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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:アサーラックが君の味方(スタンダード)

岩SHOW

 《アーチリッチ、アサーラック》。

 マジックの日本語名でこれほどカタカナのみが並ぶ名前も珍しいので目につくし、オマケに伝説のゾンビでアートもカッコイイ。3マナ5/5というハイスペックなボディには能力がたっぷり。

 そもそもアサーラックとは、ダンジョンズ&ドラゴンズの世界ではその初期から冒険者たちを苦しめ、震え上がらせたラスボス的存在なのだとか。いやぁ、クールだなぁ……

 というわけで今週もやってまいりましたクールなデッキを紹介するこのコーナー。今回の主役はこのアサーラック! 大いなるリッチは、「魂を喰らう墓」なるダンジョンを踏破したことがない限りは戦場に出ても手札に戻ってしまう。ただその時にダンジョンを1回探索させてくれるので、彼の陰謀渦まく根城へと一歩踏み込ませてくれる。

Tomb_of_Annihilation.png

 「魂を喰らう墓」はライフを失うことに関する能力がギッシリ。最短ルートを通ると3回の探索で踏破となり「アトロパル」なる恐怖の神を召喚することができるが、その過程で自分だけがリソースを失ってしまうというプレイヤーの度胸を試してくる迷宮となっている。まあ最短ルートじゃなくても4回でゴールなので、ダンジョンとしては最も踏破しやすいものだ。

 で、ここをクリアした暁にはアサーラックが戦場に留まってプレイヤーに力を貸してくれるようになる。攻撃すれば、対戦相手はクリーチャーを生け贄に捧げるか、コチラにゾンビの援軍が加わるかを選ばなければならない。5/5というサイズも相まって、一度殴りだせばあっという間にゲームをこちらの有利に傾けてくれる、クールなフィニッシャーとなってくれるだろう。

 こんなクールなカード、使わない手はないなぁと。またアサーラック以外にもダンジョンに関するカードはクールなものばかりなので、青黒のダンジョンデッキを組んでみよう!と思い立った。

 適当に組んだものでランク戦を遊んでいたのだが、思っていたよりも強く、スタンダードの既存のデッキ相手にも互角に戦えて、クールな可能性を感じた。ストリーミングしながらだったが、ダンジョンはやはり観ている方もワクワクして楽しいようだったね。

 というわけでマイ・ダンジョン・デック試作機が以下のリストだ。

岩SHOW - 「青黒ダンジョン」
スタンダード (2021年7月)[MO] [ARENA]
6 《
6 《
2 《欺瞞の神殿
4 《清水の小道
1 《ロークスワイン城
1 《目玉の暴君の住処
1 《ストーム・ジャイアントの聖堂
4 《寓話の小道

-土地(25)-

4 《ダンジョン・クロウラー
4 《ユアンティの呪われし者
4 《アーチリッチ、アサーラック
4 《厚かましい借り手
4 《ディスプレイサー・ビースト
3 《残忍な騎士

-クリーチャー(23)-
3 《フライ
3 《取り除き
3 《無情な行動
3 《ゲートを塞げ

-呪文(12)-
3 《ドラコリッチ、エボンデス
2 《ギルドの重鎮、ザナサー
1 《隠し扉
2 《否認
1 《軽蔑的な一撃
3 《神秘の論争
2 《激しい恐怖
1 《悪戯の神の強奪

-サイドボード(15)-

 《ユアンティの呪われし者》《ディスプレイサー・ビースト》《フライ》《ゲートを塞げ》とアサーラックでダンジョンを探索。こちらの方が先に仕掛けてライフを詰められるようなら「魂を喰らう墓」を、後手で受ける側のゲーム展開になりそうなら「狂える魔道士の迷宮」でアドバンテージを取る長期プランで、というように探索先を使い分けてプレイしたのだが、かなり楽しいゲーム体験だった。

 特に「狂える魔道士の迷宮」の終盤に差し掛かったところでアサーラックを連打して一気に突き進むのは、ダンジョンの目的地が見えてきた感覚が味わえて実にクール。で、ザクザクと探索しながらランク戦を遊んでいると……同じアサーラックを使用するデッキと遭遇した。そしてそれは、途轍もなくクールな逸品だった。

 正確なリストは分からないが、対戦中に見えたカードを頼りに、細かい部分は自分に合うように調整しながら、あの迷宮の奥で巡り合った名デッキの再現に勤しんだ。個人的にはこれほどマジックが面白い瞬間というのもなくて、文字通りのめり込んだね。

 というわけで今回のクールなデッキがこいつだッ!

