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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

グルールのバリエーション(ヒストリック)

岩SHOW

 夏、といえば? 海、山、花火……いや、夏フェスだ!

 真夏に開催される各種フェス、気持ち良い汗をかいてクタクタになるまで遊んで……最高なやつ。音楽フェスやフードフェス、そしてマジックの祭典マジックフェストも夏に開かれていたものだ。

 昨年今年とフェスが開催されない状況で物足りないなぁと思いつつ、家でMTGアリーナをプレイしている時にふと……ラヴニカとかでも夏フェス、やってんのかなぁと。娯楽を提供するラクドスがやってるんだろうか。ただ彼らのショーは命に関わる事故に繋がることもあるので、お天道様の元で堂々と開催できるものではなさそうだ。

 そうなると健康的な夏フェスが似合うのはグルールだな。灼熱の太陽と緑の芝生を彷彿とさせるカラーリング、エネルギッシュでワイルドなグルールの構成員たち。太鼓をドカドカ叩いて角笛を吹いている光景も見えてくる……グルールフェス、行きてぇなぁ。

 こんな妄想が進むのも、ヒストリックをやっていると高い確率でグルールデッキとマッチするからだ。赤緑2色のクリーチャー主体の速攻デッキ「グルール・アグロ」は軽量のクリーチャーを展開して攻撃し、いち早くライフを削り切るのを狙うシンプルなデッキだ。

 しかしながらその構成のバリエーションは意外にも多い。もちろん流行っている型、成功している構成というものはあるので、採用されているカードが1から10まで全く違うという状況に遭遇するのは稀ではある。特にグルールの強さの象徴である《炎樹族の使者》や殴るデッキでの1マナ圏ベストマナクリーチャー《ラノワールのエルフ》などはどのようなタイプでも採用されていたりする。

 ほとんど同じだけども微妙な違い、設計思想の違いがゲーム体験を変化させる。自分で使用していても対戦相手に使用されても、そのわずかな違いを感じ取る時は構築フォーマットの妙味というのが堪能できる瞬間だ。今回はグルールのバリエーションをご紹介!

Jordao Pereira - 「グルール・アグロ」
ヒストリック (2021年8月4日)[MO] [ARENA]
6 《
5 《
4 《踏み鳴らされる地
4 《岩山被りの小道
2 《ハイドラの巣
2 《バグベアの居住地

-土地(23)-

4 《ラノワールのエルフ
4 《生皮収集家
4 《炎樹族の使者
4 《通電の喧嘩屋
2 《漁る軟泥
4 《砕骨の巨人
4 《グルールの呪文砕き
1 《運命の神、クローティス
2 《探索する獣

-クリーチャー(29)-
4 《レンジャー・クラス
4 《エンバレスの宝剣

-呪文(8)-
4 《解き放たれた狂戦士
1 《運命の神、クローティス
2 《マグマのしぶき
2 《削剥
2 《燃えがら蔦
2 《乱動する渦
2 《反逆の先導者、チャンドラ

-サイドボード(15)-
Jordao Pereira氏のTwitter より引用)

 

 現在のヒストリックにおけるグルールの必勝ムーブは、1ターン目《生皮収集家》→2ターン目《炎樹族の使者》(複数であればあるほどよい)からの《通電の喧嘩屋》を展開、3/3になった《生皮収集家》で攻撃というロケットスタート。

 2ターン目の《炎樹族の使者》の爆発力を高めるため、2マナのカードに何を採用するかというのはひとつの課題である。この夏は新カード《レンジャー・クラス》を用いる形がブームだ。

 2/2の狼を生成しフィニッシュの《エンバレスの宝剣》に繋げるための頭数を稼ぐ。レベル2ではクリーチャー強化による強引な押し込みをアシスト。これは同サイズのクリーチャーを並べるアグロデッキ同士の対決において大きな効果を発揮する。

 レベル3になるとライブラリーから直接クリーチャーを唱えられるようになり、量的なアドバンテージをもたらす。このレベルまで到達する前にさっさと殴り勝つのが理想ではあるが、対戦相手も突っ立っているカカシではなく抵抗してくるので長期戦にもつれ込むことも多々。そうなった際に息切れしない保険としてこのエンチャントのレベル3は実に頼もしい。

 このリストでは多くのグルールが採用している《集合した中隊》が不採用になっている。

 これはより軽い《レンジャー・クラス》を優先したためだ。中隊は4マナから高い打点を展開できる強力なインスタントではあるが、弱点も多い。《墓掘りの檻》は今や不採用のデッキがないと言っても良いレベルで、サイドボード、ものによってはメインから睨みを利かせている。このアーティファクトを前にした場合、アーティファクト破壊を引くまでは中隊は手札でお荷物として抱えっぱなしになりがちだ。

 《レンジャー・クラス》のレベル3も同じく檻には封じられてしまうのだが、こちらはとりあえず2マナ2/2としてレベル2にしてクリーチャーを育ててと、攻めに関する役目は十分に果たしてくれる点で勝っている。その強さを買って、ノー中隊のレンジャー4枚という形が一部で流行しているのだろう。

Karl Sarap - 「グルール・アグロ」
Insight Esports Presents: Historic Invitational Qualifier 4勝1敗 / ヒストリック (2021年7月28日)[MO] [ARENA]
5 《
1 《
4 《踏み鳴らされる地
4 《岩山被りの小道
3 《ハイドラの巣
1 《バグベアの居住地
3 《ラムナプの遺跡

-土地(21)-

4 《ラノワールのエルフ
4 《生皮収集家
4 《炎樹族の使者
3 《漁る軟泥
2 《終わりなき踊りのガリア
4 《砕骨の巨人
4 《グルールの呪文砕き
3 《アン一門の壊し屋
3 《探索する獣

-クリーチャー(31)-
3 《集合した中隊
2 《髑髏砕きの一撃
3 《エンバレスの宝剣

-呪文(8)-
1 《漁る軟泥
1 《解き放たれた狂戦士
1 《アン一門の壊し屋
1 《無効皮のフェロックス
4 《マグマのしぶき
2 《墓掘りの檻
1 《乱動する渦
1 《集合した中隊
1 《エンバレスの宝剣
2 《反逆の先導者、チャンドラ

-サイドボード(15)-
MTG Melee より引用)

 

 《レンジャー・クラス》型が数を増やす一方で、弱点があるとはいえブン回った時の強さはピカイチな《集合した中隊》型もまだまだ元気だ。グルールが4マナ立てて優先権を譲ってきたら、これを構えていると判断してケアして損することはない。

 中隊タイプが武器としているのは《アン一門の壊し屋》。

 ブロック参加不可にする督励能力と速攻で、対戦相手の計算を狂わせ勝負を決める。中隊からこれが2体出てきたりしたら……想像するだけで恐ろしい。

 最後に話は少し変わって、『Jumpstart: Historic Horizons』リリース後にグルールに変化は訪れるのだろうか。《忍び寄る牙長獣》などは1マナ圏の新しい担い手になるかもしれない。

LongtuskStalker.png

 素のサイズは1/1と小さめだが、エネルギーを支払うことでパワーが永久に上昇。しかもついでに手札の誰かにもその修整を与えるので、パワーが上がった速攻持ちを準備して瞬殺を狙えるかも。エネルギー系のカードなので《通電の喧嘩屋》とも相性が良い。エネルギーをサブテーマとしたグルールが活躍する可能性もあるね。

 元の戦略がシンプルだからこそ、少しの変化が大きくデッキの印象を変えてしまうグルール。秋を迎える頃にどのような構成が主流となっているか、短期間での進化をリアルタイムで追いかけようじゃないか。

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