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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
デイリー・デッキ都市伝説:ハイランダーの陰に潜む謎の契約とは(ヒストリック)
皆さん、TCG用語のひとつに「ハイランダー」というフレーズがあるのはご存知でしょうか。
(基本的に)4人以上で対戦するパーティー要素を持った大人気フォーマットである統率者戦。この統率者戦が公式のフォーマットになる前身。まだ一部愛好家たちによって遊ばれていたころの名前がエルダー・ドラゴン・ハイランダー(EDH)。なので、このハイランダーというフレーズ自体は多くの人が耳にしたことがあるでしょう。
この「ハイランダー」とは、デッキ内のカードを(基本土地を除いて)各カード1枚制限にした構築法のことを意味します。同じカードの2枚目以降はデッキ内には存在せず、また毎ゲームの開始手札の内容が大きく変わるのは想像に難くないでしょう。
というわけで久しぶりのデイリー・デッキ都市伝説。今回取り上げるお題はもちろん――
都市伝説その4:ハイランダーの血塗られた語源
ハイランダー=同名のカードを使わない構築法。ではなぜこれをそう呼ぶようになったか、ご存知でしょうか?
そもそもハイランダーとはどういう意味か。これは「スコットランドのハイランド地方の住民」を意味し、驚くことにまったくマジックや1枚制限と関係のない言葉なのです。
スコットランドは古代からローマ帝国・イングランド王国・ヴァイキングなどなど、ヨーロッパの名だたる勢力からの侵略を受けていました。そのスコットランドの中でも、ハイランド・ミッドランド・ローランドと地域には隔たりがあり、すなわち戦いが絶えない地域でした。
ハイランド地方はその名の通り山岳部。厳しい自然、貧しい土地。ここで生きる者たちが選んだのは、戦士としての道。傭兵として外界で戦って富を得る、ハイランドの誇る資源とは兵隊だったのです。気高く屈強なハイランドの戦士たち、すなわちハイランダー。彼らはヨーロッパのさまざまな地域にて戦いに明け暮れていたそうです。
このハイランダーをテーマにしたある映画がありました。15世紀から現代まで生き続けるハイランダーの一族。彼らは首をはねられるまでは死ねない不老不死の一族で、同じく悪しき不死の者と戦う運命にある……というストーリー。この映画のキャッチコピーが「There can be only one」というもの。これは「戦って生き残る不死の者は1人だけ」という本作の内容を表しているわけですが、このキャッチコピーからインスパイアされて、マジックにおける「There can be only one」を「デッキの中に同じカードは1枚だけ」と解釈して、これをその映画のタイトルからハイランダーと呼ぶようになったと言われています。
信じるか信じないかは各プレイヤー次第ですけれども……1枚のみという縛りを設けた構築をハイランダーと呼ぶのが世界中に広まっているのは事実ですね。
さて、このハイランダー構築。統率者戦やブロール以外のフォーマットで、あなたは見たことがありますか? 現スタンダードなら相棒能力を持つカードの中に《呪文追い、ルーツリー》がいますね。このカワウソを相棒にするには土地以外ハイランダーという構築が求められますね。
今日はこのルーツリーを使ったデッキを紹介!と、思いましたか? 都市伝説のコーナーは、もっとアンダーグラウンドな雰囲気が漂うデッキを取り上げる場です! さあ、今日も真実の扉を開いちゃいましょう。舞台はヒストリック! それでは、行きますよ。
1 《島》 1 《冠雪の島》 1 《沼》 1 《冠雪の沼》 1 《山》 1 《湿った墓》 1 《異臭の池》 1 《水没した地下墓地》 1 《欺瞞の神殿》 1 《清水の小道》 1 《ゼイゴスのトライオーム》 1 《蒸気孔》 1 《硫黄の滝》 1 《尖塔断の運河》 1 《河川滑りの小道》 1 《血の墓所》 1 《竜髑髏の山頂》 1 《泥濘の峡谷》 1 《荒廃踏みの小道》 1 《ロークスワイン城》 1 《寓話の小道》 1 《進化する未開地》 -土地(22)- 2 《タッサの神託者》 1 《願いのフェイ》 1 《海門の嵐呼び》 1 《破滅の龍、ニコル・ボーラス》 -クリーチャー(5)- |
1 《否定の契約》 1 《血の長の渇き》 1 《渦まく知識》 1 《塵へのしがみつき》 1 《信仰無き物あさり》 1 《致命的な一押し》 1 《コジレックの審問》 1 《選択》 1 《思考囲い》 2 《汚れた契約》 1 《検閲》 1 《取り除き》 1 《表現の反復》 1 《無情な行動》 1 《精神迷わせの秘本》 1 《記憶の欠落》 1 《アズカンタの探索》 1 《思考消去》 1 《暴君の嘲笑》 1 《願い爪のタリスマン》 1 《不気味な教示者》 1 《プリズマリの命令》 1 《シルンディの幻視》 1 《方程式の求解》 1 《至高の意志》 1 《ヴァラクートの覚醒》 1 《多元宇宙の警告》 1 《衰滅》 1 《首謀者の収得》 1 《煤の儀式》 1 《覆いを割く者、ナーセット》 1 《イゼット副長、ラル》 -呪文(33)- |
