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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ティムールの切り札(スタンダード)

岩SHOW

 とてつもないカードパワーを持った、いわゆる切り札を用意しておく。勝つためには重要な、構築の基本とも言えることだ。

 フォーマット内におけるそのカードが一体何なのかを模索するのが環境初期。そこから環境が終盤に向かって進むにつれ、その強いカードに対抗するための手段を用意するのか、あるいは対抗策への対抗策を備えてそのカードを使うのか、プレイヤーたちの研究が進んでいく。

 そして中には、そのただでさえ強いカードをより速く、より確実に使うことで同じカードを使っているデッキ相手に差を付けようとするものが現れることも。

 マジックにおいてスピードアップと言えばマナ加速、確実性と言えばサーチの類い。これらは弱点も多く、それをデッキに多く採用するということは脆くなってしまいがちで、すなわち安定感がダウンする傾向にある。

 しかしながらそのような不安定な構成にならずに、速度と確実性をアップすることができたなら? それこそ王者のデッキの誕生だ。

 というわけで、今日はある切り札に速く確実にアクセスするデッキを紹介しよう。

VinnyMTG - 「ティムール・アドベンチャー?」
スタンダード (2021年3月21日)[MO] [ARENA]
1 《
2 《
2 《
4 《ケトリアのトライオーム
4 《樹皮路の小道
1 《奔放の神殿
4 《岩山被りの小道
4 《河川滑りの小道
4 《寓話の小道
-土地(26)-

4 《エッジウォールの亭主
4 《砕骨の巨人
4 《厚かましい借り手
4 《ラノワールの幻想家
4 《恋煩いの野獣
2 《星界の大蛇、コーマ
-クリーチャー(22)-
3 《否認
2 《火の予言
2 《アクロス戦争
1 《髑髏砕きの一撃
4 《銅纏いののけ者、ルーカ
-呪文(12)-
2 《長老ガーガロス
2 《巨大猿、コグラ
2 《軽蔑的な一撃
2 《火の予言
1 《垣間見た自由
1 《否認
4 《神秘の論争
1 《アクロス戦争
-サイドボード(15)-
VinnyMTG氏のTwitter より引用)

 

 一見するとスタンダードの「ティムール・アドベンチャー」、緑青赤の出来事を持つカードを用いたデッキで、その認識は間違いではない。

 《エッジウォールの亭主》と当事者カードの中でも三強と言える《厚かましい借り手》《砕骨の巨人》《恋煩いの野獣》とを組み合わせ、ただでさえ優秀な3マナのクリーチャーたちにドローをおまけして得をする、これがやりたいことのメインになっているデッキだ。

 そんなアドベンチャー・デッキにおいて、切り札を高速展開する方法とは。まず切り札、パワーカードの答えは《星界の大蛇、コーマ》。

 7マナで色マナシンボルを4つも要求するヘビーなコストながら、毎ターン海蛇・トークンを生成し、その海蛇を生け贄に捧げることで破壊不能 or 対戦相手のパーマネントをタップと、攻防ともに優れた能力の持ち主。さらには打ち消されないのでコントロール・デッキ相手に堂々と唱えられ、まさしくスタンダード最強クラスのカードパワーの持ち主だ。

 このコーマをどうやって速く確実に戦場に出すのか。そのために用いるのが……《銅纏いののけ者、ルーカ》だ。

 ルーカの[-2]能力は自身のクリーチャーを1体追放し、それと交代でライブラリーから点数で見たマナ・コストがより大きいクリーチャーを出すというもの。ライブラリーの上から順に公開していくのでどのクリーチャーが出てくるかはランダム……であるのだが、構築段階から調整しておくことでこれを確実なものにすることが可能になる。

 上記の出来事三強のコストを見てほしい。いずれも3マナだ。そしてこのデッキのそれ以外のクリーチャーはコーマ、亭主、そして3マナの《ラノワールの幻想家》。つまり、亭主以外のクリーチャーであればどれを対象にしても、ルーカの能力でコーマが戦場に出てくるのだ。5マナという軽いコストで、確実にコーマが出せる。この構築テクニックには天晴れの一言だ。

 アドベンチャーデッキの例に漏れず、このデッキも手数という面では他のデッキに引けを取らない。《ラノワールの幻想家》のマナ加速も相まって、3~4ターン目くらいから相手に妨害をしながらこちらの戦場に殴れる面々を揃えられるだろう。

 あるいは4ターン目にルーカからコーマという必殺コンボも決められる。こんな速いターンに破壊不能を得るコーマが出てきては、正直言って対処する術はかなり限られる。後は海蛇の首をどんどん生やして、対戦相手を押しつぶすのに十分な数が揃うのを待つだけだ。

 コンボがなくても十分強いデッキだが、決定力が大いに増しているのはこの上なく頼もしい。ルーカはコーマのサーチ以外にも[+1]能力で出来事持ちをかき集めても強いね。

 また、逆に4マナ以上のクリーチャーをコーマに絞ったことで、デッキ内のスロットの拡張にも成功している。コーマとルーカ、あわせて6枚に勝利手段が収まっているので残りのスロットには中途半端なクリーチャーなどを入れなくて済む。《否認》や《火の予言》《アクロス戦争》など、コーマ降臨までの時間を稼ぐことのできるカードをメインデッキから多く積むことができるのは魅力的だ。

 このようなセオリーから外れた奇襲的な要素を持ったデッキは、ネタがバレると脆かったりもしたが……出来事クリーチャーそのものが強く、ルーカからのコーマという動きは割と防ぐ手段も限られるため、バレていても戦えるデッキになっているんじゃないかな。

 あまり相手を選ばず、柔軟に戦えるアドベンチャーらしさはそのままに、切り札による決定力をより高めた「ティムール・ルーカ」。このスタンダード環境終盤の台風の目となるか。

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