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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ボロス・ミッドレンジ:熱いシーンを彩った伝説の1枚(ヒストリック)

岩SHOW

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の激熱番外カード、ミスティカルアーカイブ。

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 この特殊な枠のカードはストリクスヘイヴンの大図書棟に納められている呪文とのことだが、これらの呪文はどのような理由で蔵書されているのだろうか。《ウルザの激怒》《コジレックの審問》《テゼレットの計略》《テフェリーの防御》は、これらの存在が多元宇宙で次元をまたいで知られているということを意味しているのだろうか。また《チャネル》や《悪魔の教示者》などマジックの歴史でも指折りの強力呪文が納められているのは、その危険な呪文をいかに使いこなすかを研究しているとでもいうのだろうか。

 なんだか都市伝説のコーナーのようになってきたが、今回はまことしやかに囁かれる噂ではなくまぎれもなく実際に起こった事件をお伝えしたい。

 ミスティカルアーカイブの各大学のカラーで赤白の枠を担う《稲妻のらせん》。

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 このカードが選ばれている理由は明白だろう。それは「$16,000 Lightning Helix」と呼ばれる、マジックの競技シーンの歴史でも指折りの名シーンを演出したからだ。

 プロツアー・ホノルル2006準決勝、決勝進出をかけたオリヴィエ・ルーエル/Olivier Ruelとクレイグ・ジョーンズ/Craig Jonesのマッチは最終戦までもつれ込んでいた。お互いクリーチャーを主体としたデッキでの殴り合いの末、ルーエルの攻撃によりジョーンズのライフは3に。ルーエルのライフは7だった。

 手札は1枚、これが《黒焦げ》で、ジョーンズはルーエルのクリーチャーをこれで除去せずにルーエルの本体に4点ダメージを与えることを選んだ。ルーエルのライフは残り3となったが、ジョーンズのライフもまた1となった。

 手札も空、攻撃は通らないという状況でターンを迎えたジョーンズ。絶体絶命であるが、ここで対戦相手のルーエルは立ち上がる。「Come’on deck!」と言いパンパンと手を打って、ライブラリーの一番上の、今まさに引かんとしているカードを盤面に叩きつけるんだとジェスチャー。一世一代の大勝負に出たジョーンズもこれに応え、そのカードをめくり、テーブルへ。

 そこには……《稲妻のらせん》!

 これでルーエルのライフ3点を削り切り勝負あり。最後の賭けにジョーンズは見事勝利し、決勝進出。この《稲妻のらせん》トップデックは賞金にして$16,000の価値があった、というストーリーだ。

 実況解説も、観客も、ルーエルも、そしてジョーンズ本人も目の前の出来事が信じられないというリアクションが、マジック競技シーンにおいて永遠に忘れられない名シーンを彩る。実際の歴史を作った1枚である《稲妻のらせん》が選ばれたのは当然のチョイスというわけだ。

 今日はこの《稲妻のらせん》を使ったデッキの一例を紹介しよう。ヒストリックでこの名インスタントを使える日が来たのだ!

Charizard_James Rutherford - 「ボロス・ミッドレンジ」
ヒストリック (2021年5月11日)[MO] [ARENA]
3 《平地
1 《
4 《聖なる鋳造所
4 《感動的な眺望所
2 《断崖の避難所
4 《針縁の小道
1 《ラウグリンのトライオーム
1 《サヴァイのトライオーム
2 《アーデンベイル城
-土地(22)-

4 《アダントの先兵
4 《炎巻物の祝賀者
4 《砕骨の巨人
4 《精鋭呪文縛り
4 《スカイクレイブの亡霊
3 《傑士の神、レーデイン
3 《栄光をもたらすもの
-クリーチャー(26)-
4 《稲妻のらせん
1 《エメリアの呼び声
4 《髑髏砕きの一撃
3 《反逆の先導者、チャンドラ
-呪文(12)-
2 《スレイベンの守護者、サリア
1 《熱烈の神ハゾレト
1 《マナの税収
4 《安らかなる眠り
2 《石の宣告
2 《裁きの一撃
1 《削剥
2 《神の怒り
-サイドボード(15)-

 

 対象に3点のダメージを与え、自身は3点のライフを得る《稲妻のらせん》。まさしく攻防一体のカードで、クリーチャーを主体としたデッキが除去兼本体ダメージ源として用いることが多いが、コントロールデッキが除去しながら後半に繋ぐためのライフ回復要素として用いるのも見られる。

 今日は前者の使い方で、シンプルな白赤の中速デッキ、通称「ボロス・ミッドレンジ」だ。

 「ミッドレンジ」デッキというのは、1ターン目からクリーチャーをどしどし展開してくるアグロに対してはクリーチャーのサイズと除去、プレインズウォーカーのもたらすアドバンテージでコントロール気味に振舞い、コントロールなど自分より遅いデッキとの対戦ではマナ総量で見て効率の良いサイズが自慢のクリーチャーで攻めてアグロ風に振舞う。何かに鋭く特化しているわけではないが、臨機応変に戦えるのがセールスポイントだ。そういう意味でも除去でありライフも得られるし対戦相手のライフも詰められる《稲妻のらせん》はうってつけの1枚である。

 デッキとしては2~3ターン目からクリーチャーを繰り出し、攻めていくか受けに回るかは相手次第で選択していく形になる。

 どちらかというとタフネスよりもパワーが高い、攻撃的な面々が揃っているので、攻めの姿勢から入る気持ちで。《砕骨の巨人》《スカイクレイブの亡霊》《栄光をもたらすもの》とクリーチャーでありながら除去を兼ねるカードがあるのは頼もしい。

 《精鋭呪文縛り》と《傑士の神、レーデイン》は航空戦力でありかつ相手の自然な展開を妨害するので対コントロールにおいても強い。

回転

 《アダントの先兵》も破壊不能を得て《神の怒り》や《神々の憤怒》に耐えるため、コントロールを相手に資源を失わずに戦線を残しやすい。

 同じ中速デッキやコントロール相手には《反逆の先導者、チャンドラ》が大活躍。

 [+1]2種に[-3]とどの能力も強く、[-7]に至っては起動できればゲームが終わるレベルだ。アグロ相手にはクリーチャーの攻撃を食い止められずにすぐに落とされてしまいがちだが、上記のクリーチャーで上手く守ってやれればなんとかというところ。

 個人的には上の[+1]能力でライブラリートップから《稲妻のらせん》を公開して、伝説のトップデックの再現でも決めてみたいところだね(笑)。

 ミスティカルアーカイブで歴史あるカードが増えたヒストリックだが、息をつく間もなく『ヒストリック・アンソロジー』の第5弾がやってくる。その名に恥じない歴史的なカードが大集結し、このフォーマットは混迷を極めることだろう。一歩抜け出すのはどんなデッキになるのか?

 かつての《稲妻のらせん》のように、競技シーンで光を放つカードはどんな顔ぶれになるのか……まだまだ目が離せないフォーマットだなぁ。いつまでもデッキについて考えなくちゃならないから、困ったもんだよな(満面の笑みで)。

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