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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

マルドゥ・トレジャー・サクリファイス(スタンダード2022)

岩SHOW

 今日のマジックにおいては、多様なトークンが飛び交うのが当たり前、日常の光景となっている。

 僕がマジックを始めたのは20年以上前なのだが、その頃にトークンを使うカードというのはほとんどなかった。あっても能力を持たない小さなクリーチャーが出てくるのが精々。それが20年という時間を経て、セットを重ねるにつれて、複数の能力を持ったもの、伝説のトークンなどなどバリエーションが拡がっていった。

 そしてついに、クリーチャーでないアーティファクトというトークンまで登場した。今日ではごく一般的なコモンでさえ生成するものであるが、初見の時にはついにこんなトークンが出たかとビックリしたものだ。

 そうした非クリーチャーのトークンの中でも、猛烈にプッシュされているのが宝物だ。

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 『イクサラン』で初登場したこのタイプのトークンは、生け贄に捧げると好きな色のマナが得られる。使い切りのマナ加速であり、また宝物はそれ以外にも使い道がある。《宝物の入り江》でドローに変換したり《富の享楽》で集めることで勝利したりと、宝物というフレイバーを存分に活かした使い方で見た目も楽しい。

 この宝物は扱いやすいのか、この2021年にリリースされたスタンダードのセットには3つ続けて登場中。今回『フォーゴトン・レルム探訪』はダンジョンズ&ドラゴンズの世界をカード化したものなので、これに宝物が含まれるのは当然のことではある。今回の宝物はダンジョンを探索中に手に入れたり、正体が《ミミック》で襲い掛かってきたり。

 このセットで宝物を主に扱うのは黒赤緑。これらの色には宝物でマナを支払っていることでカードの効果をより高めるものが収録されている。中でも注目は《隠棲した絵描き、カレイン》。

 宝物経由のクリーチャーはすべてひと回り強化されて戦場に出てくるという能力はなかなか魅力的。今セットで一気に増えた黒い宝物関連のカードと、『カルドハイム』の赤い宝物関連のカードとを組み合わせれば赤黒で宝物を活かしたデッキも作れそうだ。

 というわけで今回はカレインを主軸としたデッキを紹介しよう。フォーマットはMTGアリーナ限定の「スタンダード2022」だ!

After Office TTV - 「マルドゥ・トレジャー・サクリファイス」
スタンダード2022(BO1) (2021年7月12日)[MO] [ARENA]
4 《
4 《
4 《荒廃踏みの小道
4 《陽光昇りの小道
4 《針縁の小道

-土地(20)-

4 《ひきつり目
4 《火刃の突撃者
4 《よろめく怪異
4 《隠棲した絵描き、カレイン
4 《オリークの首領、エクスタス
4 《黄金架のドラゴン
2 《不死のプリンス、オルクス

-クリーチャー(26)-
2 《マラキールの再誕
4 《命取りの論争
2 《検体探し
2 《髑髏砕きの一撃
4 《スカルドの決戦

-呪文(14)-
1 《環境科学
2 《壊死放出法
2 《害獣召喚学
1 《ご破算
1 《マスコット展示会

-サイドボード(7)-

 

 『ゼンディカーの夜明け』以降のスタンダードのカードと一部のアリーナ専用カードを使用した「スタンダード2022」より、「マルドゥ・トレジャー・サクリファイス」の登場だ。トレジャーはもちろん宝物で、サクリファイスは生け贄のこと。白黒赤の3色でその2つをテーマにした中速のデッキである。

 サクリファイス系のデッキは《初子さらい》《アクロス戦争》でクリーチャーのコントロールを奪って《悲哀の徘徊者》や《悪ふざけの名人、ランクル》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》などで生け贄に捧げることでクリーチャーデッキに致命的な損害を与えるもので、長きに渡ってスタンダードにも存在し続けてきた。《想起の拠点》を出した状態で一気に生け贄連打でライフを吸い尽くすというコンボ的な動きも強い。

 しかしながらここで挙げたカードはすべてスタンダード2022では使用できない。根幹を成していたカードがごっそりと抜け落ちても、サクリファイスデッキは成り立つのか? どうやらこのリストを見ていると、アプローチは大きく異なるが生け贄をテーマの一つにしたデッキは出てくる可能性があるなと実感するね。

 生け贄と宝物がこのように同居している最大の理由は、サクリファイスデッキにとって新時代の生け贄エンジンとして期待が寄せられる《命取りの論争》。

 アーティファクトやクリーチャーを生け贄に捧げつつ2枚ドロー、そして宝物生成。生け贄シナジーカードとカレインや《黄金架のドラゴン》のような宝物シナジーカード、両方と噛み合うのは素晴らしいね。

 これで生け贄に捧げたいのは……講義・カードが手に入る《ひきつり目》、ダメージを飛ばせる《火刃の突撃者》、さらなる宝物を得るか除去かを選べる新カード《よろめく怪異》。

 《よろめく怪異》はマナを伸ばして《黄金架のドラゴン》や《スカルドの決戦》の威力を高めたいなら宝物モードを選んで、《命取りの論争》と併せて一気に2マナ得てビッグアクションに繋げられるのが偉い。カレインがいて宝物があれば《火刃の突撃者》もかなり強力なクリーチャーへと変貌。パワーが2になっただけで生け贄に捧げたら2点ダメージと、タフネスのクリーチャーと相討ちが取れるレベルに跳ね上がる。ここに《スカルドの決戦》のⅡ、Ⅲ章能力でさらなるサイズアップを加えれば、対戦相手本体に大ダメージも狙えてしまう。

 これらの小さな生け贄になったクリーチャーを《オリークの首領、エクスタス》で回収することでもアドバンテージが稼げる。あるいは第2面の《血の化身の目覚め》でまとめて生け贄に捧げるのも手だ。

回転

 《よろめく怪異》と《火刃の突撃者》で小物を潰せば、化身降臨時に対戦相手は主戦力を生け贄に捧げざるを得なくなってしまう。

 エクスタスとともに墓地回収役を担う新カードは《不死のプリンス、オルクス》。

 X=1で1体釣り上げるだけでも十分なアドバンテージで、3体くらい蘇ったらもう勝ったようなもの。あるいはこのモードではなく全体にマイナス修整を付与することも選べるので、状況によって使い分けてそのポテンシャルを最大限に発揮させよう。モード付きの能力にパワー5の飛行というのはなかなかに稀有なスペックで、今後の活躍にも期待大。

 相手のクリーチャーを奪って生け贄、という手法は以前よりも難しくなるが、宝物で強化したクリーチャーを絡めるという新しいスタイルに切り替わっていきそうなサクリファイスデッキ。現行スタンダードであれば上記のリストの宝物要素を既存デッキのスタイルにハイブリッドさせることも可能だ。《隠棲した絵描き、カレイン》を面白いと思ったのであれば、ぜひともこのようなデッキをプレイしてほしいね。

 お宝を手に入れるには生け贄が必要という、いかにも古のダンジョンらしいフレイバーを味わいながら盤面を作って楽しもう!

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