばれるこの1マナの人間は、研究にのめり込んだ末に自身を昆虫と一体化させ、《昆虫の逸脱者》へと変身する。他のゴシックホラー系クリーチャーと同じく、マッドサイエンティストが怪物となる古典的な恐怖を体現しており、初代のカマキリ人間の見た目のインパクトといったら。今回はどうやら蛾と合体した研究者のようであり、より夜という環境に順応した姿であると言えるね。
カードとしては1マナ1/1という貧弱さから一転。アップキープにライブラリーの一番上を見て、それがインスタント or ソーサリーなら公開して変身。突如3/2飛行というバリバリの航空戦力になり対戦相手に襲い掛かる。
最速2ターン目にはこの優秀なサイズで殴りに行けるということで、《渦まく知識》のようなライブラリー操作との相性からレガシーで大活躍。デルバーデッキの系譜は10年に渡って今日まで続いていることがこのカードの強さを物語っている。当時のスタンダードでも「Samurai Delver」と呼ばれた青白のデルバーデッキが頂点を極めていたりしたものだ。
青くてインスタントやソーサリーで固めたデッキに、思いもよらぬ攻撃性を付与する唯一無二なクリーチャーである《秘密を掘り下げる者》。今日はこれを用いた現スタンダードのデッキを紹介だ!
10 《冠雪の島》 8 《冠雪の山》 4 《河川滑りの小道》 1 《不詳の安息地》 -土地(23)- 4 《隆盛するスピリット》 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《マグマの媒介者》 4 《熱錬金術師》 -クリーチャー(16)- |
4 《考慮》 4 《霜噛み》 4 《火遊び》 4 《表現の反復》 3 《襲来の予測》 2 《多元宇宙の警告》 -呪文(21)- |
2 《消えゆく希望》 2 《バーニング・ハンズ》 2 《安堵の火葬》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《否認》 2 《轟く叱責》 1 《才能の試験》 2 《弱者粉砕》 -サイドボード(15)- |
「イゼット(青赤)デルバー」だ。やはりインスタントとソーサリーと言えばこの2色である。
デルバーデッキの大半がそうだが、デッキとしてはテンポを重視したものになる。テンポという概念については説明するのが難しいが、ここでは手数と捉えてもらえたら。1~2マナの軽いカードを優先的に採用することで、カード1枚の質ではやや劣るものの、1ターン内にそれらのカードを複数用いて手数で押していく。軽い除去や打ち消しで相手のマナ総量の大きいカードを対処することで優位に立ち回る。そういうデッキになっている。
勝ち筋はもちろん、デルバー。これを早く変身させることが勝利への近道なのは言うまでもなく。21枚とデッキの三分の一が当たりになるので期待値は高い。
このデルバーの変身と絡ませたいのが《考慮》。
ライブラリーの上を見てそれを墓地に置いてもOKという1マナドローだが、これが優秀なのはデルバーの能力解決後。ライブラリーの一番上のインスタントを見せて変身、例えば《霜噛み》が公開されたとしよう。相手のデッキにはこれが有効に働くカードは少なそうだったり、あるいは十分に除去は持っているというような状況であれば、変身後にすぐにドローに移行せずに《考慮》を挟む。要らないカードを墓地に置いてしまえば良いのだ。
こういった小技は、小粒なクリーチャーでの勝利を目指すデッキにとっては重要なテクニック。「今テクい動きをした、自分はマジックをやっている!」という充実感に包まれるようなゲーム体験がしたいなら、デルバーデッキはオススメだ。
デルバー以外には1マナで成長していくクリーチャーとして《隆盛するスピリット》を採用。
4/4飛行まで持っていければかなりの戦力だ。インスタントを構えて相手の動きを見てから動くというスタイルを取りながら、隙があれば氷雪マナをこれの能力に注いで大きくしていこう。
同じくサイズアップするものとして《マグマの媒介者》も。
インスタント・ソーサリーを連打するデッキにとってはすぐさま4/4として運用可能な優れた2マナ域だ。大きくアドバンテージを取る手段がないデッキにとって、これの追放したカードを唱える能力もまた重要なものになってくる。勝負所で手札を捨てるのを恐れずに。
デルバーとともに帰ってきた再録カード《熱錬金術師》も防衛持ちながら相手のライフをガンガン削るイカしたヤツ。手数をグイッと稼ぐ《表現の反復》との組み合わせは天下一品である。
実際にこのリストをプレイしてみて、久しぶりにデルバーを変身させて殴るということの楽しさを味わった。時代や環境を越えても良いカードである。
ただこのリストはちょっと上級者向けのようにも感じた。何度も言うように単体のカードパワーは低いので、良いところまで押し込んだものの押しきれず、カードパワーで圧倒されて負けるというパターンが目立った。
なので、もう少しイージーな勝ちパターンを付与するために《黄金架のドラゴン》なんかが欲しいなと。どうしてもなんらかの下準備があって動き出すクリーチャーばかりなので、引いて叩きつけてブーンッという飛び道具の類が欲しいなと。
またデルバーのために土地の枚数を少々減らし、《髑髏砕きの一撃》のような土地でありながらインスタントやソーサリーでもあるカードを多めに採用するという構築を行っているプレイヤーも多いようだ。
デルバー自体はマジックを代表する非常に優秀なクリーチャーなので、一度これを3/2飛行に変身させる感覚を味わってほしいところだ。
さあ、原稿も仕上げたし寝るとしよう。良い時間になってしまった。しかしこんな時間だというのになんだか窓の向こうが騒がしいが(ここで手記は終わっている)
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