1 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 1 《墓掘りの檻》 1 《魂標ランタン》 1 《強迫》 1 《霊気の疾風》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《ナーセットの逆転》 1 《渇望の時》 1 《汚れた契約》 1 《神秘の論争》 1 《影の評決》 1 《思考のひずみ》 1 《神秘を操る者、ジェイス》 1 《龍神、ニコル・ボーラス》 -サイドボード(15)- |
ヒストリック環境より来たりし、青黒赤の3色デッキ。
ひとつ断っておかなければいけないのが、このデッキは厳密にはハイランダーではないということです。2種類だけ、重要なカードが2枚ずつ採用されています。
おいおい、だったらルーツリーの方が立派なハイランダーだろうって? まあまあ落ち着いてください、このデッキはひと味違いますから……純正ハイランダーではないとはいえ、ルーツリーや統率者戦さえ上回る点として、キーカード以外は基本土地すらすべて1枚に留めているという点にご注目ください。見事なものでしょう。
何がこのリストをそうさせるのか、大事なのはここですよね。そう、ここで2枚採用されているカードが答えになってくるわけです。そのカードとは……
《汚れた契約》。なんとも邪悪、おぞましいネーミングのこのカード。初出は『オデッセイ』と古いものですが、今日に至るまでこのカードと同様の効果を持った呪文は他になく、まさしく唯一無二の働きを見せることで、一部のマニアから人気を獲得しているカードです。
このカードのテキストは一見ややこしいですが、このデッキに限ってはそれはシンプルなものになります。「好きなカードが手に入る」と。この呪文はライブラリーから同じ名前のカードが出るまで、その一番上のカードを追放することが可能です。欲しいカードが公開されればそこでストップし、それを手札に加える。いらなければもう1枚、もう1枚と。
通常のデッキだと、3~4枚採用されているカードはざらにあるし、単色や2色のデッキだったら基本土地をめくってしまったりと、同じ名前のカードが2枚めくれて何も得られずに終了、という事態が頻発するでしょう。
ただハイランダー構築であれば、デッキに「被るカード」というものはありません。そのようなスリルに悩まされることなく、今この状況で欲しいそのカードが公開されるまで、好きなだけ追放すれば良いのです。この《汚れた契約》で何でもサーチする、このデッキはそれをメインのシステムとしています。
では何を手に入れるのか、何をするのか。そこのところが重要ですね。もちろん、その答えももう1つの2枚採用されているカードが握っています。
《タッサの神託者》、ということは……もうおわかりですよね。このデッキの最も理想的な《汚れた契約》の使い方は、ライブラリーの最後の1枚を手札に加えること。60枚のライブラリーから、何が公開されようが無視してどんどんと次のカードを追放していく、これを繰り返してライブラリーの底、まさしく深淵へとたどり着く。
その最後の1枚を手に入れたなら……ライブラリーにはもうカードが1枚もありませんよね。そこへ《タッサの神託者》を戦場に出し、これの能力を誘発させる。青の信心よりもライブラリーの枚数の方が少ない状況になっているので、そのまま勝利。速く、そして確実性の高い、何より必要なカードが少ない。素晴らしい瞬殺コンボです。
契約を唱えてから神託者を出すまでターンを跨いでも、3ターン目に決められる。いかに早いアグロデッキでもこの速度には間に合いません。必殺の恐ろしいコンボなのです。
もちろん何も良いことばかりではなく、そもそもコンボを形成するカードは2枚ずつしか採用されていないので、それを引き込めるかというところは運が必要になってきます。そのために各種ドローとサーチを詰め込み、また引けない間にライフを0にされないようにコントロール要素も詰め込んであります。《汚れた契約》で生き延びるために必要なカードを探すという光景も決して珍しいパターンではないでしょう。
コンボともコントロールとも取れるこのデッキ。リストを見ただけで伝わってくるのは、このデッキの持つ魅力・プレイ体験は唯一無二のものであるということ。ちなみに、使用者はMTGアリーナのミシック・ランクのかなり上位をこのデッキで戦っています。
《汚れた契約》という形で、ハイランダーの傭兵たちを雇い、その戦士としての力を享受しているのかもしれません。信じるか信じないかは……あなたも契約を結んでから考えてみては?
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