岩SHOW - 「マルドゥ・アサーラック」
スタンダード (2021年7月)[MO] [ARENA]
5 《
2 《平地
1 《
4 《サヴァイのトライオーム
4 《陽光昇りの小道
4 《荒廃踏みの小道
3 《針縁の小道
2 《寓話の小道

-土地(25)-

4 《静寂をもたらすもの
4 《死の飢えのタイタン、クロクサ
2 《スカイクレイブの影
2 《厳しい試験官
4 《アーチリッチ、アサーラック
2 《無私のパラディン、ナダール
1 《オリークの首領、エクスタス

-クリーチャー(19)-
3 《血の長の渇き
3 《無情な行動
2 《消失の詩句
4 《ティマレット、死者を呼び出す
1 《死住まいの呼び声
2 《スカルドの決戦
1 《シルバークイルの命令

-呪文(16)-
1 《塵へのしがみつき
3 《引き裂き
3 《乱動する渦
1 《苦悶の悔恨
1 《浄化の野火
2 《エルズペスの悪夢
2 《激しい恐怖
2 《アクロス戦争

-サイドボード(15)-
このクールなデッキは?

 「マルドゥ・アサーラック」……かのアーチリッチを序盤に戦場に定着させ攻撃をするという強い意志を具現化させた、禍々しさすら感じさせるリストだ。

 黒はアサーラックのためのメインカラーであり、そこに白と赤を足している形になる。これがアサーラック運用の秘密であり、一応《無私のパラディン、ナダール》を採用してはいるが、このデッキは真面目にダンジョンを越えていくつもりはない。

 ではどうやってアサーラックを戦場へと繰り出すのか? それがこのデッキのクールな点なのだよ。

どこがどうクールなのか?

クールポイントその1:能力は誘発すれば良いってもんでもない

 このデッキが白を扱う理由はズバリ、クリーチャーなどが戦場に出た時に誘発する能力を封じることを狙っているからである。《静寂をもたらすもの》で誘発させないか、あるいは《厳しい試験官》で打ち消すか。

 それがどうデッキのメインコンセプトと関係あるのかというと……そう、アサーラックの1つ目の能力は戦場に出たときに誘発するもので、これを白いクリーチャーたちのいずれかでなかったことにしてしまえば……「魂を喰らう墓」を踏破したか否かのチェックは行われず、アサーラックはすんなりと戦場に出てくれるのである。

 白いクリーチャーはいずれも2マナなので、早ければ3ターン目にアサーラックが降臨する。これだけ早期ターンであればそのサイズで圧倒できるし、相手には生け贄に捧げるクリーチャーの選択肢もほとんどない。ダメージ除去でも高タフネスなので倒しにくく、一度殴りだしたらズルズルとこちらのペースに引き込んでしまえるだろう。悪の権化を戦力とするために、白き面々の力を借りるという絵面もなんともクールじゃないか。

 アサーラックと同様に戦場に出た際の誘発をもみ消すことで得するクリーチャーとして《死の飢えのタイタン、クロクサ》もこのデッキの主砲であり、赤を足している理由である。

 もともとはこのクロクサと《静寂をもたらすもの》をセットで運用するデッキがあったのだが、もみ消し役も恩恵を受ける役も1種類ずつしかないため、なかなかデッキの核にはしにくいという問題点があった。今年に入って《厳しい試験官》と《アーチリッチ、アサーラック》というコンボパーツが増えたことで、ここにデッキとして再び生を受けたというわけなのだ。

 クロクサとアサーラック、ラスボス級の邪悪さ極まる怪物の共演はクール以外に形容できないな。

クールポイントその2:根はコントロールです

 このデッキはコンボを主役としているが、根っこの部分はクリーチャーなどのパーマネントを除去していく、いわゆる「ボードコントロール」寄りに調整している。

 サクッとコンボが決まればそのまま圧倒もできるが、決まったからと言ってそのまま即勝利が約束されているわけでもない。それにパーツが豊富とは言え、揃わない可能性だってある。必死にコンボを狙いに行く構成よりは、コンボでも勝てるし、クリーチャー除去して生き延びながら普通にクリーチャーを出しても勝てる、それぐらいの緩めのデッキにした方がデッキとして安定していると判断したからだ。

 アサーラックは先述の通り、最速でも3回はダンジョンを探索しなければ出てこない。時間がかかるので、それだけの期間生きていられるように、除去は黒を中心にしっかりと用意。

 もう一方のフィニッシャー、クロクサはコンボ以外で戦場に出そうと思ったら脱出で墓地から唱えなければならない。そこで墓地を増やすために《ティマレット、死者を呼び出す》を。

 これで墓地にカードが落ちるので、ついでにそれも活かせるようにしておけばデッキとしてクールなまとまりができる。《スカイクレイブの影》を唱えたり、コンボパーツを《死住まいの呼び声》《シルバークイルの命令》で戦場に出したり《オリークの首領、エクスタス》で回収したり。

 墓地に落ちたエンチャントがあれば《ティマレット、死者を呼び出す》的にも嬉しいのでアドバンテージ源は《スカルドの決戦》に。

 エクスタスや《静寂をもたらすもの》を強化するのも勝ちに行くルートなので、これでデッキがクールにしまったように思っている。早いゲームもややロングなゲームも任せろってなもんだ!

クールなまとめ

 いつだってクールなカードはそこにある。今のところ僕のハートを鷲掴みにしているのは《アーチリッチ、アサーラック》だが、皆はどんな新カードをクールと感じただろうか?

 強く、楽しく、独自性が高い、君にしか作れないクールなデッキを披露してほしいと心から願っている。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Acererak is here!!

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